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子供をとりまくICT環境,学校と家庭で比べると?
教育zine編集部 大矢
2018/1/31 掲載

 文部科学省は昨年12月26日、「平成28年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」を公表しました。この調査結果では学校でのICT環境の整備状況が報告されています。平成30年度の文部科学省予算で「情報活用能力の育成を含む教育の情報化の推進」に 7億円が投じられているように、教育の情報化は国全体を挙げて推進されていますが、現時点で学校のICT機器はどのくらいの普及率なのでしょうか。

小・中・高へのICT機器普及の現実は?

 平成29年3月1日時点の結果で、小学校・中学校・高等学校の教育用コンピュータの総台数は2,027,520台、そのうちタブレット型コンピュータ台数は373,538台となっており、3年前と比較して5.1倍と、大きく増加していることがわかります。

文科省-ICT環境整備状況

※文部科学省 「平成28年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」より

 しかし、教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数を見ると5.9人/台となっています。第2期教育振興基本計画(平成25年6月14日閣議決定)で目標とされている水準は「教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数3.6人」であり、この目標は、現時点では達成が厳しいものだということがわかります。

 また、この調査の中では教員のICT活用指導力についても触れられています。

  • 「授業中にICTを活用して指導する能力」の中の複数の質問に対し⇒平均して75.0%の教員が「わりにできる」もしくは「ややできる」と回答
  • 「児童・生徒のICT活用を指導する能力」の中の複数の質問に対し⇒平均して66.7%の教員が「わりにできる」もしくは「ややできる」と回答

このように、教員自身がICTを活用する能力への評価と、児童・生徒にICTを活用させる能力への評価に差が出る結果となっています。このことから、学校現場では先生がICT活用をして授業を展開することは広がっており、その指導に自信がある教員でも、それに比べると児童・生徒たち自身にICT活用するよう指導する能力には自信がない場合がある、もしくは授業でそのような機会が少ないため、評価を低めにつけていることが推測されます。

家庭学習でのICT活用は学校より進んでいる?

 ここまでは学校におけるICT環境についてみてきましたが、一方、家庭ではどうでしょうか。

 内閣府が昨年2月に公表した「平成28年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」の結果によると、平成28年度時点でのスマートフォンの所持率は、小学生で27.0%、中学生で51.7%、高校生で94.8%となっています。

内閣府-スマートフォン携帯電話利用状況

※内閣府 「平成28年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果」より

中学生以上で見ると半数以上の生徒がスマートフォンを持っている、という結果となっています。

 また,MMD研究所が昨年11月に実施した「中高生の勉強時におけるスマートフォン利用実態調査」では、勉強するときに中高生がスマートフォンを活用しているかどうかを調査しています(オンライン学習塾「アオイゼミ」を利用する12〜18歳の男女2721人を対象)。その結果によると、中学生の91.0%、高校生の92.1%と、調査対象者の中ではかなりの多くの生徒が「勉強でスマートフォンを使用する」と回答しています。勉強でスマートフォンを使用している生徒がどのように活用しているかを見てみると、

  • 「わからない問題や単語の検索に使う」
    ⇒中学生の55.1%、高校生の55.2%
  • 「動画サイトやアプリで問題の解き方や授業を視聴する」
    ⇒中学生の38.0%、高校生の37.2%
  • 「わからない問題の解き方をネットで質問」
    ⇒中学生の27.6%、高校生の27.1%

という結果となっています。半数以上が「わからない問題や単語の検索に使う」と回答しており、主にインターネットを用いた調べものに利用している生徒が多いようです。また、次いで30%以上が「動画サイトやアプリで問題の解き方や授業を視聴する」と回答しており、動画やアプリを趣味や娯楽のためだけでなく、学習にも用いていることがわかります。

さらなる教育の情報化に向けて

 教育の情報化が進み、学校においても、家庭においても、より情報端末を使った学習が日常になってくると考えられます。学校においては、まずは十分な台数を配備して、児童生徒1人1人が授業で活用する機会を増やすための土台を築くことが必要になってくるかと感じます。また、家庭においては、今回の調査対象者で見るとすでに多くの中高生がスマートフォンを勉強に活用しているという背景を踏まえ、今後は調べものだけでなく、より多彩なコンテンツが学習に利用できるようになることがポイントとなりそうです。

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