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これまでの教育委員会制度の見直しを目的とする「改正地方教育行政法」が,13日に可決・成立しました。
改正法の焦点となるのは,各自治体の教育行政における首長の権限が強化されるということです。教育委員会が意思決定を担ってきた各自治体の教育行政に,首長の意向がより反映されやすくなります。
改正のきっかけは?
教育行政の改革については,滋賀県大津市のいじめの問題で,教育委員会が迅速に対応できず,責任の所在が曖昧であることが露見したことなどをきっかけに,議論が活発化しました。
中教審では,地方教育行政の課題(PDF)を以下のようにまとめており,
- 権限と責任の所在が不明確
- 地域住民の意向を十分に反映していない
- 教育委員会の審議等が形骸化している
- 迅速さ,機動性に欠ける
教育行政の権限と責任が明確にされておらず,教育委員会と首長等との関係が曖昧になっていること。地域住民の教育に対する願いや悩みなどを十分に把握し,迅速に対応する体制ができていないことなどが,問題視されていました。
課題改善の方法は?
改正地方教育行政法(PDF)では,以下が柱として示されています。
1 教育行政の責任の明確化
2 総合教育会議の設置,大綱の策定
3 国の地方公共団体への関与の見直し
現行の制度では,教育委員長は教育委員の中から互選され,教育長は教育委員会によって選任されていますが,改正によって,2つの役職を合わせた「(新)教育長」が置かれ,教育委員会を代表することとなります。そして,この「(新)教育長」は,首長が議会の同意のもと任免できるようになります。
また,首長と教育委員会で構成する「総合教育会議」が設置され,教育行政における重点的な施策や緊急な問題の措置について協議を行います。
それに加えて,いじめなどの緊急時には,文部科学大臣が各教育委員会に指示ができることを明確化するよう見直します。
一方で,教科書の採択や教職員の人事などの教育現場により密着度の高い権限は,これまで通り教育委員会に残ります。
権限が集中する「(新)教育長」の人選が肝となり,首長がふさわしい能力や見識を持っている人物をきちんと見極めて任命することが重要となってくるでしょう。
展望と課題
学校や教育委員会は,踏み込みにくいある種のサンクチュアリのようなイメージがある場所。学校や教育行政に要求されることが増え,教育行政の範囲だけでは解決しがたい問題も起こる今,そこに一歩踏み込んでいくことは,必要な時期であるとも思えます。
今回の改正法によって,民意をより反映しやすくなることが期待されますが,その代わりに,一歩誤れば,政治的中立性が求められる教育行政が,首長の選挙戦略にふりまわされてしまうようなことにもなりかねません。
また,教育行政の最終的な権限が教育委員会にあるという,現行の大きな枠はそのままであるため,「総合教育会議」で首長と教育委員会が激しく対立した場合に,行政の方針が定まらず,学校現場に支障をきたすような事態も考えられます。
施行は来年4月。それぞれの自治体が新しい制度をどのように運用していくのかが,これからの教育行政の鍵を握っているといえるのではないでしょうか。