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図書館発! 読書習慣をつくる取り組み
kyoikujin
2010/10/19 掲載
赤ちゃんと絵本をひらいたら――ブックスタートはじまりの10年

 7日の朝日新聞の記事によると、山梨県中央市立図書館(玉穂生涯学習館、田富図書館、豊富図書館)の2008年度の貸出冊数と図書購入費、蔵書冊数が、全国の人口3万人未満の自治体の中で1位となったとのこと。特に貸出冊数は35万5千冊で、2位の図書館のほぼ倍の結果である。その結果の背後には図書館の精力的な取り組みがあった。

「ブックスタート」

 中央市では、市内で生まれたすべての赤ちゃんを対象に、4ヶ月健診の際に、絵本パックを贈っている。この絵本パックの中には、絵本2冊とおすすめの絵本リスト、おはなし会の案内や図書館利用申込書が入っており、乳幼児の時から本に親しむ機会を提供すると共に、図書館と親子との間での関係性の構築が図られている。このような取り組みは「ブックスタート」と呼ばれている。
 「ブックスタート」の発祥地はイギリス。1992年に取り組みが始まり、その後日本でも取り組みがなされるようになった。
 具体的な活動内容は、赤ちゃんとその保護者に対して絵本や子育てに関する情報などが入ったブックスタート・パックを手渡すというもの。絵本を介した親子の心のふれあいが目的とされ、「絵本を読む(read books)」ことではなく、楽しいひとときを「分かち合う(share books)」ことに重点が置かれている。日本でも自治体を通して取り組みがなされている。

浦安市の取り組み

 千葉県浦安市でも、「ブックスタート」に関連した取り組みがなされている。浦安市では出生届提出時に、絵本セットが贈られる。このセットの中には、市長からのお祝いの言葉と共に「ブックスタート」の趣旨を添えたメッセージカードと絵本が一冊、さらにアドバイス集と図書館の利用案内が添えられている。出生時から絵本を家庭内に取り入れることで、親子間でのコミュニケーションツールの一つとして絵本を活用してもらうことが目的だ。
 また、同図書館では、3〜4ヶ月の赤ちゃんを対象とした「ブックスタート絵本講座」を開催。この講座では、図書館の司書が赤ちゃんに対する読み聞かせの仕方を紹介するほか、オススメの絵本のリストを配布。また、絵本の読み聞かせだけではなく、わらべうたを通した親子のスキンシップを図る取り組みもなされている。

 子どもの読書離れが叫ばれて久しい。その要因は、本と接する機会そのものが減少している、あるいは子どもの成長の側に本がないという環境的な要因があると考えられる。このような要因に対して自治体の「ブックスタート」の取り組みは、乳幼児期から子どもが本に親しむ機会を効果的に提供している。それはすなわち、子どもの成育環境に本を取り入れる有効な手段であるととらえることができるのではないだろうか。
 「ブックスタート」を基にして、子どもの成長の側に絵本を取り入れることで、本が身近にあるという読書環境を構築すると同時に、本好きの子どもが増えることも期待したい。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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