板書王のとっておき算数授業
これまで数々の授業・板書記録を残し続けてきた板書王が教える、子どもたちが授業に食いつく、とっておきの板書・授業ポイントが満載!
板書王のとっておき算数授業(19)
小数なのにどれも「4+3=7?」全てがつながり感動!
3年「小数」(6/10時間)
新潟県新潟市立上所小学校二瓶 亮
2021/12/10 掲載

本時のねらい

 小数の表し方や仕組みに着目し、整数のたし算と関連付けながら、小数第一位同士の小数のたし算の計算方法を考えることができる。

板書

図1

板書のとっておきポイント

  • 4+3=7と整数で考えるというアイデアが全ての考えと関連付いていることを理解することを目指したため、板書の中心に位置付けた。どれも整数と同じように考えているというまとめにつなげる展開を目指した。

授業の流れ

1問題場面の把握と見通しをもつ(10分)

亮さんは、朝と夜に牛乳を飲みました。朝は□L、夜は□L飲みました。1日に合計何L飲みましたか。

□Lって…先生、めっちゃ飲んでるじゃん!

でも□が小数の可能性もあるから分かんないよ。

あっ、そっか!先生、□を教えて!

はい。朝は0.4Lで、夜は0.3Lだよ。

なんだ。やっぱり小数か。それならそうでもないね。普通だ。

簡単に求められるよ。式も書ける。

では、ノートに式と答えを書いてみましょう。

0.4+0.3=0.7だよ。

そうそう。簡単すぎるね。

本当に0.7でいいの?

そりゃそうだよ。

説明できるよ。前の学習を生かせばいいんだよ!

なるほど!では、0.4+0.3=0.7になることを、これまでの学習を生かして説明してみましょう。生かせそうな学習について、隣の人とノートを見返しながら相談してみよう。相談が終わった人から座ってノートに考えを書きましょう。

2考えと考えを関連付けて理解する(27分)

 相談の時間を含め5分間だけ自力思考の時間をとった。このとき、子どもたちの様子を見て回ったところ、大きく5つのアイデアが見られた。

  1. 同じ位ごとに計算する
  2. 0.1のいくつ分で考える
  3. 液量図を用いて0.1のいくつ分を表す
  4. 数直線を用いて0.1のいくつ分を表す
  5. LをdLに直して考える

 このどれにも「整数と同じように(十進位取記数法の仕組み)で考える」という発想がかくれている。そこで、教室をまわった際に、4+3=7とノートに書いている子を抽出しておき、黒板に式を板書した。

〇〇さんがノートに4+3=7と書いていたんだけど、どうやって考えたのか、気持ちが分かるかな?班(3人)でお話ししてみよう。

(ここで話題になっていたのは、前述の1.がほとんどだった。数人が、2.と5.の話をしていた。まずは多くの子が解釈した1から採り上げることにした。)

○○さんは、小数第一位だけを足そうとしたんだと思うよ。

そうそう!前の授業でやった大小比べを生かして、同じ位ごとに計算しているんだよ。

僕は違う考え方だよ。さらに前の授業でやった0.1L=1dLという考えを生かしているんじゃないかって予想しました。

あー!確かに!それは思い付かなかったなあ。0.4L=4dLで、0.3L=3dLだから、4dL+3dL=7dLだもんね。

LをdLに直して考えても、4+3=7になるね。

図2

僕も違う考えで…同じ授業なんだけど、0.1のいくつ分ってやったでしょ?それかと思った。

0.1のいくつ分ってどういう考え方だっけ?

0.4は0.1が4個分で…

あー!それか!確かに、0.1のいくつ分で表しても4+3=7だね。

もしかして、どんな考え方をしても4+3=7になるんじゃない?

何やら図を描いて考えている人もいたので、紹介してもらうね(数直線と液量図の考えを採り上げる)。

図3

図4

数直線とリットルますの考え方は似ているね。

私は、リットルますの考えは0.1のいくつ分と似ていると思ったよ。リットルますを描くと0.1のいくつ分が見えやすくなるもんね。

じゃあ、これも4+3=7をしているって言えるじゃん!

数直線も、そうじゃない?一目盛りの大きさが0.1Lで、その目盛りが4目盛りと3目盛りを足しているから4+3=7と言えるよ。

えー!じゃあ、どの考えも全部4+3=7で考えているってこと!?すごいね!

 上記のことに子どもから気付くことができないこともあるだろう。「数直線やリットルマスの考えには、4+3=7はかくれていないかな?」という発問をすることで、目を向けさせることもできる。

3発展した問題を考える(8分)

どれも4+3=7と整数のたし算と同じように考えているというのは大発見だったね!整数と同じように考えるために、みんながしたことはどんなことだったかな?

0.1のいくつ分で考える。

同じ位ごとに計算する。

LをdLに直して考える。

そうだね。小数も整数と同じように考えられることに気付いた1時間でしたね。では、振り返りです。この問題をもう少しレベルアップさせるとしたら、みんななら2つの□(朝と夜)にどんな数を入れますか?それは、どんなところが難しくなりますか?ノートに書いてみよう。

図5

1.4+1.1。さっきは一の位が0だったけど、一の位に数があるとそこも足さないといけないから。

1.3+1.9。くり上がりが出てくると難しいと思う。

7.8+2.8。2回くり上がりになると思う。でも整数と同じように考えれば筆算でできるかな?

1+1.5。整数と小数のたし算だとちょっと難しそう。

1.2+2。筆算するときってどうやって書けばいいのかな…。

0.9+2.1。小数第一位が0になるところが難しいかな。

では、みんなが考えてくれたレベルアップした問題を使って次回は学習をしましょう。

授業のとっておきポイント

  1. 同じ位ごとに計算する
  2. 0.1のいくつ分で考える
  3. 液量図を用いて0.1のいくつ分を表す
  4. 数直線を用いて0.1のいくつ分を表す
  5. LをdLに直して考える

 子どもが既習を持ち出して考えるアイデアのどれにも「整数と同じように(十進位取記数法の仕組み)で考える」という要素が入っている。そこで、それぞれを別々の考え方として、「どれもいい考えだね。」で終わるのではなく、今回は4+3=7という整数の式を記述している子を採り上げ、式を解釈させることを通して、自力思考の際にもった自分の考えや式を解釈した際に出てきた考えの全てが4+3=7という式と繋がっているという気付きをねらった。別々の考えだと思っていたものが最終的につながるというところに子どもたちは感動していた。
 また、授業の終末場面では、子どもにレベルアップさせた問題を考えさせた。子どもが作った問題は実に多様であり、こちらが扱いたいと思う主なパターンは全て網羅していた。子ども自身が作った問題を次時の問題として扱うことにした。

二瓶 亮にへい りょう

1989年新潟県生まれ。新潟市立上所小学校教諭。教員10年目。
子どもの思考に寄り添うことを大切にした算数授業を目指して日々研鑽中。
「フォレスタネット」(授業準備のための指導案・実践例共有サイト)に、板書写真を中心に、実践を多数投稿。「フォレスタグランプリ」の2018年11月大会にて「板書王」、2019年2月大会にて「ベストナイン(算数)」、2019年7月大会にて「月間MVP」を受賞。
共著に「フォレスタネットSelection Vol.3・Vol.4・Vol.5」((株)スプリックス)がある。

(構成:中野)
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