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先日、2020年度の小学校教科書の検定結果が文部科学省から発表されましたが、各教科書会社からもホームページなどで徐々に詳しい内容が公開されています。新学習指導要領の下、様々な変更が話題となっていますが、ここではその中でも初の教科書が作成された「英語」に注目し、その特徴をおさえていきたいと思います。
音声中心の活動に、書かせる活動も
まずは気になる内容について。見ると、英文がずらっと並ぶというよりは、「音声を聞いて○を付けたり線で結ぶ」「クラスメイトにインタビューする」といった、英語を聞いたりやり取りをするようなアクティビティが中心となって構成されています。これは現在小学校で使用されている「We Can!」の流れを汲んでいるものと思われます。各単元に「一日の生活について話そう」「将来の夢を紹介しよう」などの大きな目標があり、その目標に向かって必要な表現を耳で触れ使っていく、という流れのようです。そのため、”I’d like to 〜”のような中学校高学年で学ぶ表現も登場していますが、決して難しい文法の仕組みを理解させるためではなく、その働きを活動の中で無理なく理解できるようになっていると言えるでしょう。
こうした活動も、教科書に書き込むスペースが設けられていたり、付属のカードなどを使用して行うことができるようになっており、教科書1冊で完結できるようになっています。その他、単語カードやシール、別冊辞書などの付属品が各社様々に付いており、至れり尽くせりという印象です。
小学校英語では、どこまで文字指導を行うのかも高い関心が持たれています。各教科書では、アルファベットの書き方について、読み方と合わせページを十分に割いて扱われているのがうかがえます。また聞いたりやり取りをしたりといった活動が中心ではありますが、単元の最後などのまとめとして、英文を書いたり発表する活動も設けられているようです。とはいえ、自分で英文を生み出して書くというよりは、単語や英文を書き写したり、モデル文を元に単語を入れ替えて書く、というようなレベルが到達点となっていることにも注意したいところです。
デジタル面でのサポート体制
内容に加えて特筆すべきは、デジタル面でのサポートが広くなされていることでしょう。報道もされていますが、教科書内にはQRコードが多数掲載されており、そこから音声などを自由に聞くことができるようになっています。これまでは、一人一人にCDなどを配布しない限りは、児童は教室のみで音声に触れていましたが、これで家庭などでも音声に触れることができるようになりました。音声が身近になる一方で、パソコンやスマートフォンが学習により深く関わるようになり、家庭での適切な使用方法を考える必要がありそうです。
一部の教科書では、音声だけでなくアニメーションや実際の人物の映像などで、英文の使用場面を提示できるものもあるようです。これらは児童の興味を引くとともに、教科書や音声だけではイメージしづらい場面の理解を助けるものになることでしょう。また他にも、アルファベットの書き順アニメーションやフラッシュカード、ゲームといった様々なデジタル教材も用意されるとのことです。指導する側は、様々なデジタル教材の中から、目的に適ったものを選び使用していく必要がありそうです。
イラスト・キャラクターの変化
教科書を大きく印象付けるのが、イラストや登場するキャラクターです。前回の中学教科書改訂時には、ある教科書のイラストが今時で可愛らしいと話題になりました。今回の小学校教科書もこの流れを踏襲しているように見受けられ、多くのイラストは児童が親しみやすい今風のものになっています。
また中学教科書同様、学年を通じて1つのストーリーが描かれ、登場人物も設定されているようです。中にはブラジルやシンガポールなどの出身の人物や、白人だけでなく黒人やアジア系などの人物も登場し、意図的に多様性に触れさせようというねらいもうかがえます。こうしたところから、児童の異文化への興味や多様性への理解を引き出していければ、小学校での英語学習の意味合いもより深まるのではと思われます。
まだまだ情報が公開されたばかりですが、今後詳細がより明らかになり、新しく始まる小学校英語を期待を持って迎え入れることができるようになればと思います。