- 教育オピニオン
- 教師力・仕事術
1 教員のメンタルヘルスの現状
厚生労働省と文部科学省との協力調査では、教職員は一般企業労働者と比べて、普段の仕事に3〜4倍疲労を感じるということが分かっています。
一般企業労働者が「とても疲れる」と回答したのは14.1%、教職員は44.9%。また、「やや疲れる」との回答した一般企業労働者は58.1%、教職員は47.6%でした。両方の割合を加えると教職員は92.5%の方が疲れています。「とても疲れる」教員が約半数、私はこの数字を見て非常に驚きました。
仕事によって異なりますが、教員というだけで疲れる割合がかなり高く、メンタルヘルスに留意していただく必要のある職業だということです。
では、何に対して疲れているのか、仕事や職業生活において目立って多かったのが「仕事の量と質」です。一方の一般企業労働者は、「安定性と将来性」、「人間関係に疲れる」との回答でした。このことから、教員に特化したストレス対策を図るうえでは、「仕事の量、質」という部分に注目してサポートすることが重要だということが分かります。これについては、制度として昨今の働き方改革が適応される業種であると感じています。“ここまでが教員の仕事”、“この時間までが就業時間”と区切る仕組みが望まれます。また、教員おひとりおひとりも、心身の健康を損なわないように、“何時まで仕事をしたら終わってないけれど帰ろう”などの働き方を心がけると、精神疾患予備軍にならずに済みます。
病院で患者さん方にお会いしている経験から、教員は多忙さをベースとして、多層な人間関係に疲れていることも分かっています。本来の業務対象である児童・生徒だけでなく、保護者、地域、同僚、管理職など、対応しなければならない人が多いというのも、消耗する一因と思われます。人に密に関わる仕事は、疲れます。自分のケアのため、話し相手を職場内外に確保するのも、予備軍にならないポイントのひとつです。
2 5分でできる教員のためのストレス・チェック
目安としてお使いください。生前、懇意にさせていただいていた中島一憲先生からいただいたものを改変いたしました。
以下にあげる項目のうち、最近1ヶ月の間にあてはまる項目に丸をつけてください。
中島一憲先生が作成されたリストを改変したものです。
〈参考文献〉中島一憲『先生が壊れていく 精神科医のみた教育の危機』(弘文堂、2003)
3 ストレスへの効果的な対処法・発散法
休養法には、(1)積極的休養法、(2)消極的休養法とがあります。まだ余裕があるなぁと思う方は、気晴らしに出かける、友達と会ってご飯を食べる、身体を動かすなど、自分の好きなことをする積極的発散をぜひお試しください。かなり疲れていると感じる方は、消極的休養法を用います。「気晴らしができていないから、ストレスが溜まるんだ。」とおっしゃる方がありますが、それは余裕のある方のお話で、休養法の基本は消極的なもの=何もしない、眠るです。眠れていないから、身体も心も休まっていないという場合も多いのです。
そして、万が一メンタルヘルスの不調を感じたら、もっとも効果的なのは“質のよい睡眠”をとっていただくことです。眠れていないことに気がついておられない教員も多いので、眠りがうまくいっていない際の目安を挙げます。おおまかに、睡眠障害の4つのパターンとして、以下の状態が挙げられます。(1)寝つきがよくない(1時間以上かかる)、(2)夜中に何度か目が覚める、(3)明け方に目が覚めて、その後眠れない、(4)ぐっすり寝た気がしない、です。1つまたは複数にあてはまり、1ヶ月以上辛い思いをしている方は要注意です。風邪などで訪れるかかりつけ医さんに、相談してみましょう。かかりつけ医さんで改善しない場合は、心療内科・精神科・メンタルクリニックなどの専門医受診を検討しましょう。
質のよい睡眠を確保するということは、意外と難しいことです。身体に変調をきたすと、辛くても眠れない状態に陥ることがよくあります。
早めの受診でよい睡眠がとれてくると、自然と少しずつ元気になってきます。長年疲れきって休業に至った方の中には、1年半寝てばかりいたという方もおられます。月単位で休養をとっていただくつもりがよいです。休業に至る前に、普段から夜の睡眠に差し支えない範囲で、寝れるだけ寝ていただき、エネルギーを充電してくださいね。睡眠は、最大の予防であり、治療です。