- 教育オピニオン
- 特別活動
1 学校でSDGsについて考える意義
虐げられている人こそが自由を求めるように、未来を脅かされている若者こそが未来を守ろうとします。持続可能な未来をつくることを切実に願い、自分ごととして責任を感じているのは若者たちです。ですから、税金も払い法的責任を果たしている若者が、18才未満であっても未来を決定する政策に関与・参政する時代が来るでしょう。その年齢までに、学校では未来を切り開く資質と能力を身につける必要があるわけです。そのとき鍵になるのがSDGsではないでしょうか。SDGsは未来であり、子どもたちも未来だからです。
2 学校の中で取り組むSDGs
「SDGsを学ぶ」「SDGsを通して学ぶ」で踏みとどまらず、「SDGsのために学ぶ」に進めたいものです。教科・道徳ではもちろん、それぞれの見方・考え方をもとにSDGsを達成する資質・能力を身につけます。「生きる力」に付け加えられている「学びの、その先へ」という言葉がそれを示しています。そして今までバラバラに作られていた現代的諸課題の全体計画を、1つに統合できるのです。
学びのプロセスは3段階です。
(1)気づく・知る 〜知らないから動かない人へ〜
授業では、教科書や資料が中心ですが、SDGsについては新聞やユニセフのSDGsクラブなどを生かしてゴールやターゲット、課題とその解決への取り組みを学ぶことができます。
SDGsクラブde 伝えよう
(2)自分ごと化・考える 〜知っているけど動かない人へ〜
他人事である「人間」「豊かさ」「地球」「平和」などの自分への影響・身近な課題として考えるために、仲間と対話を仕組みます。「もったいない」「ほっとけない」などの感性を磨きます。難しければNIEDなどに出前授業をお願いしてもいいと思います。
(3)やってみる・活動する 〜自分ごとなんだけど動かない人へ〜
貢献したいと思っているのに動かない人は、動き方がわからないからです。実際にどんな取り組みがあるのか、モデルや先行事例の提示、活動している人との協働などが考えられます。地域や企業・行政との関わりも大切にしますが、アクションプランやドローダウンなど、最先端の研究や活動を知り、活動を具現化するといいでしょう。
3 生徒会活動の中で取り組むSDGs
生徒会活動でのSDGsは「生きる 学びの、その先へ」の資質能力を高めるのにかなり有効です。
・「だれひとり取り残さない」などの理念と生徒会目標とを重ねやすい。
・短いスパンでのPDCAが可能。
・地域・行政・企業との連携し信頼と環境づくりができる。
・教科・道徳等の学びを生かし、学びに生かすクロスカリキュラムが可能。
生徒会の戦略デザイン
(1)導入段階 価値付け 価値感の共有
既存の議案書(年間活動報告・決算)や生徒会新聞などを生かします。
(例)それぞれの委員会にSDGs17のシールを貼り、委員会とSDGsとを重ねる。
(例)活動報告書にSDGs17のシールを貼り、活動をSDGsを重ねる。
(例)今ある「ウォームビズ厚着週間」。どのSDGsに貢献するのかシールを貼ろう。
(2)浸透段階 「なぜ取り組むか」の見える化
持続可能な生徒会活動・学校生活のためにSDGsが不可欠であることを実感します。
(例)生徒会の一年間を疑似体験。ゲームをしながら、生徒会が閉ざされた組織ではなく、学校・地域・世界に開かれた存在であることを味わう。
(例)ウォームビズによって達成されるSDGsをできるだけ見つけてみよう。また、自分への影響をブレインストーミングしてみよう。
(3)行動段階 小集団活動 ファンベース
できる委員会・チームから始めます。SDGs活動のファンに働きかけ、実績の情報発信をします。
(例)コロナ禍で中止、縮小となった部活。自分の好きな活動を持続可能にするために、世界が新たなパンデミックを生まないために、休部を生かしてグリーンリカバリーや人手不足の農地の手伝いをする。
(例)ウォームビズの日は制服・換気などの規制を緩和して実施。削減した灯油の量や電気代を、金額やCO2・木の本数などに換算して数値評価。
(左)近くの川でゴミ拾い、(右)「残食ゼロ週間」の規制緩和と価値付け
(4)実現段階 発案・活動・数値評価
委員会の連携や他組織との連携を図ります。同じ志の他組織と共同で行い、ノウハウを共有します。
(例)コロナ禍で中止、縮小となった文化祭、音楽会、運動会に修学旅行。いい機会なので、「明るい未来」という視点で見直し、行事の目的や新たな価値を生み出してみよう。
