24日の時事通信の記事によると、アニメ画像を無断で使ったコンピュータウイルスを作成したなどとして、京都府警と五条署は24日、大阪府の大学院生ら男3人を著作権法違反容疑で逮捕した。ウイルス作成者が摘発されたのは日本では初めてとのことだ。
大学院生が作成したのは「原田ウイルス」と呼ばれるウイルスの亜種(※1)で、主にWinny(ウィニー)などのファイル共有ソフトのネットワーク上に、利用者からダウンロードされやすいように、人気アニメのタイトルを偽称したファイル名で流布されていた。同ウイルスをダウンロードするなどで入手しても、ダブルクリックなどをして開かない限り何も起こらないが、開いてしまうと、あるアニメの画面を改変した画像が表示され、その裏でパソコンに保存されたファイルやソフトウェアなどが削除されてしまう。
同ウイルスは違法なファイル共有を警告するメッセージなどを表示していたようだが、そうした行為とは無縁の人でもたまたま開いて被害に遭う危険性があり、どんな内容であれこのようなウイルスを作成することは悪質な行為であることに違いない。ところが日本にはこれを裁く法律がないため、今回の摘発は表示されるアニメ画像の無断使用が著作権法違反に当たることによるもので、苦肉の策と言えそうだ(※2)。逮捕された大学院生がどこまで本気だったのかは定かではないが、違法行為を警告しておきながら、自ら画像の無断使用で逮捕されるというお粗末な結果となった。
著作権法の改正によって、著作権侵害ファイルなどのダウンロード行為自体が違法化されようとしているこの頃だが、相変わらずファイル共有ソフトによる情報流出事件のニュースが後を絶たないようだ。今回の事件では、匿名性が高いとされていたファイル共有ソフトのネットワークへウイルスを流布した本人が摘発されたわけであり、もはや匿名性は失われていると言えよう。そろそろ違法なファイル共有からは卒業する時期ではないだろうか。
※1 その後の京都府警ハイテク犯罪対策室の捜査で、中辻容疑者は「原田ウイルス」の“原種”の作成も認めている。同ウイルスは、原田と名乗る男性の画像が表示されるほかは亜種と同様の危害を加えるようだ。ネット上には同ウイルスの亜種を作るソフトが流布されており、亜種は100種類以上出回っているとも言われている。
※2 2004年にWinnyの作者である東大助手が逮捕されたのも、ソフトウェア自体が違法なためではなく、Winnyによって著作権侵害行為を幇助した疑いによるものだった。Winny自体には情報を流出させるような悪意の機能はなく、ウイルスなどによって個人的なファイルが共有フォルダにコピーされてしまうなどにより情報流出が発生している。
- 「原田ウイルスも作成」…逮捕の院生(読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20080125p101.htm - Trojan.Haradong(シマンテックによる「原田ウイルス」の解説)
http://www.symantec.com/ja/jp/security_response/writeup.jsp?docid=2006-061914-4... - 反対意見多数でも「ダウンロード違法化」のなぜ(ITmedia News)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0712/18/news125.html - 著作権法改正へ? ネットユーザーの代弁者「MIAU」始動(2007/10/21)
http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/kaigi/?id=20070337 - 流出した後に待ちかまえるものは―個人情報流出問題(2007/7/2)
http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/news/?id=20070113

ITに長けている者は、そもそも穴だらけのインターネットなど、怖くて使えないものだ?