
- とっておき算数授業
- 算数・数学
本時のねらい
6種類の四角形について、対角線の長さや交わる角度、交わる場所に着目して、その特徴を見出し、整理することができる。
板書
板書のとっておきポイント
- 黒板を半分に分け、四角形を左右に仲間分けしていく展開にした。長方形がどちらのグループにも属すよう意図的な仲間分けを提示し、左右それぞれの対角線の特徴とつなげて考えることができるよう、長方形を中心に位置付けた。
授業の流れ
1用語の確認と問題場面の把握(10分)
冒頭で、対角線の用語の指導を行う。そして、四角形を対角線で仲間分けすることを告げ、配付した6種類の四角形に対角線を引かせる。
今日は、四角形を対角線で仲間分けしていきます。最初は先生がA、Bの2グループに四角形を分けていきますね。まず、正方形はAグループです。ちなみに、正方形の対角線の特徴は何だろう?
2本の対角線の長さが等しい。
*ここでは、直角に交わるという気付きは出てこなかった。出てくれば扱うとよい。
この後、ひし形をAグループ。一般四角形と台形、平行四辺形をBグループというように分けて提示した。
2どんな仲間分けなのか考える(10分)
AグループとBグループは、それぞれどんな仲間分けがされているかな?対角線の特徴を調べながら予想してみよう。
(一人で考えてもよいし、相談したい場合は近くの子と自由に相談してもよいこととしている。)
子どもの様子を見て回り、各々が対角線のどのような要素に着目しているのかということを見て回る。
*ロイロノートなどタブレット端末のアプリを用いれば、子どもがどこに着目しているかということの把握もしやすくなる。図形の弁別には大変有効である。
ひし形も正方形と同じで、対角線の長さが等しいよ。Bグループの2つは、どちらも対角線の長さが等しくないね。
あっ!Aグループは、どちらも対角線同士が垂直に交わっている。Bグループは直角じゃないね。
対角線と関係あるか分からないけど、Aグループは、4つの同じ三角形に分けられているよ。Bグループはバラバラ。
きっと長方形はAグループじゃないかな。だって…。
3長方形がどちらに入るか考える(25分)
様々な視点で仲間分けしていますね。では、長方形はA、Bどっちのグループに入りそうですか。
A:17人 B:13人 分からない:3人
と考えが割れた。それぞれの仲間分けの観点を語らせる前に、長方形がどちらのグループに入りそうかを問うことで、ずれが生まれ、どうして自分とは異なるグループになるのか?という問いが生まれる。
どうしてA(B)なの?
それでは、長方形がAグループの仲間と考えた人から、その理由を聞いてみましょう。
僕は、長方形も正方形やひし形と同じように、対角線の長さが等しいからAグループだと考えたよ。
確かにそれならAだね。私は違うところに着目してBグループだと考えたよ。長方形は対角線が垂直に交わっていないでしょ?さっき調べたときに、Aグループは対角線が垂直に交わっているけど、Bグループは、対角線が垂直に交わっていないことが分かったので、長方形はBグループだと考えたよ。
新しい見方が出てきましたね。今、○○さんが言った「対角線が垂直に交わる」というのが本当かどうか、隣の人と確かめてみましょう。
あっ!本当だ!交わり方には気付かなかったなあ。すごい!
僕もBなんだけど、ちょっと理由が違って…対角線を2本引くと、どの四角形も4つに分かれるでしょ?そのときの形が…
ストップ!○○さんはこの後、どんなことをお話ししようとしているのかな?
形って言ってたからな…。何だろう。
あっ!もしかして、Aグループは全部同じ三角形に分かれていて、Bグループは、同じ形になっていないということかな?
あー!それなら長方形は確かにBグループだね!
そうかな!?長方形は真ん中じゃない?だって、同じ形の三角形が2ペアあるじゃん!!
あれ!?待って!おもしろいことに気付いたかも!同じ形に分かれているってことだから…Aグループは対角線がちょうど真ん中の交点で半分になっているよ。
えっ?どういうこと?
2本の対角線が交わるところで、2本の対角線がそれぞれ半分の長さになっているってこと。
あーなるほどー!!それで言うなら長方形は……Aグループだね!
*子どもに対角線の特徴調べを委ねたとき、「2本の対角線がそれぞれの中点で交わる」という特徴に子どもだけでたどり着くのは難しいかもしれない。今回は時間の都合上、もし子どもが気付かなければ、視点を与えようと考えていた。
見方によって、長方形はAグループになったり、Bグループになったりするんだね。
最後に、今日みんなが仲間分けするときに使った3つの視点で、四角形を表に整理してみよう。
(1)対角線の長さが等しい
(2)2本の対角線がそれぞれの中点で交わる
(3)対角線が垂直に交わる
正方形は全部○だね!他の四角形にとってのあこがれの存在だね!
もしかして、対角線で作図とかもできるの?
おもしろいことに気付いたね。次回はそれをやってみよう!
授業のとっておきポイント
着目する特徴によって長方形がどちらのグループにも属すような意図的な仲間分けを提示することで、考えにずれが生まれるようにした。また、長方形を提示する前に、一度自分なりの分け方を考える場を設けることで、長方形がどちらに入るか?という段階で、自分なりの理由をもって仲間分けする姿を引き出すことができた。
対角線の特徴についての新しい見方が出てくる度に、新しい見方(対角線の特徴)でそれぞれの四角形を見直すことになる。少し時間はかかるが、全員に経験させることが大切である。「長方形は見方によってグループが変わる!」といった柔軟な見方ができる子にしたいという思いも込めた1時間である。
本時の最後に、対角線を用いた作図に気付いた子がいた。本時では、ほとんど触れることはできなかった。次時は対角線を用いた作図を1時間扱った。
【参考文献 】
『「見方・考え方」を働かせる算数授業〜領域を貫く10の数学的な見方・考え方の提案』 本創 研・著 瀧ヶ平悠史・編著(東洋館出版社)
