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今月12日、国立教育政策研究所は「小学校学習指導要領実施状況調査」について(PDF)を発表しました。これは、現行の学習指導要領が目指す教育の実現状況を検証するため、平成25年2月18日〜3月8日に、全国911校の小学4〜6年生の児童111,797人を対象に実施したペーパーテスト、及び児童・教師・学校長を対象とするアンケート調査の結果を公表したものです。今回はこの調査結果の概要を示した上で、次回の学習指導要領について公表されている主な提言を紹介し、「21世紀型能力」についても見ていきたいと思います。
■現行の学習指導要領「生きる力」
そもそも、現行の学習指導要領はどのような教育目標を掲げているのでしょうか。簡単におさらいしておきましょう。現在の小学校学習指導要領は平成23年4月より実施され、今年の春で5年目を迎えます。前回の改訂時には、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)での順位が下がったことや、IEA国際数学・理科教育動向調査において数学・理科に関する興味・関心が低い水準を示したことなどを受け、
「ゆとり」か「詰め込み」かではなく、基礎的な知識・技能の習得と、思考力・判断力・表現力等の両方の育成が必要である
として、授業時数や学習内容が増加し、小学校5、6年生に外国語活動が導入されたほか、思考力や表現力などをはぐくむために、国語にかぎらず各教科で意見交換や論述、レポート作成などを行うことが推奨されました。
■「小学校学習指導要領実施状況調査」結果の概要
続いて、国研が発表した調査結果を見てみましょう。まず、ペーパーテストの基礎知識を問う問題において、H15(旧学習指導要領時)に行われた前回調査と同一の問題(社会、算数、理科合わせて45問)の正答率を見てみると、前回の正答率を上回った問題は23問、前回と差がない問題が13問、前回を下回った問題は9問と、半数以上の問題で正答率が上がっています。このことから、学習指導要領の目指す「基礎的な知識・技能の習得」に関しては、一定の効果があったと言えるのではないでしょうか。
一方、多くの教科に共通して見られた課題は「考え表現すること」であり、「思考力・判断力・表現力の育成」は、十分に達成されているとは言えないようです。
課題があると考えられる事項(抜粋)
- 文章の種類や特徴に応じて、効果的に文章を書くこと(国語)
- 課題解決に向けて主体的に文章を読むこと(国語)
- 情報を比較・関連付け・総合して社会的事象の働きや役割などを考え表現すること(社会)
- 目的に応じてグラフを用いて考え説明すること(算数)
- 結果を分析し、予想や仮説に照らし合わせた考察をすること(理科)
■次回の学習指導要領改訂は…?
今回の調査からは、教科の基礎知識がある程度定着した一方で、思考力や表現力には課題があることがわかりましたが、次回の学習指導要領はどのような方向性をもって改訂されるのでしょうか。平成24年12月に文部科学省に設置された検討会において、13回にわたって重ねられている議論の要旨(PDF)を見てみましょう。
主な提言事項
今後、学習指導要領の構造を、
- 「児童生徒に育成すべき資質・能力」を明確化した上で、
- そのために各教科等でどのような教育目標・内容を扱うべきか、
- また、資質・能力の育成の状況を適切に把握し、指導の改善を図るための学習評価はどうあるべきか、
といった視点から見直すことが必要。
今までの学習指導要領は、「各教科で」「何を教えるか」を中心として考えられているため、「教えたこと(=知識)が身についているか」が重視され、どの教科においても必要となるような、思考力や表現力などの教科横断的な能力の育成が不十分であったと考察し、学習指導要領を構造から見直し改善すべきとの考えを示しています。
構造から見直すにあたって、各教科で教える内容から出発するのではなく、まずは「どのような能力を育成すべきか」を明確化し、現在各教科で教えられている内容を改めて分析した上で、新たな学習指導要領として再構成することを、同検討会では提案しています。
■「育成すべき能力」とは
では、今後「育成すべき能力」とはどのようなものが想定されているのでしょうか。同検討会は、「課題解決力」「対人関係能力」「情報活用能力」などを挙げ、さらに国研の「21世紀型能力」(PDF)も踏まえての検討が必要である、としています。
21世紀型能力とは、課題解決力や論理的・批判的思考力などの「思考力」を、言語スキルや数量スキル、情報スキルなどの「基礎力」が支えつつ、自律的活動力、人間関係形成力などの「実践力」が「思考力」の活かし方を導くという構造になっており、これら3つの力を支える具体的な能力についてはさらなる検討が続いています。
次回の学習指導要領は「思考力・判断力・表現力」等に課題がある今の教育を改善する道しるべとなるでしょうか。 今後この議論がどのように発展していくか、注目していきたいと思います。