- 学級づくりにいかす!体育授業
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2学期、暑さもおさまるだろうという時期に、鉄棒の授業を開始。逆上がりの習得を中心に授業を進めていきました。逆上がりができた子どもは、やることがなくなって遊びはじめ、まだできない子どもはやろうとしません。やがて寒くなり、子どもは鉄棒に触らなくなり、できないままで学年を終えました。
授業でのこんな失敗ありませんか?
今回は、得手不得手がはっきりと分かれて、そのままになってしまいがちな鉄棒運動の指導のポイントを、特に「学級づくり」という視点から見ていきます。
ポイント1鉄棒運動ならではの特徴をおさえる
器械運動にはマット・跳び箱・鉄棒の3つがあります。
指導をしている中で、鉄棒運動が他の2つと異なると思われる点を挙げます。
- 子どもが休み時間に自主的・継続的に取り組める。
- ある日突然技ができるようになる一方で、途中の成果が見えにくい。
- 「逆上がり」という特定の技の地位が高い。(鉄棒→逆上がりという連想。)
@は、大きなプラスのポイントです。
つまり、マットや跳び箱と違い、ほとんどの場合グラウンドの固定遊具としてあるので、自主的に取り組める良さがあります。
Aについては、できた時の喜びが大きいというプラス面があります。
一方で、成長という形の成果が目に見えないため、できるまでの意欲をもちにくいという点で、マイナスのポイントともいえます。
Bについては、「日本の鉄棒文化」ともいえる特徴的な点で、ここになぜか高い価値がおかれています。(跳び箱運動の開脚跳びにも近いものがあります。)
逆上がりができるかどうかが、鉄棒運動が「できる・できない」という意識の分かれ目のようなところがあります。鉄棒運動における「登竜門」的地位です。
これらを踏まえた上で、指導のポイントを考えていきます。
ポイント2鉄棒運動の指導はなるべく早い時期に始める
まず先の@の特徴からすれば、早い時期に始めさえすれば子どもが自主的に継続的に取り組めるというメリットがあります。
仮に9月に指導を始めたとしたら、単純計算して残り期間は半年です。
しかし、実際には昼休みの時間、真夏は鉄棒が熱すぎて触れず、真冬は冷たすぎてやはり触れません。
そうなると、苦手意識のある子どもが鉄棒をがんばろうと思える期間は9月の終わりから10月、あとは3月の終わりぐらいです。実質2ヶ月弱しかありません。
しかし気候の安定する春に始めれば、鉄棒に触る時間がぐっと増えます。
課題が明確であれば、休み時間に少しでもやろうとする子どもが出ます。
コツは、10分程度でもいいので、外での体育の時間に時々やることです。
それで力のたまる6月辺りに、しっかりとまとまった時間をとって指導します。
ポイント3スモールステップ&コーチで意欲を継続
鉄棒運動における「逆上がり」の確固たる地位を揺るがすことは、現状ではなかなか難しいです。
なので、今回は逆上がりの技を習得する場合で考えます。
逆上がりは、技の習得にやや時間がかかります。
ある程度の筋力が必要で、6時間程度の授業時間のみでは厳しい面があります。
苦戦している子どもに対しては、授業と授業の間の時間にも、力をつける必要が出るのが現実です。
そうなると、技が一気に完成しない以上、授業では必然的にスモールステップでの指導が命です。
一気に完成にならないからこそ、少しずつ上達していることを「可視化」する必要があります。
逆上がりにおけるスモールステップでの指導法は、スロープや壁、跳び箱などの足場を使って行うものや、補助ベルトを用いるもの等、様々知られているので、本稿では省略します。
さて、スモールステップとはいえ、現在できないものを継続してがんばるのはしんどいものです。
まして、貴重な休み時間をそこに費やすとなれば、尚更です。
そこで、学級ではその子ども一人ずつに「コーチ」をつけます。
「コーチ」は、子ども自身に選ばせるのがいいです。
「〇〇ちゃんと一緒ならがんばれそう」という人を、自分で選ばせます。
「コーチ」に指名された子どもは、得意満面です。
何といっても、「あなたなら」と指名されたのですから、気合いが入ります。
ここで最も活躍するのが「がんばってできるようになった子ども」です。
気付いたら最初からできる子どもは、「なぜできないのか」が実感としてわからないのです。
また、がんばってできるようになった子どもに対しては、仲間もその過程を見ているので、信憑性があります。
担任の指導としては、できないでがんばっている本人以上に、この「コーチ」への励ましがポイントとなります。
今月の格言
鉄棒運動では、授業と授業の間にも力をつける「コーチ」も一緒に育てよう!