きょういくじん会議
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子どもの移植手術、国内でも可能に! 改正臓器移植法
kyoikujin
2010/9/13 掲載
日本の臓器移植----現役腎移植医のジハード

 最近運転免許証の更新をされた方、以前の免許証とは少し異なっているところに気がつかれましたか? 実は、今発行されている運転免許証や被保険者証には「臓器提供意思表示カード」の機能が付加されています。今年の7月に改正臓器移植法が施行され、国内の臓器移植のあり方に大きな変化が訪れています。

そもそも、今回の改正で何が変わったのか?

 今回の臓器移植法の大きな改正点として、脳死と判定された本人の意思が不明確であった場合には遺族の同意をもって移植可能とする、ということがあります。今年の8月には実際に家族承諾による臓器移植が行われ、臓器ネットが運用する意思登録システムには、8月だけで7270人が新たに登録するなど、急速に意識が高まっているようです。
 また、この改正により、これまで法的に遺言に効力のない15歳未満の子どもは、書面によって自分の意思を示せないため、移植に同意する意思のないものとして脳死判定による移植は行われていませんでしたが、改正臓器移植法では遺族の同意が得られれば、脳死判定を受けた子どもの臓器移植も可能となりました。
 もちろん、子どもが前もって「移植拒否」の意思を示しており、それが家族に伝わっていれば子どもの意思を尊重した判断ができるため、今までより一層、移植について親子で話し合うことの重要性が増したと考えられそうです。

大きく変わる小児移植

 今回、特に小児移植に焦点を当てた形で改正が行われた背景には、世界的な問題となっている子どもの臓器売買の問題が潜んでいるようです。臓器売買は東南アジア・アメリカなどでも子どもの誘拐の大きな原因の一つと考えられており、その被害拡大を防ぐため、今年の5月に国連の世界保健機関(WHO)は全世界的に臓器売買は禁止、各国の海外への渡航移植を自粛し、国内での移植を原則とすることを指針として示しました。
 これを受けて改正臓器移植法の制定が行われ、さらに7日の時事通信の記事によると、厚生労働省の臓器移植委員会では、小児のドナー(臓器提供者)が現れた場合には小児の患者の心臓移植を優先することとする患者選択基準で合意したとのことです。この一連の流れにより、国内での子どもの臓器移植が活発化すると考えられており、これからの小児医療のあり方が大きく変わろうとしています。

脳死という状態をどう考えるか

 ただ、脳死による臓器移植の是非を語るときに、切り離しては考えられないのが「脳死=人の死なのか?」という問題です。1997年の臓器移植法成立時からの議論の中心になっていたとも言える問題で、個人の生命観・倫理観による部分が大きく、特に子どもの場合はその生命力の高さから、一概に「脳死=死」だとは言えない、とする意見も多くあるようです。
 脳死という状態をどう捉えるか、自分だったらどうしたいかを大人だけではなく、子どもも一緒に家庭や学校で話し合ってみるといいかもしれませんね。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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