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政府は18日、幼児教育無償化に向けて、政府・与党による連絡協議会を設置する方針を固めました。無償化の対象となるのは3〜5歳児で、幼稚園や保育所のほか、幼稚園と保育所の機能を併せ持った「認定こども園」での自己負担を無料にすることで、子育て世帯の負担を軽減し、少子化対策につなげる狙いがあります。
与党は、衆院選の政権公約(自民党)から幼児教育の無償化を掲げており、安倍首相は19日の参議院予算委員会で、「財源を確保しながら前に進めたい。働き盛りの若い家庭の負担を減らす方向で努力しないといけない。」と述べています。
問題となる財源の確保
文部科学省は無償化にあたって必要な財源を、年7900億円程度と試算しています。政府・与党内には、5歳児に関わる教育のみを無償化する案も出ていますが、この場合でも年2700億円程度の予算が必要となります。
しかし、政府は消費税の増税による少子化対策として保育施設や職員数の拡充を想定しており、現時点では幼児教育無償化の財源にはなっていないため、財源をどう確保するかが実現に向けた最大の課題となりそうです。連絡協議会では、財源確保の手立てや実施時期、対象施設などを議論する方向で、実施時に所得制限を設けるかどうかなども検討していくこととなります。
幼児教育の現状
さて、「子ども子育て関連三法」や無償化の動きで注目が集まる幼児教育ですが、この機会に日本の幼児教育の現状について少し見てみましょう。
OECDの報告「図表で見る教育2012」では、
2010年において、日本の4歳児の97.2%が就学前教育を受けており、これはOECD加盟国中7番目に高い水準となっている。しかし、就学前教育に対する支出は低く、その費用のうちかなりの割合を家計が負担している。
日本の公財政教育支出は、対GDP比においても一般政府総支出に占める割合においても、他のOECD加盟国に比べてかなり低い。その一方、在学者一人当たりの教育支出は高い。これは、チリ、韓国に次いで3番目に高い水準となっている私的部門からの支出が多いことに依るところが大きい。教育支出全体の31.9%が私的部門により賄われているが、これには学校外の教育にかかる家計負担は含まれていない。
とあります。
就学前教育(幼児教育)の在学率ではOECD加盟国平均の81%を大きく上回っている日本ですが、公的支出の少なさは加盟国平均のGDP比0.5%を大きく下回り、GDP比0.2%と下から4番目の水準でした。それを補っているのが家計からの支出で、就学前教育に対する支出全体のうち家計支出の割合は38.3%と、3番目に高い数字となっています。ちなみに、在学率100%のフランスは94%を公的支出で賄っており、対GDP比は0.7%となっています。
今後への期待と課題
文部科学省の平成20年度「子どもの学習費調査」によると、幼稚園の子ども1人にかかる学校教育費は年間で公立が約13万円、私立が約37万円です。この金額をどの程度負担と感じるかは、家庭によって差があるでしょうが、その後の高校や大学の卒業まででかかる費用を合わせて考えれば、「子どもを産もう」「もう一人育てよう」と決断を促すほど、経済的な支援として有効な金額なのかは、少々疑わしさを感じます。 ただ、義務教育ではない幼児教育に収入の格差があることや、日本の幼児教育への公的支出が諸外国と比較して少ないことは確かですので、政府が幼児教育の機会を保証するという点には一定の意義があるでしょう。
一方で、幼児教育をとりまく課題は他にもあり、待機児童や無認可保育所の問題、幼保一元化・幼小連携など、幼児教育そのものの充実も求められています。幼児教育をめぐる今後の動きから目が離せません。