- きょういくじん会議
いつの時代も教師が主役のテレビドラマは多いもの。中にはカリスマ的な人気を博した先生もおり、テレビを見て、「こんな先生がいたらいいのに」、あるいは「こんな先生になりたい」と憧れたことのある方もいることでしょう。
そんな歴代のカリスマ先生の姿を振り返ってみると、その当時の時代背景を如実に反映していることが分かります。テレビの中の教師像の変遷をたどるとともに、これからの教師像を探ってみましょう。
熱血の70〜80年代
いじめや校内暴力などが社会問題化し始めた70〜80年代。この頃登場したのは、数々の熱血先生でした。小学校を舞台にした「熱中時代」、ラグビーを通じて不良学生の再生を図る「スクールウォーズ」など舞台は様々ですが、新任教師が真っ向に子どもとぶつかりあい、それに子どもたちもだんだんと応えていくという図式は変わりません。ことなかれ主義で生徒と向き合うことから逃げるわけでもなく、権力で子どもを支配することもせずに、子どもと同じ目線に立って自分も成長していく、そんな先生の姿が、憧れと共感をもって迎えられました。
熱血先生を語る上で欠かすことのできないのが、1979年から始まり現在まで続く人気シリーズ「金八先生」。いじめや校内暴力、生徒の妊娠や家庭不和などその時々の諸問題をいち早く取り上げる話題性と、それらの問題に対する自分の考えを自分の言葉で生徒に語りかける姿とで絶大な人気を得ました。
そんな金八先生ですが、今年2011年3月のスペシャルをもって、とうとう定年退職を迎えるそうです。開始当時は新任だった先生が…と思うと感慨深いですね。この退職は役柄の年齢設定上ということですが、もしかすると現代の問題に熱血・説教型の金八先生では太刀打ちできなくなってしまったのかもしれません。ポスト金八先生は今後登場するのでしょうか。
型破りvs現実派
こうした熱血先生への反動かのように、90年代後半〜2000年代には、多様な教師像が描かれるようになりました。その一つが型破り型教師と言えるでしょう。元暴走族のリーダーという設定の「GTO」や、極道の娘という「ごくせん」のように、意外な経歴を持っているのが特徴で、 その経歴ゆえに、「教師はこうあるべき」といった既成概念やしがらみに捕らわれることなく、言いたいことを言う、やりたいようにやる―そんな姿が、様々なものに縛られ空気を読みがちな人々に爽快感を与えてくれました。
一方で、「女王の教室」や「ドラゴン桜」のように、生徒に厳しい言葉を投げかけ、現実を教えようとする教師も描かれ出しました。 一見非情に見えますが、それも子どもへの愛情があってこそ。厳しい時代を生き抜くために生まれた、21世紀ならではの教師像と言えるでしょう。
カリスマ教師受難の現代!?
では、様々な教育問題が溢れる最近では、ドラマの中で教師はどう描かれているのでしょうか。映画にもなった「ROOKIES」は、不良学生とそれに向き合う教師という70・80年代の熱血路線を回顧したものと言えるでしょう。一方で、ネットいじめ、モンスターペアレント、学費・給食費の滞納…最近の諸問題を取り上げるドラマは多くあれど、こうした現実的な問題を取り上げようとするほど、歴代の先生に匹敵するほどのキャラクターが生まれにくくなっているように思えます。前述の金八先生の例ではありませんが、現実の問題が複雑すぎて、ドラマの中といえどカリスマ先生が活躍しづらくなっているのかもしれません。
こうした状況を乗り越えて登場する、次の新しい先生像はどのようなものになるのでしょうか。ひょっとすると、今の時代共感を呼ぶのは、様々な問題を圧倒的な力で解決するカリスマ先生でなく、悩み苦しみながら取り組む身近な先生になるかもしれませんね。