- とっておき算数授業
- 算数・数学
本時のねらい
分数の比を簡単にする際に見付けたきまりについて、そのしくみを考えることを通して、分数の比についての見方を深める。
板書
板書のとっておきポイント
板書を授業の2つの流れに対応するように構想した(真ん中のあたりから左が(1)で右が(2)について)。
(1)分子の大きさがどちらも等しいとき、分母の数が反対になって比として現れることに気付く。
(2)分子の大きさが等しくないときに、ななめにかけた数が整数の比として現れることに気付く。
授業の流れ
1分子が等しい場合のきまりについて考える(15分)
分数の比を簡単にする学習の復習をしましょう。
下の写真の4問を順に提示する。
あれ?おもしろいよ。
本当だ。分母が反対になって整数の比になっている。
でも、1/2:1/6=3:1で反対になってないよ。
簡単な比になる前なら反対だよ。どっちも2倍して3:1=6:2とすれば、分母の反対の比になる。
分子が全て1だけど、2とかでもできるのかな?
分子が2の場合を試してみようか。ノートに好きな数字でやってみよう。
分子が2のときも、分母の反対になったよ。
私も反対になった。
ここでは、子どもから2例ほど出してもらい、全体でも確認した。
ちなみに、分子が3や4の場合も試してみたけど、できたよ。
ということは、分子の大きさが等しければ、分母の反対の比になるってことだね。
それなら、分子が等しくなかったら比は反対にならないのかな?調べてみたい。
なるほど。いい発想だね。では、分子の大きさが等しくない比を自分で作って確かめてみよう。
だめだった。反対にならないや。
オレも反対にならなかった。やっぱり分子の大きさは等しくないとだめみたいだね。
2新たなきまりについて考える(23分)
でも、代わりに別のきまりを発見したよ。
別のきまり?
○○さんが別のきまりを発見したって言っているんだけど、きまりが見えたという人はいるかな?
このとき、きまりに気付いたと挙手した人は6人。他の32人は気付いていない様子だった。
では、○○さんに続きを聞いてみよう。
ななめにかけ算をすると…
ストップ。〇〇さんが言いたいことが分かるかな?隣の人と確認してみよう。
ほとんどの子が気付いていなかったきまりに自分で気付くという喜びの瞬間を作り出したかった。
〇〇さんは、分数の比をななめにかけ算をして出てきた数が整数の比になっているってことが言いたかったんだと思う。
そうそう!おもしろいね!
でもどうしてだろう?不思議だ…。
たしかに不思議だよね。どうしてこんなことが起きるのかな?分数の比を簡単にする過程をもう一度見てみようか。
あっ!分かった!
通分するときに互いの分母をかけるからだよ。
ん?どういうこと?
1/2:2/3を簡単にするときに、通分するでしょ。通分するときって分母の2と3の最小公倍数6に揃えるよね。そのときに、1/2なら反対の分母の3を分子分母にかけるし、2/3なら反対の分母の2を分子分母にかけるでしょ。
上の板書写真の四角囲みした式を書きながら説明していた。
私も似ているけど、どっちの分数にも、両方の分母の数、ここでは2と3をかけ算すれば分母は約分されて1になるよね?残った(1×3):(2×2)=3:4ってななめにかけ算しているのと同じことだよね。
あー。そういうことか。通分するときのしくみが関係しているってことだね。
分数の比は、ななめにかけた数が整数の比になるというきまりがあるってことだね。
答えの確かめとかでも使えそうだね。
32つのきまりを統合する(7分)
もしかして、今のななめがけのきまりって最初に見つけた分母が反対に出てくるきまりと関係あるんじゃない?
えっ?どういうこと?
おもしろいことを言い始めたね。最初のきまりというのは、分子が等しいとき、分母の反対にした比が整数の比になるというきまりのことだね。
ここに気付ける子はいないかもしれないと思っていたため、教師側から授業を最初から順に振り返らせようと考えていた。しかし、気付いた子がいたため、その子の発言に乗っかる形で進めることにした。
これもななめにかけ算をすると…
あっ!そっか!(1×4):(3×1)=4:3だ。
なるほど!最初に見付けたきまりって、実は〇〇さんが見付けたきまりと同じだったんだ!
別々のきまりじゃなくて同じきまりだったのか…おもしろいね!
授業のとっておきポイント
別々のきまりだと思っていた2つのきまりが、実は関係していたというところにおもしろさがある教材。今回は大きく3つのまとまりで授業を構想した。
(1)分子の大きさがどちらも等しいとき、分母の数が反対になって比として現れることに気付く。
(2)分子の大きさが等しくないときに、ななめにかけた数が整数の比として現れることに気付く。(その理由について、分数の比を簡単にする過程に着目して考える。)
(3) (1)と(2)で見付けたきまりを統合する。
分子が1という簡単な分数の比を整数比にするという易しい場面から入ることで、全ての子どもが授業に参加できるようにした。分子が両方とも1のときには、分母の数が反対になって整数比として現れる。このきまりは、問題を複数扱っていく中で多くの子が気付けるだろう。なお、最初の活動では、多くの子がきまりに気付けるよう、あえて途中式を板書していない。このきまりは分子が1以外でも成り立つのか?という子どもの発想は自然なものである。
分子の大きさが等しいもののみを扱っていくことで、子どもの思考は「だったら分子が等しくなかったらどうなのか?」という方向に流れるだろう。子どもの期待とは裏腹に(1)のきまりは成り立たない。ところが、ここで別のきまりに気付く子が現れるだろう。ここでは、途中式を確実に板書しておくことと、きまりが成り立っているかどうかを確認する際に、式の中の数値を子どもに注目させるというやり取りがキーとなる。
この(2)のきまりが成り立つ理由については、ぜひ子どもたちに考えさせたい。このきまりは通分のしくみが関係しているので、分数の比を簡単にするという過程でどんなことが数の操作として行われているのかということを振り返る場面にもなる。
そして最後には、(1)のきまりに立ち返ることで、(2)のきまりと同じことが(1)でも行われていたということに気付くことができる。このように別々に見えていたものが、よく見たら同じだったという発見は感動的である。このような経験によって「算数っておもしろい!」と感じる子もいるだろう。