きょういくじん会議
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幼い命を救うには? 健康大国日本のもう一つの側面
kyoikujin
2010/8/3 掲載
小児ICUマニュアル―エビデンスを取り入れた小児集中治療

 26日の時事通信の記事によると、2009年の日本人平均寿命が男性79.59歳、女性86.44歳となって過去最高を更新した、とのこと。世界トップレベルの平均寿命や極めて低い新生児・乳児死亡率などで、健康大国と言われる日本。しかし、その狭間で取り残されたともいわれる世代があることを皆さんはご存知でしょうか。

先進国最悪レベルの幼児死亡率

 取り残されたといわれるのは、1〜4歳の幼児世代。2009年7月に公表された厚生労働省「重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会」中間取りまとめ(PDF)では、1〜4歳の幼児死亡率が世界で21位であることが報告されています。これは、世界トップレベルの低さを誇る新生児(生後28日未満)死亡率及び乳児(0〜11か月)死亡率に対して、かなり悪い結果で、特に先進国の中では最悪レベルとされています。
 では、なぜ幼児死亡率が高いのでしょうか。私は、新生児医療の発達によって救命された子どもが、その後幼児期になって亡くなることが原因ではないかと思っていました。でも、事実は少し異なるようです。幼児の死因でもっとも多いのは、交通事故や転落などの「不慮の事故」。さらに、21日の神戸新聞の記事では、不慮の事故で亡くなった幼児のうち、約3割は集中治療が受けられなかったとの調査結果を報じています。他の世代に比べて、幼児に対する救命医療体制が整っていないことが、高い幼児死亡率の原因の一つだと考えられています。集中治療室を例にとっても、NICU(新生児集中治療室)やICU(主に15歳以上を想定した集中治療室)の間をうめるPICU(小児集中治療室)は、まだまだ少ないのです。

何よりも予防が肝心

 このような現状に対して、行政はPICUの設置など医療体制の整備の必要性を指摘します。利用する側としては、医療体制が充実するのに越したことはありませんが、医師や施設の育成は時間と費用がかかり、すぐに対応できることではありません。対応できたとしても、医療施設としての採算をとるのはとても難しいことだと思います。ただ行政側の対策を待つだけでなく、私たちがすぐにできることは身近にあるはずです。先に述べたように、幼児の死因トップは、「不慮の事故」。子どもが誤って飲み込みそうなものは近くに置かない、子どもから目を離さないなど、子どもの周りにいる人間が予防意識を持つことが、幼い子どもの命を救うことにつながるのだと思います。夏休みは、水の事故など子どもに関わる悲しいニュースが多く聞かれます。この時期だからこそ、私たちの行動を改めて見直してみたいものです。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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