問題解決の授業の終わりに、子供のどんな姿があればよいでしょうか。
私は、子供から「だったら…」という言葉が生まれてきてほしいと願っています。「だったら」とは、子供が自ら問いを発展させていくときに出てくる言葉です。
1 「だったら…」で、考えが広がり、深まる
2年で「三角形と四角形」の学習をしたときのことです。三角形と四角形の定義をまとめていると、ある子供がふと「三角形と四角形があるんだったら、五角形や六角形もあるんじゃないの?」とつぶやきました。
「だったら…」というつぶやきが出てくると、嬉しくなります。「まだ習わないけど、実は五角形や六角形もあるんだよ」と伝え、黒板に五角形や六角形の図をかいてみせました。
すると、他の子も「だったら、七角形だってできるよ」「八角形だって…」と続き、さらには「百角形も!」「千角形も!」と言う子も出てきました。
そんな中、ある子が「でも、一角形や二角形はないよね」と、つぶやきました。なるほど、大人からすれば当たり前のことなのですが、そんなことに気づくとはおもしろい発想です。
さらに、別の子が「先生、一角形もできるよ。しずくの形!」という声をあげ、黒板に次のような形をかきました。確かにかどが1つの形です。一角形の発見に、クラスがざわめきました。
そこで、私は「だったら、二角形は猫の形だね」「三角形は、チューリップの形だね」と言い、次のような形を黒板にかきました。
すると、子供たちは「あれ?」という表情になりました。「そんなの三角形って言わないよ」と言うのです。そこで、どうしてチューリップを三角形と言わないのか、その理由を話し合いました。子供たちは「かどがあるだけじゃダメ。3本の直線がいるよ!」「曲がった線じゃダメ。直線で囲まれないと!」などと説明していきました。
三角形の定義は、「3本の直線でかこまれた形」です。「だったら…」と考えを発展させることで、子供たちはわかったつもりになっていた三角形の定義をもう一度見つめ直していきました。そして、図形の学習において大切な「形の特徴を言葉で表す」という数学的な考え方が育まれました。
2 「だったら…」の楽しさを味わわせる
それでは、「だったら…」と問題を発展させて考える子に育てるには、どうすればよいのでしょうか。
まずは、「だったら」と考える楽しさを、子供に味わわせることが大切だと思います。最初のうちは、教師から「だったら」を提示するのもよいでしょう。
例えば、□の中に1〜5の中から4つの数字を入れて、なるべく大きな答えをつくる学習をしたとします。十の位に大きな数を入れればよいことがわかります。
その後に、教師が「だったら、一番小さい答えは?」と問いかけるのです。十の位に小さな数を入れればよいことがわかります。さらに「だったら、2番目に大きい答えは?」「ひき算だったら…?」と考えていってもおもしろいでしょう。教師自身が「だったら」を楽しむ姿勢を見せるのです。
そんな授業を繰り返すうちに、子供から「だったら…」というつぶやきが聞こえ出すことでしょう。そうなればしめたものです。そんなつぶやきを、褒めて広めていけばよいのです。
3 「だったら…」が、「主体的な学び」への鍵
次期学習指導要領に向けて、文科省は「主体的な学び」というキーワードを掲げました。算数における「主体的な学び」とは、どのような学びなのでしょうか。私は、それを紐解く鍵になるのが、「だったら」なのではないかと思います。問題を解決して終わるのではなく、解決したことから、新たに考えたいことを見つけていく。そんな姿が求められているように思います。
最近は、45分完結型という言葉が誤解され、
45分でブツ切れになってしまう授業が流行ってる気がします。
でも、子供の追究意欲って、そういうものではないですよね。
だったらというキーワードが、
これからの主体的な学びへのヒントになるのではないでしょうか。