- とっておきの授業スキル
- 理科
長瀬:第7回は理科です。静岡県の森竹高裕先生に紹介していただきます。森竹先生は静岡教育サークル「シリウス」のメンバーです。こちらもぜひご覧ください。(http://homepage1.nifty.com/moritake/)
「?」を「!」にするのが楽しい理科の授業です。子どもたちの「なぜだろう?」「不思議だな?」という疑問が解けたとき「わかった!」「なるほど!」という驚きや感動が生まれます。実験や観察を通して正しく理解させるためのポイントをまとめました。
スキル1理科は「三けん」 体験・実験・発見を大切に
理科では、体験・実験・発見の「三けん」を大切にしましょう。ここでは、3年「物とおもさ」の単元を例にあげます。
(1)体験は、単元導入時での活動です。この活動を通して、子どもたちが、不思議だな、調べてみたいという興味関心が高まるような活動を仕掛けます。
導入の活動で「重さくらべ十番勝負」をします。えんぴつと消しゴムなど、似ているもの同士を天びんに乗せて重さ比べをします。ワイワイと活動する中で、重さに対する見方が蓄積されます。
(2)実験は、学習問題に対して仮説を立て、それが正しいかを確かめることです。体験活動から生まれた「ものは形が変わっても、重さは変わらないのだろうか?」という疑問を解くために実験をします。
例えば、丸めた粘土と細長く伸ばした粘土、袋に入ったお煎餅と割れて粉々になったお煎餅などを天びんに乗せて比べます。
(3)発見は、実験の結果から考察することです。
丸めた粘土も細長くした粘土も同じ重さであることから、物は形は変わっても重さは変わらない、という結論(新しい発見、物の見方)を導きます。
スキル2小さなものは大きく、大きなものは小さくスケッチする
小さなものをスケッチをするときには、ズームアップで描かせましょう。
このとき、虫メガネを一つ持たせるとよいです。虫メガネのマジック効果が生まれます。虫メガネの倍率は、2倍程度です。子どもは目がいいので、わざわざ虫メガネを使う必要はありません。
しかし、あの丸い枠があることが重要で、子どもたちに丸い枠の中だけを集中して見させる魔法のメガネに変わります。「見えたものは大きく描くんだよ。」と声をかけて、小さなものはより大きく描かせます。
反対に、山や川など大きなものをスケッチをするときには、小さく描かせましょう。
スケールが大きい地学領域は、俯瞰できるように描きます。全体をとらえる、という描き方がポイントです。
子どもは、教師が黒板に描いた図を写すことを好みます。雲の名前と種類(十種雲形)や、火山の仕組みなど、単純な線で描かれた図解を熱心に写します。教科書や資料集などの精密に描かれた図は、子どもが写すには、細かすぎるようです。
スキル3みなし実験 黒板に一覧にすることで情報を共有する
実験方法がグループごとに違う場合、他グループの結果が分からない―そこで、黒板に結果を書いて一覧にすることで、実験をしたとみなして結果を共有することができます。
例えば、アルミニウムを溶かした塩酸の水溶液を蒸発させると、白い粉が出てきます。この白い粉がアルミニウムかどうか調べるときに、(1)電気を流す(2)もう一度塩酸に溶かす(3)顕微鏡で観察するなど、いくつかの方法がありますが、一つのグループで全ての実験をすることはできません。そこで、それぞれのグループの行った実験結果を黒板に書き、その結果を共有することで結論を導きます。(1)電気は流れない(2)塩酸には溶けない(3)光沢がない、という3つの実験の結果から考えて、アルミニウムではないという結論を導くことができます。
また、てこの釣り合い実験では、てこが釣り合ったときのおもりの数と中心からの距離を黒板に一覧にします。各グループが書いた数字の一覧を見ているうちに、「左のおもりの数×中心からの距離=右のおもりの数×中心からの距離」というきまりに、自然と気づくことができます。
- 理科の三けん「実験・体験・発見」を、単元展開の中に上手に位置づけよう。
- 観察では、何を観察させたいのか明確にして、大きいものは小さく、小さいものは大きく描かせよう。
- 実験結果は、黒板に結果を集約することで、実験をしたとみなすことができる。みなし実験で結果を共有しよう。
長瀬:森竹先生ありがとうございました。次回は生活科のとっておきスキルを古川光弘先生にご紹介いただきます。どうぞお楽しみに。