- 教育ニュース
- その他教育
11日、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果が文部科学省より公表されました。前回の2007年調査時、教育ニュースでは実際の問題を取り上げながらこのTIMSSについてお伝えしましたが、今回は少し視点を変えて、日本以外の国に目を向けてみましょう。
能力重視!? シンガポールの教育事情
1995年の調査開始時以来、常に上位をキープしている優秀国の一つにシンガポールがあります。日本より上位に位置するこの国の教育事情を、皆さんはご存知でしょうか。
シンガポールは、幼児教育3年、初等教育6年、中等教育4〜5年という教育体系をとっており、日本よりも中等教育が少し長めになっています。
しかし、日本との最大の違いは、「初等教育」にあります。シンガポールでは、まず初等教育4年生修了時に、初等教育5〜6年生のコース分けのための学力テストが行われます。その後、初等教育修了時にもPSLEとよばれる卒業試験が実施され、その結果によって中等教育で進む能力別コースが決められるのです。初等教育が義務教育とされているシンガポールでは、このPSLEに合格しなければ中等教育に進むこともできません。補足すると、シンガポールで義務教育制度が導入されたのは2003年と比較適最近のことです。高い学力を誇る国としては少し意外な事実かもしれませんが、外務省のシンガポールの紹介によれば、導入前からほとんどの子どもが中学校までは進学していたようです。
こうした教育体制から、シンガポールにおいては初等学校での成績というものが、より重要視されていることが分かります。高校受験で最初の進学テストを受ける子が多い日本とは、その点で少し雰囲気が違うかもしれませんね。
本当の学力差の原因とは
TIMSSにおいてシンガポールと日本を比較したとき、もう一つ注目したいのが、生徒の学習意欲に関する結果です。TIMSSでは毎回、学力調査と合わせて学習に関するアンケート調査が行われるのですが、中学2年生の理科を例に見てみると、以下のような結果が見られます。
「理科の勉強は楽しい」
シンガポール…肯定87%(「強くそう思う」「そう思う」を合算)
日本 …肯定63%
「理科の勉強が好きだ」
シンガポール…肯定82%
日本 …肯定53%
ざっとシンガポールと比較しても、日本は学力水準が高いにも関わらず、生徒の学習意欲はそれほど高くないことがわかります。この数値は国際平均と比べても低く、なんとも寂しい結果となってしまいました。上位を占めるシンガポールなどとの差は、単なる学力の差だけではなく、こうした学習意欲の差とも関係しているのかもしれません。
- シンガポールの教育制度
http://www.singaporeedu.gov.sg/jp/htm/stu/stu01.htm - 国際数学・理科教育動向調査の2011年調査 国際調査結果報告(概要)
http://www.nier.go.jp/timss/2011/T11_gaiyou.pdf