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叱ることは愛情
私たちが子どもを指導するとき、「叱る」という行為を避けて通ることはできません。ときに厳しく苦言を呈さなくてはならないことも少なくありません。子どもに限らず、人から叱られることを望む人は、ほとんどいません。特に子どもは、親や教師から叱られることに、とても神経質で恐怖さえ感じています。ですから、叱るという指導法は、敬遠されることが多くなります。では、なぜ、子どもに疎まれる可能性のある「叱り」という指導法が、昔から脈々と受け継がれてきたのでしょう。
教師が子どもを叱るその根底には、「子どもに良くなってほしい」「団結力ある集団になってほしい」という願いが込められています。子どもに、自分自身の不足を気付かせ、自分から正しいと思う行動をすることができるように促すために叱るのです。子ども・学級集団のより良い成長を促すために叱るのです。子どもに対する深い愛情が、叱りの根底にあります。
時間を守らなくなってきたクラスの叱り方
新年度がスタートして、10日も経つと、様々な「ゆるみ」が子どもたちに見られるようになります。例えば、チャイムが鳴っても、サッと席につかない。休み時間が終わっても遅れて教室に入ってくる。集合時刻になっても、数名が遅れてやってくる。最初は、一人や二人だったのが、日を追うごとに、時間に無頓着な子が増えていくようになります。
時間を守る意識をクラスに行き渡らせるためには、最初の一人や二人に対する指導が重要です。「まあ、仕方ないことか」などと、見過ごすことは、もっての他なのです。よく、全員が揃うまで待って、遅れて来た子に注意するという指導法を見かけますが、これは間違いです。チャイムが鳴ったら、授業を始め、集合時刻になったら行動を開始することが大切です。遅れて来た子は、クラスのみんなが、活動を始めているのを見て、「まずい」と反省することになるでしょう。取り立てて教師が厳しく叱らなくても、十分効果的な叱り方と言えます。時間を守ることができた子を認めることにもなります。遅れた子を待つことは、結局「遅れることを容認する」ことになってしまいます。
時間にルーズな子が出始めた時点で、「先生は、待ってくれない。時間に厳しい人だ」と、子どもたちにメッセージを送るためには、言葉で叱るよりも身をもって体験させることのできる、このような厳しい叱り方が必要です。
整理整頓ができなくなってきたクラスの叱り方
クラスの「ゆるみ」が形になって表れるのが、机周りやロッカー周りの乱れです。小ざっぱりとして引き締まった空間の中でこそ、意欲的で充実した学校生活を送ることができます。整理整頓の乱れもまた、一人や二人の少人数の乱れから広がっていきます。最初の乱れを防ぐことが、大きな乱れを防ぐことにつながります。クラスには、整理整頓にまるで無頓着な子や、整理整頓の習慣が全く身に付いていない子が必ずいます。そのような子の乱れを防ぐことが、乱れの芽を摘むことになります。
整理整頓が不得意な子の机やロッカーが目に見えて乱れる前に、指導するのがコツです。乱雑な状態になるまで放っておくと、整理しようという意欲がなくなります。また、特定の子ばかりを叱ることになるので、ますます整理整頓に対する意欲を失わせることになります。授業の終わりや帰りの会の後、わずかな時間を使って、クラスで定期的に机やロッカーを整理する時間をとるようにします。
また、誰かの持ち物やゴミが落ちているのを、そのままにしておかず、気付いた者が拾うように指導することが必要です。最初のうちは、ほとんどの子が無頓着なので、教師が率先して拾い、「鉛筆が落ちているのを、先生だけが気付いたんだね」「ゴミが落ちているような場所で勉強したくないよね」などと、軽くたしなめるような叱り方を続けることで、落し物やゴミを進んで拾うクラスに育っていきます。このような指導によって、引き締まった感のある教室環境ができあがり、それが子どもに影響して、様々なトラブルを防止することになります。