教育オピニオン
日本の教育界にあらゆる角度から斬り込む!様々な立場の執筆者による読み応えのある記事をお届けします。
子どもの心をギュッとつかむ! 暑中見舞い・残暑見舞いの実物見本
大阪府寝屋川市公立小学校松森 靖行
2018/8/1 掲載

 なかなか子どもたちに会えなくなる長期休業の時こそ、子どもたちのことをじっくりと考え、新学期の学習や行事の準備など、次なる手だてを考えたいものです。もちろん、長期休業時は、教師も思い切り休みましょう。頭も心も体もリラックスしていると、ふとした瞬間に子どもたちや学級のことを思い出すことがないでしょうか。「あの子はどうしているかな。」「あの時の行動には、このような意味があったのかも。」「新学期は、みんなでこんなことをがんばってみよう。」と一瞬、色々な考えが頭をめぐることがあります。実は、そのようなリラックスをしている時の考えこそが、重要なポイントになることが多いのです。子どもたち、学級について思いついたことをメモに残しておき、後日しっかりと考えて新学期の準備をしてもよいでしょう。そして、長期休業中に何ができるのかを考えて実行すると、新学期のスタートもスムーズで、教育効果も倍増します。その長期休業中の、子どもと保護者とつながる方法の一つが「葉書」を送ることなのです。
 私は、ゴールデンウィーク、夏休み、冬休み、そして必要に応じて(褒めたい時など)全員に葉書を送っています。毎年、子どもたちや保護者に驚かれますが、インパクトは大です。それぞれの時期で、葉書を送る意図は違いますが、今回は「暑中見舞い・残暑見舞い」について紹介します。

1 夏休みに暑中見舞い・残暑見舞いを出す効果

 夏休みに暑中見舞い・残暑見舞いを出す効果は、教師・子どもたち・保護者、それぞれにあります。教師は再度、子どもたちや学級について考える機会がもてます。1学期末に成績をつけたり、所見を考えたりする時に、子どもたちや学級について考えてはいるのですが、その時は時間に追われてしまって…ということもよくあることです。休みに入り、じっくりと1学期の様子を振り返ってみましょう。そして、まだ褒めていなかったこと、2学期に期待することなどを、葉書に書きます。短くて構いません。その作業こそが、児童理解であり、新学期の学級経営へつながっていくのです。
 子どもたちは、「休みの日の先生」に興味津々です。それは送られてくる葉書でも同じです。学校がない時に、先生から届く葉書には、特別な意味があるのです。葉書に添えられている一言で、新学期へのやる気も倍増します。また、問題行動を起こしがちな子には、その抑止にもなったことがあります。新学期になり、葉書のことで子どもたちとの話が盛り上がったこともあります。「休みの日でも、自分の担任の先生は、自分たちのことを思ってくれている。」と子どもたちはうれしく思うはずです。それは、保護者も同じです。「先生、休みの日に葉書をくれる先生なんていませんでした。」とびっくりされることがよくあります。まだまだ教師からの葉書は浸透していないようです。「先生からの葉書で、親も新学期へのスイッチが入りました。」「心配なことがあるのですが、先生からの葉書で、まずは相談してみようと思いました。」など、保護者からもうれしい言葉をたくさんいただきました。たった1枚の葉書で、多くの教育効果が期待できるのです。

2 実践のポイント&文例集

 葉書を書く上でのポイントを文例と共に示します。

ポイント@ 残暑見舞いの方が効果は高い。
 「暑中見舞い」か「残暑見舞い」か? どちらか1つでよいです。残暑見舞いの方が、始業式が近いので効果が高いと思います。

文例)
 いよいよ2学期ですね。1学期につけた力を生かして、2学期も37人「(学級目標)」に向かってがんばろう!!

ポイントA 住所や同じところは印刷でもよい。
 イラストや住所等は、印刷でもかまいません。子どもたちの氏名は、丁寧に心を込めて手書きです。その際、子どもたちの氏名の横に、「ご家族様」とも書いておきます。そのような丁寧さも大切です。(様々な事情の子どもがいますので、必ずしも「ご家族様」でなくてもよいです。)

ポイントB その子へのメッセージを。
 だらだらと書かず、短く、その子へのメッセージを書きましょう。これも必ず手書きです。ほめたかったこと、新学期への期待、何でも構いません。

文例)
・運動会で踊りを本気でがんばっていた○○君の姿が忘れられません。
・2学期の学芸会では、○○さんの堂々とした演技に期待しています。
・お助けマンの○○君! 1学期はたくさん助けてくれてありがとう!
・発表ナンバー1の○○さん! 2学期も授業を盛り上げてね!

3 実践のアイデア&実物見本

 葉書の具体的なアイデアを、実物の写真と共に示します。

アイデア@ 教師の夏休み報告

写真1

 教師が夏休みに行った場所、したことを写真入りで、可能な範囲で紹介してもよいでしょう。クイズにしておくと、夏休み明けに盛り上がります。

アイデアA 全員分合体すると…

写真2

 少し手間はかかるのですが、始業式に全員が葉書をもちより、全員分を合わせると担任からのメッセージやイラストが完成するようにしておきます。

アイデアB 当選番号を書いておく

写真3

 始業式の日に、全員何かが当たる抽選を行います。景品は、学級のオリジナルシールや宿題の余ったプリントなど(笑)。お金をかけずに行います。大盛り上がりです。

アイデアC 有名人からの葉書

写真4

 教師のからの住所、名前は、裏に印刷しておきます(学校によって、教師の住所は非公開が多いです。その場合は、学校の住所を印刷します)。葉書の表の左下には、有名人の名前を書いておきます。歴史人物、芸能人などです。ただ,人権について配慮も必要ですし、そのようなことが難しい学級、子どももいます。くれぐれもよく考えて行いましょう。例としては、「徳川家康」「フランシスコ・ザビエル」「ウルトラマン」「モモクロ」などです。始業式の日に、「有名人から葉書が来てなかった?」と尋ねると、盛り上がります。

 最後にひとつ、注意点をお伝えします。
 葉書の返信を、子どもたちや保護者に求めないようにしましょう。家庭の事情は様々です。始業式の日に、「ちゃんと返信しなさい。」と話をするのも御法度。あくまで教師からの一方的な葉書でよいのです。

松森 靖行まつもり やすゆき

 1976年、岡山県生まれ。14年間、岡山県で小学校教諭を経験した後、寝屋川市へ。小学校教員20年目。現在、大阪府寝屋川市公立小学校教諭。岡山県時代、教育委員会と協力して、若手教員の研修を担当。現在、寝屋川市小学校社会科研究会事務局長。主に社会科と学級経営、保護者対応、子供の心をつかむ分野で成果を挙げ、学力と同時に、学級も充実させる手法は注目をあび、雑師や新聞の取材を受け、NHKでも放送された。単著に『子どもと保護者の心をわしづかむ! デキる教師の目配り・気配り・思いやり』(明治図書)、小学館教育技術、明治図書各教育雑誌、日本教育新聞などに執筆・記事多数。

コメントの受付は終了しました。