板書王のとっておき算数授業
これまで数々の授業・板書記録を残し続けてきた板書王が教える、子どもたちが授業に食いつく、とっておきの板書・授業ポイントが満載!
板書王のとっておき算数授業(24・最終回)
合同な四角形の作図に必要な条件はいくつかな?
5年「合同な図形」(5・6/7時間)
新潟県新潟市立上所小学校二瓶 亮
2022/5/10 掲載

本時のねらい

 合同な四角形の作図について、既習である合同な三角形の作図方法を生かして考え、5つの条件で作図できることに気付く。

板書

図1

板書のとっておきポイント

  • 考えと考えのつながりを矢印等で表現する。
  • 比較がしやすいよう、図は横一列に並べる。

授業の流れ(2時間扱い)

11時間目:問題を把握し、作図を試す(10分)

昨日は合同な三角形の作図を行いました。今日は、合同な四角形の作図にチャレンジしてみましょう。合同な三角形の作図は、3つの条件が必要だったけど、四角形の作図にはいくつの条件が必要かな?

三角形のときは3つだったから、四角形は4つじゃないかな?

4つだとできないような気がする…5つかな?

合同な四角形の作図に必要な条件は、いくつなのかな?

辺BCは土台だから確実に知りたい!

では、四角形の情報を全て教えるので、辺BCをかいてから、続きを作図してみましょう。

 一度作図にチャレンジさせてみる。そこで出てきた困り感やうまくいったという声を拾いながら展開する。

結構難しいなあ…。

どうやったらかけるんだろう?

何か三角形になった…。

21時間目:作図方法を確認し、他の方法を考える(20分)

一度ストップしましょう。「三角形になった」という声が聞こえてきたんだけど、気持ちが分かるかな?

分かるよ。私もなった。

途中まで三角形の作図と同じだからじゃないかな?

そうそう。点Aを作図するところは、三角形と同じ。点Aと点Cを結ぶか結ばないかの違いだよ。

なるほど。三角形を作図する前回の学びが生かせそうだってことだね。この次はどうしようか?

角Cと辺CDを使って点Dの位置を決めればいいよ。

角Aと辺ADを使って点Dの位置を決める方法もあるね。

次は点Dの位置を決めればいいということだね。では、やってみましょう。

 個人で作図の続きに取り組む時間を設けた後、全体で作図方法の確認をした。

この方法だと5つの条件が必要みたいだね。

図2

他の方法ってないのかな?

三角形のときは、3パターンの方法があったけど、四角形のときはどうなんだろう?

そうだね。他のパターンもないか調べてみましょう。

 個人で調べてもいいし、グループで相談してもいいこととした。

31時間目:作図の共通点について考える(15分)

チャレンジした作図方法を教えてください。うまくいかなかったものでもOKです。

 作図に用いた条件(辺の長さや角度)に丸を付けさせた。

図3

うまくいった3つの方法の共通点は何だろう?

どれも5つの条件を使って作図しているね。

角度を必ず使っているね。三角形のときは3つの辺の長さだけで作図できたけど、四角形だと辺の長さだけではできないのかな?

本当に作図することができるのか、他の人のアイデアも試してみたい。

そうですね。それでは、次回の授業で本当に作図できるのか試してみましょう。ここで一度、ここまでのまとめをしたいと思います。

合同な四角形の作図に必要な条件はどうやら5つみたいだ。

42時間目:友達の作図方法を試す(20分)

前回の続きです。まずは、友達の作図方法を試す時間にしましょう。

 個人で作図の続きに取り組む時間を設けた後、全体で作図方法の確認をした。うまく作図できなかった方法についても取り上げ、頂点Aと頂点Dの位置が決まらないことを押さえ、作図できる方法との違いをつかむきっかけとする。

52時間目:四角形の作図を、三角形をもとに捉え直す(20分)

何か、どれも三角形の作図と似ているね。

どういうことかな?

本当だ。全部点Aの位置を決めようと作図しているからだね。

図4

そっか。どの作図方法も途中までは三角形の作図と同じってことだね。

四角形を三角形2つに分けて作図しているみたいだね。そうすれば三角形の作図と同じように考えられる。

なるほど。四角形を三角形2つと見て作図するということだね。でも、三角形を2回作図するということなら、作図に必要な条件は3(つ)×2(回)=6(つ)で6つになるんじゃないの?

言われてみれば不思議だね…何で5つで作図できるんだろう?

分かった!オレンジの線は作図に要らないからだよ。

あっ、そっか!三角形2つに分かれているけど、オレンジの点線の部分は、実際は作図に使っていない線だから、3−1=2で、2つでOKということだね。

点Aの位置を決めるためには、条件が3つ必要だけど、点Dの位置を決めるためには、条件は2つでいいから3+2=5で5つの条件が必要ということだね。

ここまでの学びを一度整理します。四角形は三角形を2つ作図するのと同じだけど、条件が6つではなく、5つで済む理由について、隣の人と確認します。確認できたら、お話ししたことを、自分なりにノートに整理しましょう。

 ペアトーク+ノート整理で7分程度の時間を設けた。

それでは、学習をまとめ直しますね。

合同な四角形の作図は、3+2=5で5つの条件が必要。

62時間目:2時間分の学びを振り返る(5分)

この2時間で学んだことを振り返りましょう。

授業のとっておきポイント

 合同な三角形の作図の際は、3つの条件で作図できたことから、四角形の場合は4つの条件が必要なのではないかと、多くの子どもは類推するだろう。一方で、4つでは足りないのではないかと考える子もいる。この予想のズレから全体の問いをスムーズにつくることができる。
 合同な四角形の作図は、途中までは三角形の作図と同じである。ここから、三角形の作図が生かせそうだという視点をもたせておきたい。今回は、「三角形を2回作図することと同じようだ。」という気付きを子どもから引き出すことができた。そこで、「三角形を2回作図するなら、条件は2倍の6つ必要なのではないか?」という問い返しをすることで、四角形を三角形2つに分けるという視点について再考する場を設け、合同な四角形の作図条件が5つになることへと導いた。
 なお、様々な作図方法に触れさせたいと考え、今回は合同な四角形の作図を2時間扱いとした。

二瓶 亮にへい りょう

1989年新潟県生まれ。新潟市立上所小学校教諭。教員10年目。
子どもの思考に寄り添うことを大切にした算数授業を目指して日々研鑽中。
「フォレスタネット」(授業準備のための指導案・実践例共有サイト)に、板書写真を中心に、実践を多数投稿。「フォレスタグランプリ」の2018年11月大会にて「板書王」、2019年2月大会にて「ベストナイン(算数)」、2019年7月大会にて「月間MVP」を受賞。
共著に「フォレスタネットSelection Vol.3・Vol.4・Vol.5」((株)スプリックス)がある。

(構成:中野)
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