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「国際バカロレア」認定校、将来的に200校実現なるか
教育zine編集部大田和
2013/7/31 掲載

 昨年12月の衆議院総選挙で自民党が政権与党となり、第2次安倍内閣が発足して約7ヶ月。21日に投開票された参議院選挙で「ねじれ国会」も解消され、今後、自民党の政策が本格的に実行に移されていくことと思われます。

「世界に勝つ」教育再生

 5月、安倍首相は、「世界に勝つ」をテーマに成長戦略第2弾についてスピーチしました。
自民党の総合政策集の「教育再生」のリード文に「教育再生を断行し、世界トップレベルの学力と規範意識、歴史や文化を尊ぶ心を持つ子供たちを育む」とあります。このように、自民党は教育の面においても世界で戦えるグローバルな人材の育成に力を注いでいくものと思われます。

 自民党のグローバルな人材の育成に関する具体的な政策の一例として、総合政策集(PDF)には次のことが挙げられています。

  • 国際的に認められる大学入学資格である国際バカロレア資格について、一部のカリキュラムを日本語でも履修可能にするプログラム(日本語DP)を開発・導入する
  • 国際バカロレア資格を取得可能な高等学校等を平成30年頃までに200校程度に増加させる

「国際バカロレア」とは

 「国際バカロレア」とは、1968年に発足した国際バカロレア機構が、インターナショナルスクールの卒業生に国際的に認められる大学入学資格を与えることを目的として作ったプログラムです。プログラムは、3〜13歳向けの初等教育プログラム(以下PYP)、11〜16歳向けの中等教育プログラム(以下MYP)、16〜19歳向けのディプロマ資格プログラム(以下DP)の3つがあります。DPの課程を修了し、ディプロマ資格取得のための統一試験に合格すると、国際バカロレア資格を取得することができます。
 以上3つのプログラムのうち、安倍政権が200校程度に増加させようとしているのは、DPの認定校です。

 母国語での授業が認められるPYPやMYPに対し、DPは英語、フランス語、スペイン語のいずれかの言語で授業を行うことが基本となっており、日本では基本的に英語で授業を行っていました。そのため、DPの認定校はインターナショナルスクールなど英語で授業を行う基盤のある学校に限られていました。しかし、2015年より多くの教科を日本語で授業する日本語DP導入校も認定することを、文部科学省と国際バカロレア機構が合意しました。
 「国際バカロレア」についての文部科学省の統計によれば、世界のDP認定校は2373校(2012年9月)であるのに対して、日本のDP認定校は16校(2012年6月)と少ないですが、日本語DPの導入により、大幅に増加する可能性が見えてきています。

日本語DP認定校増加に向けての課題

 基本的に全て英語で授業を行うというハードルがなくなり、グローバルな人材の育成に向けて大きな前進をしたかのように見える「国際バカロレア」政策ですが、課題が多くあると言われています。ここでは、いくつかの課題にしぼって紹介します。
 1つ目は、日本語DPであっても英語で授業を行う科目があるということです。日本語での授業が導入されるのは生物、世界史など、DPの教育課程のうち3分の2の科目に留まります。外国語や数学、芸術など残りの3分の1の科目の授業は英語で行わなければいけないため、生徒も教師もなお「英語」という大きなハードルを超えなければならないことには変わりはありません。語学のみならず、数学、芸術などの授業も英語で行う必要があるため、それを教える教師の育成方法も問題となります。
 2つ目は、DP認定校となるためには、学習指導要領と国際バカロレア機構が定める教育課程の両方を満たさなければならないことです。既にあるDP認定校では、1年次に学習指導要領に基づく必履修科目の学習を終え、2年次以降でDPに対応した科目を学ぶなどの措置をしている学校もあるそうです。生徒は、日本の学習指導要領の内容に沿った一般的な授業に加えて、DPに対応した科目を学ぶことになるため、生徒にとっては学習の負担が増えることになります。
 学習指導要領で示された内容に対して、授業時間数が確保できていないと言われている昨今の教育現場で、DPの教育課程を授業に取り入れることは容易ではなさそうです。
 このほかにも、国際バカロレア機構へ支払う認定費の負担や国内大学の入試の対応の遅れなどの課題があります。

 このように、多くの課題を抱える日本語DP認定校の増加政策ですが、実現すれば世界で戦えるグローバルな人材が育つことが期待されます。5月に提言案が提出された小学校の英語教科化など他の政策とともに、自民党がどのように政策を実現させていくのかしっかりと見守っていきたいと思います。

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