- とっておき算数授業
- 算数・数学
本時のねらい
長方形や正方形の中心と頂点や辺との距離を調べたり、長さが等しくなるよう修正したりする活動を通して、中心からの距離が等しい形が円であることに気付く。
板書
板書のとっておきポイント
- 話題の中心になるであろう正方形を板書の中心に位置付けた。この正方形をもとにして円に近付けていくという思考を辿るような展開になると考えた。
授業の流れ
1長方形の辺や頂点と中心との距離を調べる(10分)
3年1組29人で玉入れをします。どこから投げたいですか?ノートに書いてみましょう。
長方形の枠の外からしか投げることができないことを示す。子どもには図が描かれた紙を配布してある。
ここでしょ(長方形の下の部分を示す)。
私はもう1か所選んだよ。Bさんと距離は同じだけど(上の部分を示す)。
僕は右側にしたよ。
えっ!?そこは遠くない?
測ってみたら遠かったよ。
さっきから距離の話をしている人が多いけど、どこの距離の話をしているの?
かごから人の距離のこと。
そう。中心と立つ場所の距離がAさんとBさんの距離は同じだけど、Dさんは少し遠いってことだよ。
なるほど。本当に距離が違うのか調べてみましょう。
たて(上と下)は4pで、横は6pだったよ。
ななめの長さも測ってみたら違ったよ。ななめは7p2oだった。
長方形だからだよ。たての長さより横の長さが長いから。長方形だと2人だけ有利になっちゃうよ。
そうだよ。長方形だから悪いんだよ。正方形だったらいいのに…。
2正方形をもとに中心との距離を修正する(20分)
正方形だったらいいのにと言っている人の気持ちが分かるかな?隣の人と話してみよう。
正方形は、たてと横の長さが等しいから有利な人が増えるってことだと思うよ。
うんうん!そう思う!正方形ってななめの長さも等しくなるのかな?
調べてみよう!たてと横は(中心までの距離が)4pだったけど、ななめは5p6oだね。
一辺の長さが4pの正方形でやってみたけど、たてと横は(中心までの距離が)2pで、ななめは3pくらいだったよ。
正方形にすると、4か所有利になったけど、ななめの人が不利だね。
ななめの長さがどうなるとうれしい?
ななめも(中心までの距離が)たてや横みたいに4pになればいい。
そうそう!全部4pにしたい!
では、ななめの長さも4pに縮めてみようか。
(中心までの距離が)4pの場所を繋いだら八角形みたいに見えるよ。
本当だ。きれいな八角形だね。これで8人が有利になったね。
この調子でどんどん同じ4pの場所を増やしていけばいいんじゃない?
3図形を円に近付けていく(15分)
次はどこを4pにするといいかな?定規で長さを測って4pになっていないところを探してみよう。
頂点は全部4pになっているから、それ以外のところだよね。
じゃあ、頂点と頂点の間はどうかな…あっ!3p8oだよ。ちょっと短い!
あっ!本当だ!3p8oのところは全部で8か所あるね。ということは、全部4pにできたら16人が有利なところに立てるよ。
頂点と頂点の間を4pにすると、十六角形になるね。
あれ!?おもしろいね。どんどん倍になっているよ。
○○さんの「倍になっている」が見えるかな?
あっ!見えたよ。本当だ!すごい!
有利になっている人の数が倍になっているんだ。
えっ?頂点の数じゃないの?
どっちも同じことだと思うよ。頂点の数と有利な人の数って同じことでしょ。
そっか。(中心までの距離が)4pの場所が頂点になっていて、そこに立つと有利になるからか。
だったら、次は32人が有利になる三十二角形ができるってことだね。
あっ!これならうちのクラスの29人が全員有利になるよ。
先生!三十二角形ってほとんどマルだよ。きっと。
本当だね。どんどんマルに近付いていっているね。みんなが平等になるためには、マルにすればいいんじゃない?
なるほど。では、次回はマルにすると、本当に中心までの距離がどこも等しくなるのか調べてみることにしましょう。
授業のとっておきポイント
玉入れをするときの並び方について、教科書では子どもが横一列になっている図が示されているものが多いが、今回は長方形の図を提示した。そしてどこから投げたいかと問い、有利なところと不利なところがあるという話題から正方形にしたいという思いを引き出そうと考えた。長方形から入ることで「正方形だったらいいのに」という思いを引き出しやすいと考えたからである。子どもにとって正方形は最も整った形であるというイメージが強く、ななめの長さもたてと横と同様に等しいと捉えている子は少なくない。そのことに気付かせ、正方形でも等しくならない部分(ななめの長さ)を修正しようという動きから、少しずつ円へと近付けていく展開を構想した。
長方形という問題の条件(今回でいうと「29人で(平等に)玉入れをする」)に合わない導入をすることで、子どもがより良い形に修正していく展開を目指した。正方形を修正しようとしたときに、円の形が既に見えていた子も数人いたが、全員で段階的にゴール(円)に辿り着くことを目指したため、「ななめの長さがどうなったらうれしい?」という見る部分をあえて限定するような問い返しを行った。誘導的になってしまったことが反省点だが、スモールステップで展開することにより多くの子がどう修正するとよいかを一生懸命思考する授業となった。