きょういくじん会議
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すすむ高等学校再編―富山県立高校で探求科の設立へ
kyoikujin
2010/7/23 掲載

 今月1日、富山県では第3回 探究科(仮称)等開設検討会が開かれた。同県では、県立高校の理数科を見直し、自然、人文の両分野で専門的な課題研究に取り組む新学科「探究科」(仮称)の設置が検討されている。「探求科」設置の狙いとは何なのであろうか。

ただの「理数科」では魅力がない?

 富山県では、5校の県立校で理数科が設置されており、野外実習や県外の大学等での研修など、それぞれ独自のカリキュラムでの指導を行ってきたが、入試で定員割れを起こしたり、毎年理数科に進んだのちに文系に転向する生徒が出る傾向にあるとのことだ。そこで、5校中3校で新たに「探求科」を設置し、自然科学だけでなく、人文科学もふくめてより専門的な科目を学んだり、ゼミ形式での研究等を行って、高度な教育を行いたいとの考えだ。「探求科」では、大学での研究のように、自ら課題を見つけ、専門的に学び、発信することを目的としているが、これまで「理数科」として専門教育を行ってきたことだけでは足りなくなってきたのか。第2回探究科(仮称)等新学科開設検討会参考資料(PDF)の中で、富山高等学校の課題として「真面目ではあるが、学習への主体性、積極性の面で小粒になっている。」とした記述があるのが興味深いが、今回の新学科の設置では、同校はリーダーとして活躍できる総合的な人間力を備えた人材の育成を目指しているそうだ。グローバル化などで社会が変革するなか、学校に対するニーズも変化し、自分で課題を見つけ、研究をする力を育てるという特色を出す必要性が生じてきたのかもしれない。

探求科の成功事例―秘訣は教員の量や質?

 ところで「探求科」には先行事例があり、京都市立堀川高校での成功事例が有名である。堀川高校では、1年次は共通のカリキュラムを履修し、2年次から「人間探究科」と「自然探究科」に分かれる。入試対策ばかりや知識詰め込み型の学習内容ではないにも関わらず、大学での専門研究につながるカリキュラムで生徒らが主体的に学ぼうとする場をつくりだし、12年度から13年度で国公立大学への進学者を100人以上増やした。ただ単に自然科学、人文科学の両方の専門的な内容を学べるようにしただけでなく、多数の教員の配置を行ったり、京都大学大学院の学生を非常勤講師として配置するなどの工夫できめ細かい指導ができたことが功を奏したようだ。やはり、富山でも、大学等の外部機関との連携や、教師の質向上によりサポートをうまくすることが成功への鍵となるかもしれない。

 富山県のほかでも、平成23年4月から大阪府の「進学指導特色校」10校に文理学科が開設予定など、文系理系の枠に縛られずに大学での学びに通じるような高度なカリキュラムを用意した学科を設置するなどの特色づくりに向けた取り組みが行われている。しかし、各学校がこれまで行ってきたカリキュラムのよい点は活かすべきであるし、ことに理数科を廃止し探求科を設置する学校においては、これまで理数科として教育してきた経験をふまえて改革を成功させることを期待したい。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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