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一 じわじわヒントのじわじわクイズ
「じわじわクイズ」と板書した。
そのとたん、「じわじわクイズって何〜?」と、質問が飛んだ。声の方を向いてニッコリし 「やってみますね。」
私の好きなくだものについてクイズを出します。私の好きなくだものを当ててください。わかったら、声を出さずに手を挙げて、すぐにおろします。
最後の指示が難しいので、みんなで一緒に「手を挙げて、おろす」練習を二回した。
ノートを開かせ、板書を写させた。「先生と同じくらいのスピードで書くんですよ。」
(板書)
日付
じわじわクイズ
@ どんな色ですか?
A どんな形ですか。
B どのくらいの大きさですか。
※一文書いたら、一行空けて次の文を書くよう指示した。
「色って漢字で書けますか? 平仮名でもいいですよ。」などと知らせながら書いていく。
書き終わった子には、鉛筆を置くよう指示をする。鉛筆を置いた子のそばに行き、「字が上手ですねえ。」などと褒める。褒めて回っている間に、大体の子が書き終わる。
「途中でもよいので、鉛筆を置きなさい。」全員がこちらを見ていることを確認。板書した@を指さして、「さんはい!」
子ども「どんな色ですか?」
藤崎 「オレンジ色です。」
「もうわかった。」「かんたん。」と叫ぶ子。答えを言いそうになるのをあわてて押さえて、手を高く挙げている子もいるので沢山褒める。板書したAを指さして、「さんはい!」
子ども「どんな形ですか?」
藤崎 「まるくて、ボールのような形です。」
「もう、かくじつ!」「おまえ、まだ、わかんねん?」大騒ぎである。板書Bを指さす。もう「さんはい」と言わずとも大丈夫である。子どもが声をそろえて聞いてくる。
子ども「どのくらいの大きさですか?」
藤崎 「これくらい(両手で大きさを示しながら)の、私のげんこつ一つぶんくらいです。」
「わかった、わかった!」と手を挙げている子がほとんどだが、ほんの数人、首を傾げているので、こう言った。
もうわかったけど、ね・ん・の・た・め・に、他にも聞いておきたいことはありませんか?
この質問が、わかりにくかったようだ。あるいは、質問の意味はわかっていても、「何を言えばよいのか」わからない様子だった。
数秒して、一人の男の子が手を挙げて「すっぱいですか?」と聞いてきた。「いい質問ですねえ!」と褒めてニコニコしながら、板書をした。
C どんな味ですか?
そして、指さす。すかさず子どもが声を出す。
子ども「どんな味ですか?」
藤崎 「すっぱくて、甘いです。」
すると、女の子が手を挙げて、「最初の一文字は何という字ですか?」と聞いてきた。「それ言ったら、簡単すぎるよ!」という声が出る。頷きながら「ホント、絶対わかるすごくいいヒントですよね。」板書して、指さす。
子ども「はじめの一文字は何ですか?」
藤崎 「……お・です。」
「わかりましたか?」(はい! はい!)
一列、一人ずつ言わせる、「オレンジです。」「オレンジです。」「オレンジです。」 「オレンジです。」(「です」まで言えてエライ!)
「オレンジだと思う人?」(ほぼ全員挙手。)
「他の答えの人?」(いない。)
「正解は、オレンジでした!」(ワー!)
「少しずつ、少しずつ、じわじわとヒントをもらうので、じわじわクイズと言うのです。」
二 先生のようにやってみよう
「クイズを出してみたい人!」
数人の手が挙がった。その中の一人Rくんを前に出す。張り切ったRくんがさっそく言う。
「ぼくの、好きな食べものを当ててください。」
(とっても上手です。でも、「食べもの」だと範囲がとても広くなるので、「くだもの」に言い直してもらいました。)
板書した@を指さして、「さんはい!」
子ども「どんな色ですか?」
Rくん「黄色です。」
Aを指さして、
子ども「どんな形ですか?」
Rくん「ほそ長いです。」
Bを指さして、
子ども「どのくらいの大きさですか?」
Rくん「えーと、これくらいです。」
さて、答えは、何でしょう? 「バナナ」でした。
三 お隣さんとクイズ大会
「では、お隣の席の人を相手に、やってみましょう。」
隣同士のペアを確認。(人数が奇数だったので、一人席の子に「あなたは先生とペアになってね。」と伝える。)
ジャンケンをして、どちらが先にクイズを出すのか決めさせる。勝った方が先にクイズを出す。(負けた方が、色、形、大きさの順にたずねていくわけである。)
念のため、次のことを聞く。
「くだものは全部好きじゃないという人はいますか?」
一人手が挙がった。
「じゃあ、キミは、野菜でクイズを出しますか?」
「え〜、野菜もあんまり……うん、わかった。野菜でやる!」
四 自分のクイズをノートに記録
まだ、お隣さんと楽しげに会話しているペアもいてストップをかけるのは心苦しいが、ノート指導に移る。
「あなたの作ったクイズを先生にも教えて欲しいので、ノートに書きます。」
さきほど板書したとき、一行ずつ空けておいたところに、黄色いチョークで答えの例を書いていく。「これは、先生の答えです。参考にしてね。」
@ どんな色ですか?
オレンジ色です。
A どんな形ですか。
まるくてでこぼこしています。
B どのくらいの大きさですか。
げんこつくらいです。
「大きさは、このくらいって、書いてもわかりにくいね。同じくらいのものを書くといいね。例えば、ぼくの頭より少し小さいとか、地球くらいとか……。」
(サッと顔を挙げて「地球くらいなんて、ありえないよ〜」と、ニコニコしながら反論する子もいる。)
五 このクイズをした後で……
東京書籍二年上「よく見て書こう」の学習では、野菜の苗や花を観察して、「色・形・大きさ」などを書く活動をする。「どんな色ですか」「どんな形ですか」「どのくらいの大きさですか」という対話をすることで、子どもたちは「色・形・大きさ」を伝えると、物のイメージが如何にわかりやすくなるかを実感している。観察の「見どころ」「書きどころ」の重要さをすぐに理解することができるはずである。
国語教育2011年8月号より転載