- きょういくじん会議

ついに本日から熱戦の火蓋が切られる2010FIFAワールドカップ。これから1か月間、眠れない日々を過ごされる方も多いと思われます。しかし、今回のW杯ではサッカーのゴールだけでなく、他にもGOAL(目的)が設定されていることはご存知でしょうか? アフリカ初のW杯開催国となった南アフリカ共和国の事情とともに、そのGOALをご紹介します。
南アフリカの抱える問題とは?
南アフリカの歴史については、外務省のHPにわかりやすく紹介されています。本ページを読むと、南アフリカが何世紀にも渡り白人政府の支配下に置かれ、多くの黒人が差別を受けてきたことがわかります。過剰な黒人差別は「人類の人類に対する犯罪」とまで言われたアパルトヘイト政策という形をとり、黒人と白人の格差は決定的なものになりました。ネルソン・マンデラ氏らの運動によってアパルトヘイト政策が撤廃され、アフリカ最大の経済大国となった今でも、その時代に生まれた教育格差は労働者の就労格差へつながっていると言われています。
ユニセフ世界子ども白書によれば、南アフリカの初等教育就学率は86%とアフリカの中では高い水準となっていますが、アパルトヘイト時代に識字教育の機会に恵まれなかった黒人層は、今も貧困から抜け出せずに都市部のスラム街で暮らしており、それが高い失業率と犯罪率の温床になっているとされています。
教育が行き届かないことで就労の格差が生じ、それが治安の悪化へとつながるという負の連鎖が、南アフリカだけでなく多くの発展途上国で問題になっており、そのため、教育サービスを充実させることがそのような国々の課題となっています。南アフリカのズマ大統領も教育と技能開発を政策の中心に据えると強調しており、在南アフリカ共和国大使館のHPでは歳出優先分野のトップに「教育と保健の質の向上」が掲げられています。
このように発展途上国における教育の問題は緊急かつ重要な問題なのですが、この問題について目を向けているのが今回のW杯なのです。
1GOALキャンペーンで、世界の子どもに教育のパス
世界中の子どもたちに教育を行き渡らせるため、教育協力NGOネットワーク(JNNE)では、W杯に合せて「1GOAL(ワンゴール)キャンペーン」という運動を呼びかけています。これは、すべての人が教育を受けられる世界の実現に向けて、市民の声を世界のリーダーたちに届けるという運動で、参加方法は公式サイトから署名を送信するだけ。本キャンペーンのサポーターには、ゼップ・ブラッターFIFA会長をはじめ、ジダンやペレといったサッカー界のスターの名前も見受けられます。
同サイトによれば、W杯会期中にはさまざまなキャンペーンが開催されるほか、開幕前日の6月10日には、南アフリカ政府と国連による教育サミットの開催も予定されているとのこと。興味を持たれた方は、ぜひ署名に参加してみてはいかがでしょうか。
W杯は子どもたちも注目する一大スポーツイベントです。しかし、少し違った視点から見てみると、サッカーの試合の90分だけがW杯ではないことがわかります。今大会は、意識される機会の少なかったアフリカの地にスポットが当たる大きなチャンスですので、これを機にアフリカの歴史や政治について学んでみるのもいいのかもしれません。
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