- とっておき算数授業
- 算数・数学
本時のねらい
1目盛りの大きさの取り方によって、折れ線グラフの見え方が変わることを理解することができる。
板書
板書のとっておきポイント
- 2つの折れ線グラフを比較しやすいよう、隣合わせにして提示する。
- 情報(月別気温変化の表)を小出しにする。
- 新潟市と那覇市の折れ線グラフを1枚のグラフ用紙に記入し、違いを比較しやすくする。
授業の流れ
12つのグラフから那覇市のグラフを選択する(5分)
第1時では、理科のヘチマの成長の学習と関連させながら、時間と気温の変化を棒グラフに表し、そこから折れ線グラフへとつなげた。折れ線グラフの良さとして、変化が見えやすいことを捉えていた。
第2時では、折れ線グラフと表のデータと比べながら、折れ線グラフの傾きによる特徴を見出していく学習を行った。傾き具合と気温の変化の仕方がつながっていることに気付いていった。
本時ではまず、導入として沖縄県那覇市のイメージを確認することからはじめた。
(那覇市はA?B?と板書した後、)那覇市ってどんなイメージ?
一年中暖かいイメージ。
新潟市よりも暖かいはず。
2つのグラフを提示して…
那覇市はどっちかな?
Aじゃないかな。気温が高いし。
Bかな。気温の変化が小さいから。でもちょっと気温が低すぎるような…。
昨日みたいな気温のデータ(表)が欲しい。
では、那覇市の月別気温変化の表を見せましょう。
2月別気温変化のデータをもとにグラフを見直す(13分)
データを見て、改めて自分の立場を決めてください。那覇市はAかな?Bかな?
先生!どっちでもないという立場もありですか?
結果的にどっちでもないという意見とどっちも那覇市ではないかという意見が大半となった。
(Bを選んだ子を指名して)どうしてBと考えたのかな?
那覇市のデータを見ると、気温の最大と最小の値の差が小さいからグラフが緩やかになると思った。
あ〜なるほど。確かにそれならBというのも分かるかも。
でも、やっぱりこのグラフはおかしいよ。だって7・8月の気温はどちらも29℃でしょ?それならグラフは平らになるはずだよ。
あっ本当だ!AもBも平らじゃない。これはどっちも那覇市じゃないね!
このように、表の数値とグラフの変化の様子を比べながら、AもBも那覇市ではないと結論付けていった。間違いを指摘したり違うという理由を語ったりするとき、子どもはアクティブになることが多い。
3AとBの折れ線グラフを見比べ、1目盛りの大きさの違いに気付く(12分)
新潟市の月別気温変化の表を黒板に貼り、AもBも新潟市のグラフであることを告げる。Aはすぐに納得した子どもたちだったが、Bも新潟市だということには違和感を感じている子が多かった。
(Bも新潟市だということを聞き)えっ?どっちも新潟市のグラフなのにどうしてこんなに違うの?
新潟市のデータとBのグラフを見比べる時間をとる。
あっ分かった!Bのグラフは1目盛りの大きさが違うんだ。
1目盛りの大きさに着目したんだね。みんなどういうことか分かるかな?
本当だ!Aは1目盛りが1℃だけど、Bは1目盛りが2℃だ。
那覇市もグラフにしてみたい。先生、グラフ用紙をください。
今回は別のグラフ用紙を配るのではなく、あらかじめ配布してあった新潟市のグラフと同じところに那覇市のグラフもかかせることにした。2つのグラフが並ぶことで、さらに「比べる」という視点が生まれる。
4那覇市のデータを折れ線グラフに表す(15分)
那覇市のデータを折れ線グラフに表した後
かき比べてみてどう感じましたか?
Bの折れ線グラフはAをギュッと縮めた感じだね。
やっぱりAの方が急な感じで、Bは緩やかなグラフになるね。
今回のような気温の変化を表すときにはAとBだとどっちの表し方がいいかな?
さっきの「急な感じ」に付け足しで、変化がはっきりと現れるのがAの1目盛りが1℃の方だと思う。
目盛りの大きさが1℃変わるだけでこんなに見え方が変わるんだね。
だったら、このBのような1目盛りの大きさが大きいグラフってどういうときに使うの?
変化が分かりづらいグラフなんて使い道あるの?
おもしろい疑問だね。次回は1目盛りの大きさが大きいグラフについて深く考えてみようか。
最後に出た疑問については次時に扱うこととした。次の時間では、私自身の生まれた時から現在までの5年ごとの身長の変化をデータとして見せた。そして、「みんながこのデータを折れ線グラフに表すとしたら、1目盛りの大きさを何pにする?」と問いかけた。1目盛り1pにすると答えた子がいないことを確認した上で、「どうして1目盛りの大きさを1pにしなかったの?」と問うことで、そのときそのときのデータの大きさを考えて、変化が見えやすくなるように1目盛りの大きさを調整するとよいということに気付かせた。
授業のとっておきポイント
今回意識したのは、情報を小出しにすること。誰も正解は分からないところからスタートすることで、全員の足場が揃う。そして、データの必要感を子どもが感じたときに次の情報を提示する。データを読み取る際には、表のデータとグラフの双方向から考えることが大切だと子どもたちはおぼろげに理解している。
また、新潟市と那覇市の2つのデータを目盛りの大きさを変え、それぞれ1つのグラフ用紙に表すことで、目盛りの大きさによる折れ線グラフの見え方の違いがはっきりと現れる。その違いに子どもが気付いていけるような展開を意識した。