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教師の「ゆとり」が子どもの輝きに直結する!
学校の働き方見直しを支援させていただく中で想定外だったうれしい成果として、「市内全体で教師の交通事故が激減した」というのがあった。県に報告する義務のある重篤な事故が1年間0件だったことで、事務作業に時間をとられることもなくなった。何より事故で出勤が遅れたりけがをしたりすることがあれば、子どもへ少なからずショックを与えるが、それが激減したのだ。
他にも、教師のゆとりによる良い影響は様々だ。
(例)
- 『子どもが学校にいる時間』の教師のゆとりがあると、子どもをよく見てベストタイミングでの支援・指導ができる
- 『放課後』に教師のゆとりがあると、新しい教育創造のために時間を使える
- 『定時後』に教師にゆとりがあると、リフレッシュ・リラックス・自己研鑽ができて集中力・発想力・人間的魅力満タンでいられる
正しい方法で働き方を見直すと、チーム力が上がったり一人一人がより高い視点で物事を見られるようになったりするので、「教職員の一体感や自己有用感を高めた」と言っていただくこともある。
親の次に身近な大人である教師が、「大人になるって楽しそう!」と子どもが希望をもてる姿を見せられること。それが何よりの教育だと思うし、「そんな先生や学校を増やしたい」というのが学校専門ワーク・ライフ・バランスコンサルタントとしての私の原動力だ。
「ゆとり」を取り戻すために見直したい6つの視点
視点1 「生み出した時間を何に使うか」を考える
自由に考えてみてほしい。「毎日あと1時間プレゼントされたら何に使うか。」
睡眠・読書・お酒を飲む・家族とくつろぐ・自己研鑽、などなど。自分にとって、時間を作る意味を感じられる理由をもっておくことがまずは大切だ。これがないと「慣れた働き方」に戻ってしまう。ぜひここで、何のために働き方を見直すのかを考えてから読み進めてほしい。
視点2 時間を意識する
基本的なタイムマネジメントの考え方は【限られた時間をどう使うか】である。
例えるなら次のイラストである。
はみ出た部分は定時までに収まっていない仕事だ。よく見ると石と石の隙間があるので、砕いて細かくして隙間に入れれば定時内に多くの仕事を入れることができる。自分の仕事と人とする仕事があるが、自分の仕事は自分の裁量で細分化がすぐできる。「重要な仕事だからまとまった時間を作って…」と考えると残業は確定してしまう。区切りが悪くても5分でも無駄にしないで少しでも進めることが大切だ。
人とする仕事でも自分がチーフの仕事は細分化することが出来るはずだ。自分がチーフでなければチーフに働きかけることで細分化できる部分があるだろう。
時間は有限=ビンの大きさを把握しておくことだ。もちろん望ましいのは定時での時間、つまり本来の退勤時刻を締め切りとして強く意識することである。
視点3 5分を侮らない
「たった5分しか生み出さないのなら、時程表を書き換えるなど諸々の手間に見合わない」ということで時程表の改訂をしない学校もある。
一方、ある学校では時程表を改訂して毎日5分下校が早まった。年度途中の2月の変更。校長の英断だったが、先生たちは「5分でもあると違う」とうれしそうだった。
意識しないでいると5分間はすぐに消えてしまうが、能動的・意識的に使うと5分でできることはかなりたくさんある。まず5分生み出せる部分はないだろうか。
視点4 本当に必要かを考える=学習指導要領を確かめると抱えすぎに気が付く
絵の具は道具が多くて難しい教材だ。小学校低学年のA先生は筆の使い方や色の作り方など必死に絵の具指導をしていた。が、学習指導要領を確かめると、絵の具指導は3・4年生でするものだとわかった。低学年には「オプション」だったのだ。「しっかりできるようにしておかなければいけない」と教師としての責任感をもって指導していたそうだ。「絵の具嫌いの子どもを増やしてしまったかもしれない。指で塗って遊ぶなど柔軟にしてもよかったんだ。そもそもこの子どもたちに今絵の具指導が必要かどうか考え直してみよう。」と気が付くことが出来た。
「本当にやらなければいけないことなのか」を、根拠である学習指導要領で確かめてみると手放せるものがある。年度初めの今こそ確かめてみてほしい。
視点5 私生活は全員にあるものと理解する
よくワーク・ライフ・バランスと誤解されているのがワーク・ファミリー・バランスである。育児や介護などの事情がある人へだけ配慮することで、ほとんどの学校で自然発生している。
(例)
- 残業が多い特定の学年の担任は独身者や男性など時間制約がないとされている人に偏っている
- 子育て中の人が早く帰れるように残れる人がいつもカバーする
これでは不公平感が蔓延していたり、残れる教員の善意に頼っているので配慮されながら帰る者は後ろめたい思いをしていたりすることが多い。学校にとって良いアイデアをもっているのに「いつも配慮してもらっているのにこれを言ってみんなの仕事を増やしてしまったらどうしよう」と言い控えている場合が多い。これでは学校教育の質を落とす。学校全体で働きやすさを実現することが必要だ。
視点6 同僚の人生によい影響を与える働き方をする
働き方支援の際のヒアリングで「もう教員をやめようかと思っている」「管理職にはなりたくないと思っている」という若手や中堅の先生たちの本音を聞くことがある。そうした先生たちの話を掘り下げていくと、「あの先生のような、仕事だけの生き方はしたくない」と目の前のモーレツ先生達の姿に理想の将来像を見いだせずにいるということが実はよくある。あなたの校内にロールモデルにできる人がいなくても、本の著者やSNSで発信している先生の中から探してみてほしい。実際に会わずともロールモデルにすることはできる。働き方フォーラムなどに出かけていくと、仕事も私生活も充実した先生たちと出会って刺激をもらうこともできる。
“あの先生”が一生懸命なことは尊く何ら否定することではないが、残念ながら「子どもを優先させる素敵な先生」ではなく、「私生活を犠牲にするお手本にはしたくない先生」と映っていることが実際にある。もしあなたが“あの先生”と言われている可能性があるなら、「仕事も私生活も充実していて憧れる」と思われる生き方働き方にあなた自身がシフトすることが、目の前の同僚のモチベーションや成長や充実によい影響を与え、学校に人材を定着させることになる可能性がある。
チェンジとチャレンジを!
ワーク・ライフ・バランスとは、「必要なことに必要な時間をかけられるようになること」だ。学校は前例踏襲が多いのでその分、改善できることが多い。勇気がいることもあるが、子どもも自分も学校全体も幸せになるために、小さくてもできるところからまずは一歩踏み出してほしい。
- 先生の幸せ研究所
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