- とっておきの授業スキル
- 図工・美術
長瀬:第6回は、熊本の西尾環先生による図画工作科の指導のアイデアです。図画工作科は若い先生にとっては苦手な人も多く、しかもその結果が作品に表れ、悩んでいる方も多いかもしれません。ぜひ、西尾先生の指導のアイデアを参考にしてください。
学年始めの絵画の授業では、描く楽しさや面白さを味わいながら、形のとらえ方や色の使い方等の基礎・基本を身に付けることが大切です。ここでは「見て線で描く」「絵の具を扱う」という視点で設定した2〜3時間程度で実施できるミニ題材(3年生以上)の中で、(1)意欲を高める導入の工夫、(2)線描指導、(3)着色指導の方法を紹介します。
スキル1導入の工夫とICT活用で題材が魅力的に
3・4年生では、描く対象物に出会って感動することから始まります。
題材「おいしそうなやさいたち」では、子どもが実物の野菜や果物の香りや触感を通して対象物を観察し、形の面白さや色の違いまで気付きます。
5・6年生では、描く対象物に思いを込めることをねらいます。
題材「卒業まで使うランドセル」では、1年生で重かった時から毎日背負ってきた日々を語り合います。すると、丈夫に縫ってある縫い目や、小さな傷に目が行くようになります。
これらのミニ題材は、実物との出会いで、子どもの興味・関心をそそります。加えて、ICT活用でさらに魅力を増します。例えば、教師がタブレットで撮影した対象物(野菜やランドセル)をテレビに映し出し、拡大機能で部分を大きく見せましょう。肉眼では注視しなかった形や色を発見し、「おお〜」と感動の声が上がります。さらに、先輩が描いた参考作品をスライドショーで見せながら描く意欲を高めます。
ほかにも「カラフルな春の花」(3・4年)、「はきなれたくつ」(5・6年)なども、魅力的な題材です。
スキル2かたつむり画法で形をとらえよう!
線描(せんびょう)は、スケッチ用のサインペン(スケッチペン)か、墨をつけた筆で、対象物を白い画用紙にかたつむりになったつもりで、ゆっくりと描くようにします。サインペンは、ペン先が直方体になっているものが強弱の線が出てよいです。(筆は習字の小筆程度。)
野菜や果物であれば、「実物よりちょっと大きく描こう」と呼びかけます。そして机間を回りながら「このでこぼこ感がいい」「形のゆがみをよく見て描けたね」などと声をかけていきます。子どもの中には、絵が小さくなってしまう子もいますが、そういう時は「じゃあもう一個、今のより大きく書いてごらん」と声をかけます。そうすることで、形のとらえ方を繰り返し学ぶだけでなく、ものの前後の関係や重なりについて指導することができます。複数個描いた子どもの絵を取り上げてクラス全体で一緒に見ながら、指導するとよいでしょう。
5・6年生では、靴やランドセルなどの対象物を様々な方向から見て場面構成を考えさせます。靴であれば、左右の組み合わせを工夫したり、視線を下ろして奥行きを感じさせたりしてから、描くようにします。
スキル3ビデオでバッチリ!用具の使い方
何年生であっても年度初めには必ず、絵の具、パレット、筆、水入れの使い方の基礎・基本を学ぶようにします。
また一色に思えるような対象物でも、よく見ればいろいろな色があることをふまえて、色づくりをさせましょう。例えば「にんじんのオレンジも赤と黄色の割合で色の雰囲気が違ってくる」「赤いランドセルに光が当たっているところは色が薄くなる」ということに気付くようにします。そして
- 混ぜる時は、弱い色を先に広げ、強い色を足していく。
- 光が当たって薄い色、と言うのは、白を混ぜるのでなく、水で薄くするということ。対象物の白もよく見れば、薄い色が見える。
ということを押さえます。
なおこれらの指導法は、下記のサイトにビデオでアップしています。
- ICTの効果的な利用で魅力倍増!
- 線描は、「ゆっくり」がキーワード。
- 動画で着色の基礎・基本を押さえよう。
長瀬:西尾先生ありがとうございました。次回は理科のとっておきスキルを静岡の森竹高裕先生にご紹介いただきます。どうぞお楽しみに。
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