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今月10日の「体育の日」に、スポーツ庁が平成27年度体力・運動能力調査の結果を公表しました。
体力・運動能力調査とは
「体力・運動能力調査」は、文部科学省主催で昭和39年から行われているもので、国民の体力・運動能力の現状を明らかにし、体育・スポーツ活動の指導などに活用することを目的としています。
調査には平成11年度から「新体力テスト」が導入されており、平成27年度も6歳から79歳までの男女約66000人に実施されました。「青少年」とされる小学生、中学生、高校生の年齢の6〜19才は、握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、持久走・20mシャトルラン(往復持久走)、50m走、立ち幅とび、ハンドボール投げ(6〜11才の小学生はソフトボール投げ)の8つの種目を行いました。平成27年度の体力・運動能力調査の結果はどうだったのでしょうか。
青少年の体力・運動能力調査の結果
青少年の平成27年度体力・運動能力調査報告書の「体力・運動能力の年次推移 青少年(6歳から19歳)(PDF)」によると、新体力テスト施行後の17 年間では、ほとんどの年代で、合計点がわずかに向上していることが分かります。しかし、男子の握力及びソフトボール投げについては低下傾向にあります。また、結果を長期的にみると、体力水準が高かった昭和60年頃と比べ、中学生男子の50m 走及び高校生男子の50m 走を除いては低い水準になっています。
この結果を、スポーツ庁は運動を週に3日以上する群と、週3日未満しかしない群に分けて「青少年の運動・スポーツ実施状況と体力・運動能力の関係(PDF)」で分析しています。これによると、平成27年度の13歳の男女の結果では、握力の結果が運動を週3日以上する群に対し、週3日未満しかしない群の方が昭和60年度からの下落幅が大きいことがわかります。
また、50m走の結果では、運動を週3日以上する群は昭和60年度から平成12年度に低下し、平成27年度はまた向上しているのに対し、週3日未満の群はほぼ横ばいになっていることがわかります。
これらのことから、スポーツ庁は以下のように結論付けています。
子供の体力・運動能力は昭和60年頃と比べると依然低い水準にあるが、よく運動している子供に比べ、あまり運動していない子供がより低下している。したがって、今後は運動が不足しがちな子供たちへの対策が重要だと言える。
運動能力が昔と比べて低下しているということは、昨今でよくいわれることですが、それに加え、運動する生徒としない生徒の差が広がっているという結果が見えてきました。
このような結果を受け、生徒がより運動しやすくなるような取り組みをしている自治体があります。
神奈川県の取り組み―子ども☆キラキラプロジェクト―
神奈川県では、体力・運動能力調査の結果が例年全国の平均を下回っています。これを受け、子どもの体力向上や生活習慣の改善を目的として「子ども☆キラキラプロジェクト」を平成27年から発足させました。「神奈川県記者発表資料」によると、主な取り組み内容は以下になっています。
子ども☆キラキラプロジェクト(主な取組内容)
【プロジェクト1】体力・運動能力を向上します。
○ 「体力テスト」キャラバン隊の派遣
・ 子どもたちが力を発揮できるよう、直接小学校に県教委の体育の指導主事を派遣します。また、地域の小学校等の研修会に、指導主事を派遣します。
○ 「体力向上運動」の開発
・ 体力向上を目的とした小学校の体育授業の導入運動を、指導主事が新たに開発します。
○ 大学生ボランティアによる小学校への支援
・ 体力テストの実施時に体育系学生ボランティアを派遣し、測定等を支援します。【プロジェクト2】運動習慣を確立します。
○ 運動習慣カードの作成・配付
・ 子どもの運動習慣を記録できるカードを作成・配付します。
○ 「子どもキラキラタイム」の実施
・ 休み時間等を「子どもキラキラタイム」として、外遊びを奨励します。【プロジェクト3】生活習慣を改善します。
○ 「Joy!Joy!通信」の活用
・ 県教委が毎月(年10回)発行する健康体力つくりの「楽しく(Enjoy)うれしい(Joyful)情報紙」で生活習慣を改善します。
これに加え、「平成28年度 子ども☆キラキラプロジェクト」(PDF)では、【プロジェクト2】として、トップアスリートを小学校へ派遣したり、「みんなで朝ラジ!!」プロジェクトと称して朝のラジオ体操を普及させる活動をしたりしています。
児童が少しでも運動をしたくなるように、「運動習慣カード」では、運動やスポーツをしたあとにただ記録をつけるだけではなく、ビンゴ形式で記録をつけていくなどのゲーム形式になっています。また、「Joy!Joy!通信」では、児童に親しみやすいイラストで、日常で簡単にできる運動や生活習慣の改善法などが記載されています。
神奈川県の取り組みはまだ始まったばかりですが、運動をしなければと強制するのではなく、少しでも児童が楽しめるやり方で運動や生活習慣の改善を推奨しているところが、注目すべき点だと思います。
このような取り組みを通して、児童の運動能力が向上し、健康維持につながっていくことを期待したいです。