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「つぶやく」ことで「つながる」
つぶやくことでつながるTwitterやFacebookが人気ですが、算数科でも「つぶやき」を大切にすることが大事と考えています。今回は「つぶやき」と「つながる」をキーワードにして「ふきだし法」による言語活動充実の意味について考えてみることにします。
「つぶやく」ことで思考が「つながる」―内的言語の持つ意味
つぶやきと言いますと、外的に音声化された言語活動を連想しがちですが、人は問題解決をしようとするときには、「あーでもない」「こーでもない」と心の中でぶつぶつつぶやききながら思考を進めていることは確かです。私は、算数科の学習過程においても、ヴィゴツキーが、子どもの自己中心的言語を「自分のための言葉」が形成される過程ととらえていること、また、精神間機能から精神内機能へと転化されるまさにその狭間に位置付けていることに注目すべきだと考えています。
例えば「線分図」という極めて算数的な表現方法の獲得にも、学級内での指導において外的な言語活動を伴って学習された図的表現が、「線分図を使ったらこの問題もうまくいくかな?」といったつぶやきを意図的に意識化させることによって、メタ認知が形成され、あたかも自己中心的言語が内的言語と変化していくように、自発的に使える思考法として定着していくと考えています。つまり「この問題は前やった問題とここが似ているな」→「線分図で考えてみようかな」→「うまくいった。式を立てよう」→「答えが出た!」という思考の筋道が頭の中でつながっていくような学習を大切にしていくことが内的な言語活動を活性化させると考えています。
「つぶやく」ことで子どもの内面と「つながる」―思考の可視化と「ふきだし法」
指導と評価の一体化とは、教師の指導と子どもの内面の思考の一体化であると考えています。それに対して、子どもの頭の中が見えずに指導するのは、手さぐり、カンだよりの指導と言ってもいいかもしれません。医師は、さまざまな方法を用いて体を診断してくれます。つまり、医師は体の状態を可視化するツールをたくさん持っていると言えます。
気軽に「ふきだし」で子どもが内面をノートに書いてくれることによってその子の学習の在りようを情意面も含め可視化し、そこにかかわっていくことができるのが「ふきだし法」です。このツールによって教師は、授業中、リアルタイムに子どもの内面とつながっていくことができるようになります。
「つぶやく」ことで友達と「つながる」―PeerLearningのツールとしての意味
授業での学習は、教師との教授⇔学習関係だけが重要なのではありません。子ども同士が、思考過程に学びあうPeerLearningの観点が大切です。外的なコミュニケーションが、内的なコミュニケーション力に移行していくメカニズムを先に述べましたが、自己内対話による推論、証明といった高次な精神機能は、もともとは、子どもたちの集団生活の中で生じる口論のようなものがきっかけとも言われています。友達と「あーでもない」「こーでもない」と議論していくことは、内的口論と言われる高度な精神機能を高め、言語力、説明力といった大切な力を育てていく源なのです。その意味から、教師が関わること以上に子ども同士の関わりを「ふきだし法」では重要視しています。子どもたちが自分の考えを自由に表出し、友達とつながっていくことで高まりあう指導を実現するために、ノートや板書といったツールが大きな役割を果たしていくことになります。詳しくは拙著『算数科 言語力・表現力を育てるふきだし法の実践〜算数的活動と思考過程記述のアイデア〜』を参照ください。
参考文献
ヴィゴツキー『新児童心理学講義』(柴田義松訳)2002 新読書社
三宮真知子『思考におけるメタ認知と注意』1996 認知心理学4思考 東京大学出版会所収