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基礎基本は定着したか― 20年度全国学力調査(中学校)
kyoikujin
2008/9/4 掲載

 2年目をむかえた全国学力調査。2日の記事でもお伝えしたように、小中学校の8分野全てで平均点が下降する結果となった。問題の難易度が上昇したことが下降の一因とされているが、それでは、漢字の書き取りや計算問題など、いわゆる基礎基本の問題の正答率はどうだったのだろうか?

正答率は上がっている?

 ここでは、過去の学力調査(※1)でも出題されており、なおかつ基礎基本といえる問題を見てみよう。

将来のことはヨソクできない。
(カタカナ部分を漢字の楷書で書く)

 まず、上の書き取りの問題(国語A大問6-1)、今年の全国平均正答率は63.2%。一方、昭和39年に実施された学力調査での正答率は僅かに16.4%となっている。

 では下の数学の問題はどうだろうか。

a=4、b=−3のとき、式abの値を求めなさい。

 この文字式の問題(数学A大問2-2)の全国平均正答率は71.6%、昭和37年調査では54.3%という結果。

 昭和30年代後半に中学生だった世代といえば、現在60歳前後ということになるが、最近の日本の中学生の学力低下を嘆いてばかりはいられなさそうだ。長いスパンでの比較となるが、少なくとも「最近の中学生は昔に比べて基本的な学力が不足している」という単純な分析はできないだろう。

その他の同一問題の結果は

 今回、文部科学省が調査結果の中で掲載している過去の同一(類似)問題との比較を集計してみると、全15問中10問は過去より上がっている(※2)。うち4問は数%の違いしか見られず、誤差の範囲ともいえる。唯一、10%近く正答率が下がったのが同音異義語の多い「対象」という言葉の適切な使い方を問うものだが、これだけから何らかの結論を導くのは難しそうだ。

地域間での定着率に一定の差

 では、過去との比較ではなく今年度の県ごとの比較はどうだろうか。最初にあげた国語A、数学Aの問題でいえば、それぞれ全国平均正答率が63.2%、71.6%に対して、その分野でトップの県の正答率は75.5%(秋田)、80.9%(福井)となっており、両問とも約10%の差がついている。全員が正答であって欲しい基礎基本の問題なだけにこの差は大きいだろう。

 今回の結果を受けて、成績の芳しくなかった一部の県を中心に調査結果を公表しようとする動きもある。しかし、秋田や福井はいずれも補修授業や教師の熱心な研鑽を好結果の要因としてあげており、基礎基本の定着には普段からの取組みが求められているといえるだろう。

〔注〕

※1 昭和30年代後半の悉皆調査と平成に入ってからの抽出調査がある。実施時期(学年)が異なる場合があり、その点留意が必要。

※2 5問の内訳は国語の語句の使い方に関するものが3問、数学の図形、1次関数に関する問題が各1問となっている。

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この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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