- とっておきの授業スキル
- 算数・数学
長瀬:今回は算数科です。立命館小学校の伊藤先生です。どうぞよろしくお願いします。
主体的学習を意識しすぎるがあまり、子どもに任せすぎると…。
・授業の流れが堂々巡りになり、結局ポイントを押さえられない
・空気が停滞して、子どもたちの集中力が切れる
といったことが起こります。授業のポイントを押さえ、なおかつ子どもたちが生き生きと学べる空間を作るためには、その授業の「うまみ」の見極めが肝心です。
スキル1「うまみ」の探し方(1)〜自己との「ずれ」〜
6年生の単元「場合を順序よく整理して」を既習後の発展学習では、こんな活動を仕組みます。(「場合の数」は6年生の単元ですが、5年生くらいから十分取り組めます。)
〈問題1〉
0・3・6・8の4枚のカードから3枚のカードを使って、3けたの整数を作ります。
全部で何通りできますか。
この問題の「うまみ」は2点あります。
・百の位に0は入らないこと。
・百の位に3が入った場合だけ考えれば、後は計算で処理できること。
このおもしろさに気づかせるために、例えば答えが6×4=24(通り)になっている子や、答えの18通りすべてを樹形図で考えている子を探し、検討させます。
もしくは、「まずは百の位に0を入れて…」とか、「百の位に6・8が入ったときにも樹形図をかいてみたら…」などのように、教師がとぼけます。
素直にそのように考えていた子は、自己認識との「ずれ」が生じるわけです。
スキル2「うまみ」の探し方(2)〜他者との「ずれ」〜
〈問題2〉
先ほどの3けたの整数のうち、偶数は何通りできますか。
一の位に0・6・8のいずれかが入ればよいのですから、樹形図をかいて14通りとわかります。
ところが、ある子が発言します。
「別の方法でしました。18−4=14(通り)です。」
ここで、自分と他者との「ずれ」が生じます。
全体でその考え方を検討すると、その子は先に一の位に3が入る奇数の場合を考え、全体の18通りから奇数の場合をひいて求めたことがわかりました。いわゆる「余事象」の考え方です。
教室からは歓声が上がります。
スキル3「おいしくない」ところは流そう!
つまり、「うまみ」のあるところとは、「ずれ」が生じるところです。もう少しわかりやすく言えば、子どもたちが引っ掛かりそうなところです。子どもが引っ掛かるところこそ、「うまみ」とも言えます。
では逆に、「おいしくない」ところはどこか。それは、子どもたちがすでに理解しているところです。この活動であれば、〈問題1〉で百の位に3が入った場合の数をていねいに考えたり、〈問題2〉で偶数の14通りをていねいに考えたりするところです。
それらは、演習授業や宿題で反復をすればよいからです。
「おいしくない」ところまで子どもに食べさせようとすると、授業がぐちゃぐちゃになってしまいます。
「おいしくない」ところは教師が食べ(あるいはさっと流し)、「うまみ」のあるところを子どもにじっくり食べてもらうという視点をもつと、授業にリズムができ、子どもたちが生き生きとしてきます。
我々教師は、常に「うまみ」を見極める眼を磨かなくてはいけません。
- 「ずれ」は授業の「うまみ」になる。
- 「おいしくない」ところは教師が、「うまみ」のあるところは子どもに。
長瀬:ありがとうございました。次回は西尾環先生の図画工作科です。どうぞお楽しみに。