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漢字嫌いはどうして生まれるのか
先生方のクラスの子どもたちに、「漢字の学習は好きですか?」と聞いたらどんな答えが返ってくるでしょう。「何回も繰り返し書かされるのが嫌だ」「何回も再テストをさせられてつらい」といった不満の声は返ってこないでしょうか。
「漢字テストでまた〇人も不合格だ」「家で全く漢字練習をしてこない」。こうした教員同士の会話を耳にすることがあります。指導と評価の一体化に即して考えれば、「どうすれば、学習への意欲を高められるか」「どうすれば、習得できるようになるか」という指導改善に努めなくてはなりません。ところが、漢字学習となると、「練習回数を増やす」「合格できるまで再テストをする」といった旧態依然とした指導が繰り返されているようです。漢字テストが目的化し、そこで点を取るための変化の乏しい授業や練習だけでは、学年が進むにつれて、漢字学習が「つまらない」「嫌い」という子が多くなるのは当然です。デジタル・アナログを問わず「子どもの意欲を引き出す漢字学習」が大切だと考えます。
漢字練習でICTを活用する意義
漢字学習でICTを活用するメリットはたくさんありますが、その一つは、ゲーム性をもたせやすく、視覚支援にもつなげられるという点です。特別支援学級や外国籍の児童への通級指導を担当している先生からも、「指で付箋を動かすだけだから、とても意欲的に取り組んでいる」「日本語がまだ十分でない子もイラストで考えて取り組めていい」といった、好評の声が寄せられました。
もう一つは、「個人で黙々と覚える」学習だったものが、「友達と協働しながら学ぶ」ものになるという点です。ICTを活用することで、答えを導くまでの思考の過程を互いに自席で把握することができます。また、子どもたち自身で作った問題をすぐに共有することも可能です。
本稿では、ICTを活用した新しい漢字のアクティビティ「漢字Jamboard」をご紹介したいと思います。
1 カード合わせゲーム
◆準備物:漢字を表した画像(イラスト)のデータ
◆活動の手順
(1)Jamboardにデータを用意する
まず、エクセルなどでつくった6×6マスの枠にフリー素材のイラストを添付した画像データを用意します。これをフレームの「背景」に設定します。次に、「付箋」機能を使って漢字カードを作ります。色、大きさを決めて付箋を1枚作ってしまえば、「コピーを作成」で同じ大きさの付箋を複製することができます。
(2)ゲームに取り組ませる
漢字の付箋を動かしてイラストと組み合わせるゲームです。繰り返し取り組ませて字形に慣れ親しませます。読むから書く段階に移行する前に取り組ませると効果的です。最初は半分の9枚だけ、2回目は残りの9枚、3回目は18枚全部と段階に分けたフレームにすると効果的です。
※画像1
2 漢字ネットワーク
◆準備物:タッチペン、6×6マスのシート
◆活動の手順
(1)6×6マスのシートを用意する
この活動は印刷したワークシートでもできますが、GoogleのJamboardを活用すれば、より効率的に取り組ませることができます。まず、エクセルなどで作った6×6マスの枠をフレームの「背景」として設定します。フレームは「コピーを作成」で必要な数だけ増やすことができます。データを作ってしまえば、ワークシートを印刷したり、人数分のペンを用意したりといった毎回の準備の手間が省けます。また、児童が書き間違えたら、「元に戻す」や「消去」で簡単に書き直しができます。
(2)ゲームのやり方を確認する
1チーム4人程度で行います。「ペン」機能で「黒赤黄青緑」の中から1人1色ずつ重ならないように選ばせます。これで、誰がどの漢字を書いたかが分かります。書く順番を決めたら、交代しながら、「億→休→林→柱」「億→間→問→鳴」のように部首やつくり、部分で漢字をつなげていきます。4人で協力して全部のマスを埋めることができたら、成功です。
※画像2:スタートの漢字は教師があらかじめ指定しておく
(3)互いの書字を確かめ合わせる
Jamboardは、相手の書字の過程が端末で見えます。「そこは突き出さないよ」「正しい筆順は、こうだよ」と、互いに指摘し合うことで既習漢字の字形や筆順の定着を図ることができます。また、他チームのフレームを自分の席から動かずに閲覧できて便利です。
「漢字学習」の印象を転換していく
先生方自身が、子ども時代に行ってきた漢字練習の方法があると思います。ですから、「これまで実践してきたやり方が当たり前」と考えるのもうなずけます。しかし、漢字はみんなで一緒にゲームをし、競い合いながら学ぶ方が、断然楽しく、さらに習得も早まります。「漢字は、みんなで学習すると楽しい」ということを多くの子どもたちに感じてもらい、1人でも多く「漢字好き」になってもらいたいと願っています。