- 教育オピニオン
- 外国語・英語
全国の小学校で外国語活動がスタートし、日本の英語教育は新しい時代へと船出しました。今、小学校英語への期待が高まっています。そうした期待のひとつは、入門期の子ども達に英語をたっぷりと聞く機会を与えられることです。外山滋比古先生が言う「絶対語感」の種を撒くチャンスです。「絶対語感」とは、「ゴミを目で入ったよ」「あさっては晴れだったね」と聞くと日本語として「変だぞ」と感じる力です。英語においても「耳が英語を覚えている」と、“Do he go to school?”と聞いたり、言ったりすれば変だと察知できます。
『英語ノート2』では“I want to be a soccer player.”という表現を扱っています。中学校の基準からすると難易度の高い英文です。小学校ではこうした表現を‘unanalyzed whole(未分析の全体)’として耳から丸ごと覚えます。私の子どもは、幼稚園入学前の言葉が未熟な頃に「おのおの方、頭が高い、控えおろう…」と言って印籠をかざしていました。本人は「おのおの方」「頭(ず)」などの言葉の意味をわかってはいませんが、相手に「ははあー」と言わせたいときの「決まり文句」として、言葉の働きと場面と台詞をセットにして覚えていました。この耳から身に付く‘unanalyzed whole’こそが小学校英語が目指す学びです。小学校では、まずはたっぷりと聞く機会を作っていただきたいと思います。
中学校では、移行期間の小学校英語を経験してきた新入生が入学してきました。新入生の英語に対する反応の良さに、小学校英語の成果を感じている先生方は多いと思います。一方、小学校英語ではテストも宿題も課されません。学びに対する保証がなく、新入生が発する英語が正確でないために、小学校英語に疑問を持つ先生もいます。しかし、不正確な英語は、自然な言語発達のプロセスと考えられないでしょうか。それは小学校の新入生が日本語を正しく使えないのと似ています。小学1年生は「とうもろこし」を「ともころし」と言ったり、鏡文字を書いたり、「わ」と「は」を混同したりします。それらは小学校の教育を経て徐々に修正されます。同じように不正確な新入生の英語も、中学校の英語教育をとおして修正されることでしょう。
中学校の英語教員は英語教育のプロです。たとえ新入生の英語が不正確でも、言葉の発達過程と受け止めて、英語の音声、文字、文法、使い方の点から、新入生が大人の英語の使い手として成長するように育てていただきたいと思います。