教育ニュース
文科省の報道発表から研究会参加ルポまで、知っておきたい色々なジャンルの教育情報&ニュースが読めます。
新学習指導要領(案)理科の注目ポイント
教育zine編集部新村
2017/3/24 掲載
  • 教育ニュース
  • 学習指導要領・教育課程

 平成29年2月14日、新しい学習指導要領(案)が公開されました。
 今回の学習指導要領(案)では、知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」が改訂のポイントの1つとして挙げられました。そのため、授業の創意工夫や教科書等の教材の改善を引き出していけるよう、全ての教科において3つの柱で再整理が行われました。3つの柱とは、次のようなものとなっています。

1『知識及び技能』
2『思考力、判断力、表現力等』
3『学びに向かう力、人間性等』

 これらの柱は、知・徳・体にわたる「生きる力」を子供たちに育むため、「何のために学ぶのか」という学習の意義を共有することを目指し、『何ができるようになるか』を明確化するものだとされています。
 ここでは、上記の変更に伴って改訂された理科の教科目標、および学習内容の中でも特に改訂が大きかった「中学校理科の生物領域」について述べていきます。

小学校・中学校理科の教科目標

 理科の教科目標は、次のようになりました。※小・中学校とも、下記の文に続いて、前述の3つの柱に基づいた具体目標が(1)〜(3)として挙げられていますが、ここでは割愛させていただきます。

〇小学校
 自然に親しみ、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験を行うなどを通して、自然の事物・現象についての問題を科学的に解決するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
〇中学校
 自然の事物・現象に関わり、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験を行うなどを通して、自然の事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

 大きな変更点として、赤字で記した「理科の見方・考え方を働かせ」と記述されていることが挙げられます。中教審の答申によると、「理科の見方・考え方」とは「自然の事物・現象を、質的・量的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な視点で捉え、比較したり、関係付けたりするなど、科学的に探究する方法を用いて、多面的に考えること」としています。現行の学習指導要領では、この「理科の見方・考え方」は「養う」となっており、目標とされていました。しかし、学習指導要領(案)では、「理科の見方・考え方」を「働かせる」と変更されたことから、「資質・能力を養うための方法」として示されたことが分かります。

小学校の各学年・中学校の各分野での目標

 前述した教科目標を受け、小学校の各学年および中学校の各分野での目標は、以下に示した表のようになりました。小・中学校とも、探究能力・問題解決能力を段階的に育成していくことを目指しています。そのため、学年ごとに育成する資質・能力が掲げられており、各学年・各分野の「目標及び内容」において、「どのような見方・考え方」を働かせ、「資質・能力」を育成していくのかが書かれています。※以下の表では、最初に紹介いたしました3つの柱のどの項目に対応しているかを色分けして示しています。

小学校の各学年および中学校の各分野での目標

学習内容で大きな変更が見られた「中学校 生物領域」

 学習内容に関しては、前回改訂(H20)時に「理数教育の充実」として、授業時数の増加・内容の充実が行われたため、今回は現行内容を維持したものとなっています。前回と比べれば変更点は少ないですが、小学校・中学校ともに追加・移動・削除されたものがあります。ここでは、その中でかなり大きな変更が行われた「中学校の生物領域」に絞ってまとめてみます。

◆現行の1年植物→2年動物という流れが、大きく変更

 現行の学習指導要領では、1年「植物の生活と種類」、2年「動物の生活と生物の変遷」、3年「生命の連続性」とされていましたが、1年「いろいろな生物とその共通点」、2年「生物の体のつくりと働き」、3年「生命の連続性」という形に再編されました。今まで、植物と動物に分けて学習していたものが、1年「生物の外部形態」に着目した内容→2年「生物の体のつくり(体内構造)」に着目した内容となり、動物と植物を分けずに学習していくことになります。また、2年で学習していた「生物の変遷と進化」は、3年の「遺伝の規則性と遺伝子」の後に移動されました。

◆内容の取扱いについても大きく変更

 上記で述べた学習の流れの変更に伴い、内容の取扱いについても多くの箇所で変更がありました。ここでは、目立った改訂点を学年ごとにまとめていきます。
〇1年
・身近な生物の観察では、ルーペや双眼実体顕微鏡などを用いて、外見から観察できる体のつくりを中心に扱うこと。【外部形態に着目した扱い】
・被子植物が単子葉類と双子葉類に分類できることについては、葉のつくりを中心に扱うこと。【葉・茎・根のつくりと働きが2年に移動したことに伴うもの】
・種子をつくらない植物が胞子をつくることにも触れること。【シダ植物・コケ植物に関する記述が削除】
・脊椎動物と無脊椎動物の違いを中心に扱うこと。脊椎動物については、体のつくりの共通点としての背骨の存在について扱うこと。また,体の表面の様子や呼吸の仕方などの特徴を基準として分類できることを扱うこと。無脊椎動物については、脊椎動物の体のつくりの特徴と比較し、その共通点と相違点を扱うこと。【2年より移動】
〇2年
・光合成における葉緑体の働きにも触れること。また、葉、茎、根の働きを相互に関連付けて扱うこと。【1年より移動】
〇3年
・進化の証拠とされる事柄や進化の具体例について扱うこと。【2年より移動】

 以上のように、今回の学習指導要領(案)では、生物分野で大きな変更が行われました。また、ここでは触れておりませんが、その他の分野でも生物分野ほどの量ではありませんが、内容の追加や変更、移動、削除が行われていますので注意が必要です。
 パブリックコメントも締め切られ、今後修正や追記はあるのか、また、指導目標や評価に関して学習指導要領解説ではどのような具体例が示されるのかが注目されます。

コメントの受付は終了しました。