教育オピニオン
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子どもの学ぶ力を育む体育学習
奈良女子大学附属小学校阪本 一英
2011/6/30 掲載

 体育の学習の中で、子どもが自ら考えて試行錯誤し、様々な工夫をしながら、自分の体育生活を充実させていく力を育みたいと考えている。そのような子どもの学びを育む体育学習は、どのようなことに留意して取り組めばよいだろうか。

 一つの運動技能について、その習熟過程を分析し、どのように取り組むとその技能を効果的に伸ばすことができるのかを知っておくことは、とても大切なことである。そして、分析した習熟過程に沿ったスモールステップの課題を設定し、ポイントを押さえながらステップを踏ませていく指導は、技能定着に効果的でもある。しかし、このような指導は、子ども自らが考え、自らの体育生活を充実させる力を育むことが難しいだけでなく、運動嫌いを生み出す危険性が高いことも知っておかなければならない。与えられた課題が優しすぎる子どもたちには、退屈な体育学習となる一方、最後まで課題が達成できない子どもには、劣等感を与えることにもつながってしまうからである。
 私は、単一の運動を一律一斉に指導することはしない。仮に、単一の運動に取り組ませることがあるとしても、その取り組み方は、子どもたちに考えさせたいと思う。
 その運動がもう少しでできそうな子どもには、あと何に気をつければできるようになるのかを考えさせ、既にできている子どもには、どうしてできるようになったのか、友だちに何を伝えていけばできるようになってもらえるのかを考えさせるようにする。子どもたちの発想から、教師も気付いていなかった新しい視点が見つかることさえ出てくる。子どもたち同士の中で、できるようになるための一人ひとりの試行錯誤や工夫を共有し、それらの方法の中で、自分に合う方法がどれかを考えさせていく。一人ひとりの苦労や工夫を通して、新しい技能を獲得していく学びの姿が尊いと考えているからである。教師の持つ分析からの視点は、たくさんの子どもたちからのアドバイスの一つとして、本当に必要な子どもに生かしていけばよい。教師も子どもも一緒になって学びを創りだして行くことが大切だと考えているのである。

楽しい体育の授業2011年7月号より転載

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