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これから加熱? 幼保一元化問題
kyoikujin
2010/7/12 掲載

 幼稚園と保育所、ともに就学前の子どもたちを預かる施設ですが、その違いをご存知でしょうか。幼稚園は文部科学省の管轄の幼児教育施設であるのに対して、保育所は厚生労働省の管轄の児童福祉施設にあたります。現在別々に運営されているこのふたつの施設を、2013年に統合しようとする幼保一元化の検討が政府で行われています。

 この幼保一元化は、より質の高い保育サービスを実現し、待機児童や少子化対策の問題解消の観点から進められた議論とされています。

幼保一元化のメリット、デメリットは?

 そもそも現在ある幼稚園と保育所がひとつになることのメリットとは何でしょうか。平成18年から幼保一元化した施設として運営が始まっている「認定こども園」にその答えがありそうです。
 たとえば、0歳から小学校にあがるまでの子どもを受け入れる保育所に子どもを入所させるには、「就学前の保育に欠ける子ども」でなくてはなりません。そのため、保護者が共働きで日中に保育環境が整わない子どもであるかが入所の要件となっていました。認定子ども園は保護者の就労は入園の要件とならないため、多くの人々が保育サービスを受けることができるようになります。
 また、住まいと幼稚園、保育所施設の立地の関係上、受けられるサービスが限定的となってしまう点についても、一元化されることによって解消され、幅広いニーズに応えられるようになりそうです。
 デメリットとしては、本来教育施設である幼稚園に子どもを通わせ教育サービスを受けさせたいと望む保護者にとっては、幼稚園の保育所化とみえ、ひいては教育サービスが薄れるとも取られかねないことがあるようです。

一元化にむけての課題

 一元化に向けては多くの課題があるようです。そのひとつは職員の認定資格の問題です。現在のところ、幼稚園と保育所はそれぞれ幼稚園教諭と保育士と、職員に必要となる資格が異なります。今後一元化したサービスを行っていく上では、これらの資格取得が働く職員に求められます。これに対して、政府はふたつの資格として統合する「子ども士」という資格を創設する案があるようです。ただし、これらの資格の取得にあたっては、それぞれ要件が異なることからまだ、統合にあたっての具体的な方策が見いだせていません。
 一方、いずれかの資格をすでに取得して、現在働いている職員については、施設内でのはたらきが片務的になってしまいそうです。実際に上で述べた認定子ども園では、ふたつの資格をもっていない限りは、それぞれの資格に応じたはたらきに限定されてしまっている実情があります。今後、ひとつの資格で働いている職員の新たな資格取得に向けたバックアップの体制も整えられてゆく必要があるのかもしれません。

 待機児童の問題は、さまざまな報道で伝えられており、年々深刻化しています。一元化によって施設の数が増えるのではなく、業態の幅が広がるという点で根本的な解決にはなってはいないとも考えられます。2013年の一元化実施へむけて、今後の議論がより高まってくることが予想されます。また、施設で働くひと、施設を利用するひと、双方にとって実りある一元化が進められることが望ましいです。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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