- 個別最適な学び
- 算数・数学
個別最適な学びを実現するために、個別学習を行うことが増えていきます。一人で学ぶこともあれば、まわりの人と一緒に試行錯誤することもあります。各々が自分のペースで学ぶため、黒板に学習の軌跡が残らなくなります。そうなると、今まで黒板に書かれていることを書き写してきた子どもは、何をノートに書いてよいのかがわからなくなります。
そこで、個別学習の際は、ノート指導も必要になります。ノートを「黒板を写すためのもの」ではなく、「問題解決のために試行錯誤するもの」「大切な考え方を残しておくもの」「問題を発展させ、探究するためのもの」「自分の学習を振り返るもの」という位置づけに変えていく必要があります。これは、一斉授業においても同様で、ノートを単なる記録媒体にしないことが大切です。
個別学習の際のノートの例
個別学習の際にノートを書くときは、「自分で考えたことがわかるように、ノートを書いていく」ということを意識させることが大切になるしょう。
個別学習の際、私は問題が書かれたA3判の紙を用意して配付します。表面に問題が1〜2問程度掲載されているだけで、あとは子どもがその問題を解き、裏面で解いた問題を発展させていくノートとして使います。表面で指導の個別化、裏面で学習の個性化を行うような流れになっています。
ただし、必ず配付するノートの表面の最初に「『どうやって考えたのか』『どうしてそうしようと思ったのか』『大事な考え方』を書けるようにしましょう! また、いくつかのやり方で解けたら、『共通する大切な考え方』も見つけられるといいですね!」と書いています。これが大事だと考えています。
@表面について
この時間にこちらから提示したのは、「次(半径3cm、高さ4cm)の円柱の体積の求め方を考えましょう」という問題だけです。
この時点で体積を求められるのは角柱だけなので、上のノートを書いた子どもは「どうやったら角柱に戻せるのか」ということを試行錯誤していきました。その結果、円の面積を求めるときに使った考え方を使って、円柱を細かい扇形に切り、直方体(角柱)に変形させて円柱の体積の求め方を考えたのです。
注目すべきは、右側の一番下に書かれている「直方体(求められる形)にして体積を求める」という言葉です。これは、円柱の体積を求めるための大切な考え方であるとともに、前時の角柱の体積の求め方と共通する大切な考え方にもなっています。さらに、この子どもは、円の面積の学習から円柱の体積の求め方のアイデアを見つけているので、円の面積の求め方との共通点でもあります。
A裏面について
裏面左側
裏面の左側は、表面で解決した問題を発展させて考える場です。
この子どもは、円柱の求め方で使った考え方を使えば、正五角柱や正六角柱も求められるのではないかと考え、裏面左側の白紙スペースに問題を発展させていきました。結果的に、体積を求めることはできませんでしたが、「底面を合同な二等辺三角形に等分して、二等辺三角形の高さがわかれば求めることができる」ということには気づいていました。
問題を発展させるときに大切なことは、解ける問題を考えることではなく、「表面の問題を解くときに使った数学的な見方・考え方が、他の場面でも使えるのか」ということを考えることです。問題が解けなくても、他の場面で使えることが理解できればよいわけです。実際、この子どもも右側(振り返りシート)で、今日の授業の大切な考え方として「求められる形にする」ということが書けていますので、体積の求め方で大切な考え方が理解できていることがわかります。
裏面右側
裏面右側は、授業の振り返りシートにしています。裏面の左側に何も書かれていなかったとしても、本時で気づいてほしい大切な考え方が気づけているかどうかを、この振り返りシートで確認するのです。
振り返りシートは毎回同じ構成で、個別学習だけでなく、一斉授業のときも含めて、すべての授業において共通のものを使っています。
私が一番見ているのは、「A今日の授業の大事な考え方・今までの学習の大事な考え方との共通点」という項目の内容です。ここに、本時で働かせてほしい数学的な見方・考え方が書かれているかどうかが、評価基準ということになります。授業を考える段階で、あらかじめ、ここにどんな言葉を書いてほしいのか(評価規準)を想定しておくことが大切です。特に、個別学習においては、ここに何を書いてほしいのかを想定しないと、ただ子どもが問題を解いて終わる1時間になってしまう可能性が高くなります。
個別学習の際のノート指導のまとめ
個別学習の際のノート指導において重要なことは「大切な考え方は何か」ということを考えながら学習を進めることを子どもに意識させることです。これは、ノート指導に限らず、個別学習全体において重要なことです。
しかし、これは口で言うほど簡単なことではなりません。自分のクラスの子どもも、全員が毎日完璧にできているわけではありません。しかし、毎日続けていくことで「問題を解くときに使った考え方は何かな?」「何問か解いてみたけれど、解くときに使った共通する考え方は何かな?」「これまでの学習と共通する考え方は何かな?」ということを、少しずつ考えられるようになります。そのためには、教師の言葉かけも大切ですが、「ノートに何を書くのか」ということを意識させることも大切です。