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- 教育オピニオン
- その他教育
(1)「SOSの出し方に関する教育」推進の背景
学校の場における自殺予防教育は、文部科学省が平成26年に公表した「子供に伝えたい自殺予防(学校における自殺予防教育導入の手引)」などに基づき行われてきました。しかし、「死ぬこと」や「自殺」という言葉を明示したプログラムの実施にあたり保護者の同意の必要性を強調していたため、学校現場での実施のハードルは大変高いものでした。
平成29年6月の調査によると、「死ぬこと」や「自殺」を明示的に取り上げる自殺予防教育プログラムを保護者等との合意形成を図った上で実施した割合は、全体の約1.8%にとどまり、十分な取り組みが行われているとは言い難い状況でした(「平成28年度 自殺対策基本法第17条第3項に定める教育又は啓発の実施状況調査結果概要」:平成29年6月、文部科学省初等中等教育局児童生徒課)。
このような状況を乗り越えるため、平成28年4月に施行された改正自殺対策基本法に基づき、「SOSの出し方に関する教育」が進められることになりました。すべての児童生徒を対象に、地域を巻き込んで「自分を大切に、他人を大切に」という自尊感情の涵養と「つらい時には周囲の信頼できる大人に助けの声を出しなさい」という具体的スキルを身につけさせる50分授業を1回完結式で行うことを目指しています。また、授業の実施者は教師に限定せず、保健師などの外部講師などを活用することも推奨されています。具体的な実践モデルとしては、東京都足立区の授業実践が注目されています。
(2)SOSの出し方を教える前に知っておきたいこと
「SOSの出し方に関する教育」を教える前に3つのことをよく理解して頂きたいと思います。
第1に、「自殺予防」という医学モデルの発想から抜け出るということです。自殺リスクの高い児童生徒を早く見つけて予防の手立てを考えるという危機介入や治療的対応を重視する二次予防的発想ではなく、すべての児童生徒を対象に地域づくりや学校づくりを重視するヘルスプロモーションの視点から、「自分を大切に、他人を大切に」という自尊感情の涵養と「つらい時には周囲の信頼できる大人に助けの声を出しなさい」という具体的スキルを身につけさせる教育へと発想の転換を図ることが重要です。
第2に、授業の実施者に多様性を持たせ、保健師などの外部講師、教師・養護教諭・スクールカウンセラーなどのティーム・ティ―チングなどの形式を採用可能にすることです。
第3に、当然のことですが、児童生徒の発達段階に応じて授業内容を合わせていくことが求められます。例えば、平成30年2月に東京都教育委員会が公表した「SOSの出し方に関する教育を推進するための指導資料」では、学習指導要領等を勘案し、小学校、中学校、高等学校の3校種での授業シナリオが用意されています。
(3)SOSの出し方を教えるときのポイント
SOSの出し方に関する実践モデルとして、東京都足立区の授業実践が最も参考になると考えられます。
足立区の授業実践では、外部講師として地区担当保健師が1回完結式の授業を行う形式をとっています(一回完結式外部講師活用型)。授業において示されるキーメッセージは、
@自尊感情を涵養する
A信頼できる大人を見つけて話してみる
B信頼できる大人が見つからなかったら、地域の相談窓口に相談する
CSOSの出し方を身につける
ということです。授業の実施前に担当する外部講師(保健師)と学校側担当者が打ち合わせを行います。そして、「自分を大切にしよう」、「信頼できる大人に相談しよう」という簡潔なメッセージを児童生徒に伝えることを授業の目標として設定します。また、授業を行う保健師が児童生徒に対して、地域の信頼できる大人として、顔を覚えてもらうことも重視します。
このような先進的な事例を参考にして、地域の実情に合った取組をすべての自治体で推進することが望まれます。
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