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中高一貫から小中一貫へ―広がる自治体の取り組み
教育zine編集部松野
2012/11/30 掲載
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  • 学習指導要領・教育課程

 27日、文部科学省は平成24年度分の高等学校教育の改革に関する推進状況について結果を公表し、中高一貫教育校の学校数が平成23年度から21校増加し441校となったことを発表した。
 
 現在の学制である6・3・3・4制は戦後まもなく制定されたが、現代の子どもの身体的発達に当初との乖離が生じてきたこと、また、小学校高学年と中学生の間で、この時期特有の心理的変化により学校の好き嫌いや学習に取り組む姿勢に差が生まれており、その結果学力不振や学校生活への不適応を招いていると考えられること(中1ギャップ)から、近年学校間の連携が重視されるようになってきた。
 冒頭で述べた中高一貫校は、平成11年度から制度化されており、大学入試に向けて独自のカリキュラムが組み立てられ、余裕を持って勉強に取り組める、ということで今大変な人気を集めている。

 また一方で、公式な制度ではないものの、各自治体からスタートした動きとして、小中学校間の連携も近年活発化してきている。

品川区の取り組み
 一例として、東京都品川区では、平成18年より区立の全小学校・中学校で小中一貫教育をはじめた。小中の授業のなめらかな接続を目的としたカリキュラムを作成し、義務教育の9年間を、1年生〜4年生、5年生〜7年生、8・9年生という4・3・2の3段階で捉えて指導を展開している。これは、今の児童は4年生と5年生の間に自尊感情の低下や生理的発達の顕著な変化がみられるという研究結果から考えられた構成で、4年生までは教科個別の学力だけではなく学習態度や学校生活についての指導も必要なことから学級担任制、教科の専門的な内容に対する関心が高まる5年生以降は段階的に教科担任制を採用しているという。
 また、5年生から7年生の間には、小・中両方の教員の配置や、少しずつ中学校の授業スピードに慣れることができるような授業時間の設定、小学校と中学校の学習カリキュラムの穴を埋め合わせるための独自の学習項目の設置がされており、子どもの変化への対応を重要視していることがわかる。

小中一貫教育のメリットとデメリット
 品川区や、平成12年から小中一貫教育に取り組んでいる広島県呉市では、一貫教育のメリットとして、

  • 小中学校間のスムーズな学習の接続が可能であること
  • 教員が小学生・中学生両方をみることで、子どもの具体的な学力の状況や理解力を把握できること
  • より幅広い年次での交流による、思春期における自尊感情の回復
    (低学年の面倒をみることで、「自分は頼りにされている、周りの役に立っている」と思えるようになる)

などが見られるという。

 逆にデメリットとしてよく聞かれる意見には、

  • 小中の節目の意識が薄れ、緊張感のない学校生活になる
  • ずっと同じ場所にいることで、子どもが環境の変化に弱くなるのではないか
  • 中学校からのリスタートがきりにくい(いじめがあった場合など)
  • 小中の両方に関わることによる教員の負担増

などがある。
 小中一貫教育には、施設の充実、自治体などによる制度面のバックアップが必要であるが、9年間の一貫教育によるメリットは学習面だけではなく精神面にも及ぶことが明らかになりつつある。メリットとして学習面ばかりがクローズアップされ、精神面での成長ができるのは従来型の学校制度である、とみる向きも確かにあるが、意外と「自尊感情の回復」はこの年代の子どもにとって大きな成長となるのではないかとも考えられる。
 一貫教育を取り入れている学校で行われていることは、どうしても「特殊な学校だからできる」と思われがちだ。もちろん、導入ということになればしっかりとデメリットの検討を行うことは大事だが、「中1ギャップ」という言葉が浸透し、小中学校の学習の接続が大きな課題となっている今、従来の学校でも小中一貫校の理念や取り組みから学ぶべきことは多いのかもしれない。

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