きょういくじん会議
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「自殺予防教育」検討始まる―文部科学省
kyoikujin
2010/7/9 掲載

 自殺予防に関する授業を受けた、あるいは行ったことがありますか? 今、文部科学省では、子どもに対して直接行う「自殺予防教育」の検討が進められています。

 きょういくじん会議でも何度か報じてきましたが、内閣府による「自殺対策」、文部科学省による「自殺予防マニュアル」など、このところ自殺に関する対応策が急ピッチで検討されています。

 この春には「平成21年度児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議 審議のまとめ」が出され、主に、自殺が起きてしまった後のケア、子どもの自殺に関する背景調査の2方面について報告されました。
 これは、遺族団体へのヒアリング等を通じて、事後対応のあり方や実態把握のあり方に重点を置いたものです。

 しかし今検討が進められているのは、授業を通して「自殺予防」について子どもたち自身に考えさせようという取り組みです。
 このような取り組みはアメリカでも進んでいるとか。アメリカの現況調査とともに日本での実践研究が進みそうです。

 5日付の日本教育新聞では「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」委員の阪中順子教諭(奈良県大和高田市立磐園小学校)が中学校勤務時の取り組みを紹介されています。

  • まず、1年生時に「生と死」を主題とする6時間構成の授業を行う
  • 2年生になった時に、7時間目「自殺の実態といのちを支える力」、8時間目「ロールプレイによる『自殺予防のための手だて』」、9・10時間目「担任や自死遺族の方の話を通じた『今を生きる』」の授業を行う

 「自殺」そのものを正面から取り上げてこのような授業をすることについて、どのようにお感じになるでしょうか。

 「寝た子を起こすな」式の否定論もあれば、「道徳教育でもっと命の授業を!」という切実なエールもありそうです。

 この授業に関しては留意点がいくつか挙げられていました。

  1. 事前に自殺の危険の高い生徒を見極めておくこと
  2. 授業者以外に1人以上の教師が入って生徒の様子を見守ること
  3. 最初に「授業中つらくなったり、気分が悪くなったりしたら、すぐに申し出るように」と伝え、柔軟に対応すること
  4. 道徳的なことは持ち出さず、事実から自殺予防の正しい理解と知識を伝えること
  5. 知識の伝達だけに終わらないよう、グループでお互いの考えを伝え合う時間をつくること

 このような授業を全国で行おうとすれば、おそらく必ず、身近に自殺した人をもつ子どももいることでしょう。また、教師自身も心の健康管理が必要な場合があるかもしれません。
 実際に授業をするとなると、誰がやるのか、どの時間でやるのか、など、負担に感じる教師も多いことと思います。

 しかし、子どもに対して行う「自殺予防教育」についてはまだ検討が始まったばかり。

 いじめや家庭の問題など、子どもの自殺の要因は様々にあると思います。また、生涯にわたっていつ自殺を考えるような局面に遭うとも限りません。
 自殺を本気で考えてしまわざるをえない状況にある子どもがいることは事実です。そのような子たちにとって、たとえ根本的な解決にならなかったとしても、なにか、救いになるような授業にできるなら、「自殺予防教育」は心から応援したいと感じました。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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