(例)ウォームビズを通して、他の委員長や仲間にSDGsファンが飛び火。他の委員会で協働やコラボ企画を発案。保健委員会「換気&保湿マスク」給食委員会「あったか炊き出し」などが起案される。文化祭などでも世界の民族衣装を借りてきて「多様性」や「機能性」などを学ぶ機会に。さらにファンが広がる。
「ミンダナオ図書館」への支援物資収集
4 まじめをたのしく
SDGsが「取り組むべき課題」であるので、「取り組みたい課題」にするには、クイズにして好奇心に火をつけたり、ゲーム性を取り入れるのが有効です。中学生にもなると「すごろくをする」「カルタをする」ではなく、「すごろくを作る」「カルタを作る」という創造的な活動が、心地よい難しさとともに実践意欲に火をつけ、探究的になります。
私は何人かの仲間とチームを作り、ブレインストーミングをするゲームや、生徒会を疑似体験するゲームを作ってきました。これらも参加者のアイデアでゲームを更新しながら、より主体的、対話的、深いゲームに進化させていくつもりです。
(1)SDGsに出会おう ターゲットを知ろう
★ゲーム「SDGsすごろく作り」
あるテーマをもとに、SDGsのすごろくゲームを作り、活動の意味と価値を自覚するゲームです。
クラスでの国際交流。委員会での清掃活動。修学旅行や合唱。色々なハプニングや出会いが起こりますよね。体験を振り返ったり、予想したりしながら、SDGsの17の目標をもとにイベントを考えます。支援要素や阻害要素の度に、3つ進んだり、振り出しに戻ったり…。SDGsの見方を学ぶとともに、活動の価値の自覚や発見を促します。
ゲームは作るからこそたのしいですよね。
★ターゲット当て称号ゲーム
牛乳のフタを再利用して、ターゲットのシールを貼ったコインを作りました。もちろん169枚あります。ターゲットは短く簡単な言葉にしてわかりやすくしました。
表にターゲット、裏にはGOALs。こうすれば、ターゲットを当てるゲームがすぐにできますね。神経衰弱や役作りなどのOSを持ち込めば、たのしくターゲットを知ることができます。特定の種類のSDGsを集めた人には称号をあげましょう。
(2)SDGs気質になろう・フェーズを実感しよう
★揃えましょう
レベルT「長野の定番の果物は?」「せーの!」といってグループの何人が揃えられるかで点数を競います。
レベルU【30年後】を付け加えて、フェーズが変わったときにどうなっていくのかを考えます。
レベルV「揃えないで」「【30年後】子どもに大人気の黒い夏の虫は?」…「ゴキブリ」が出てきます。
実は揃えない価値を見つけるゲームです。多様性やインクルーシブ、未来の価値観の創造を促すためのゲームです。
★ゲーム「災害を乗り越えろ」
全員で協力して達成し、災害に負けない強靱な社会をつくるゲームです。
プレイヤーはサイコロの目の分ボードの上で自分の駒を動かし、停まった場所にあるSDGsと同じ番号のカードをもらいます。多くの種類のカードをより多く集め災害に備えます。
ニュースカードを引くと災害が起こり、SDGsカードを奪われていきます。フェーズが上がると、まるで地球温暖化がすすむように、パンデミックや干ばつ、蝗害がなど、ますますひどい災害が起きるようになります。
SDGsカードを集め強靱な社会を作るのが先か、ティッピングポイントを超えて最終災害が起きるのが先か、プレイヤーの協力次第です。
ゲームオーバー…よくあります。「もう一回やりたい」という声が上がります。
(3)SDGsアクションプランを作ろう
★ゲーム「SDGsあてバトル」
問題解決型・ブレインストーミング型のボードゲームです。2人1組になり向かいに座ります。仲間の作った答え・アイデアが、SDGsの何番かを当てて、点数を競うゲームです。「SDGs弁当とは?」「SDGsブース作り展で何をする?」などのお題について答えを作り、ペアにそれを当ててもらうゲームです。
最終的には17通りのアイデアが集まることになります。
★ゲーム「生徒会de SDGs」
1年間を生徒会活動疑似体験。定番の企画や必須の行事を各委員会が協力して進めます。支えてくれる組織やアイテムを生かせば効果が上がります。
これまでの定番の活動にSDGsの価値を見つけます。次に、新しい価値観での活動に気づきます。さらに、コロナ禍などの新しいフェーズでの生徒会活動を企画する考え方をSDGsに学びます。