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第4期科学技術基本計画のパブリックコメントを募集開始
kyoikujin
2010/10/26 掲載
グリーン・イノベーション―価値観を変える明日の生命と地球のための技術

 18日、第4期科学技術基本計画のパブリックコメントを受け付ける文書が発表された。科学技術基本計画は、平成7年に制定された「科学技術基本法」に基づいて長期的に行われている計画で、日本の科学技術政策を進めるにあたっての基本となるものであり、これをもとに規制や制度のあり方の見直しが行われることとなる。

新しい科学技術基本計画は2本の柱

 科学技術に関する基本政策について(パブリックコメント募集文書)(PDF)によると、第4期科学技術基本計画では、「将来にわたり持続的な成長を遂げる国」づくりをもっとも重視している。そのために、気候変動への対応と低炭素社会の実現、高齢化問題への対応の重要性が挙げられており、環境・エネルギーを対象とするグリーンイノベーションと、医療・介護・健康を対象とするライフイノベーションの2つが大きな柱とされている。
 グリーンイノベーションにおいては、太陽光発電やバイオマス発電などのクリーンエネルギー利用の普及による低酸素化や、次世代自動車の開発などのエネルギー利用の効率化、資源の再生利用などの社会インフラのグリーン化の3つが主軸とされている。
 ライフイノベーションにおいては、予防法の開発、早期診断法の開発、安全で有効性の高い治療の実現、高齢者・障害者・患者の生活の質の向上などを中心に据えている。
 現在民間各社もこぞって研究開発している次世代自動車や、より安全な作成法が研究されているiPS細胞を使った新薬の開発なども推進するような形で、制度や規制の見直し等行う構えのようだ。

教育・人材育成の観点から

 さて、きょういくじんとして注目したいのは、やはり人材育成の強化である。第3期基本計画では、基本理念の1つが「モノから人へ」であるように、未来の科学技術を担う人材の育成を重視していた。しかし、ポスドク問題や、女性研究者の増員が目標に満たないなどの問題もあり、第4期科学技術基本計画でも継続して人材育成への対応を進める計画になっている。先の文書にも産学間対話の場の新設や論文の電子化による意見交換の活発化などの目標が定められているが、第3期基本計画の内容で目標が達成できていないものも多く、具体的な目標のあるものについては妥当性を精査する必要がありそうだ。
 たとえば、テニュアトラック制(若手研究者が,任期付きの雇用形態で自立した研究者としての経験を積み,厳格な審査を経て安定的な職を得る仕組み)の普及として、同制度を利用する教員の割合を全大学の自然科学系の若手新規採用教員総数の3割相当とするなどの目標をかかげているが、一部ではテニュアトラック制の実情は単に任期のある雇用であり問題の先延ばしにすぎないとの意見等もある。
 また、理数教育については、観察・実験設備の充実や科学コンテストの結果を入試に反映させるなどの方策が挙げられているが、こういった具体的ではないものについて現場の意見が求められるところだ。

 こうした計画について、ご意見受付ページで、現場だけでなく広く国民の声が募集されている。科学技術とは畑違いという方も、高齢化問題などの身近な問題に関係してくることである。平成23年度科学・技術関係予算についてのパブリックコメント募集結果なども参考にして、考えてみてはいかがだろうか。パブリックコメントの受付は11月8日までである。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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