- 研究主任の仕事大全
- 教師力・仕事術
研究部会は他の部会とは大きく性質が異なります。他の部会は「連絡事項」「検討事項」などが中心となりますが、研究部会はそれだけにとどまってはいけません。効果的な研究部会とはどんな部会でしょうか。
研究部会は文化の創造を生み出す場である
他の部会が連絡事項や協議事項が中心であるのに比べて、研究部会は「文化の創造」が中心になります。つまり、他の部会に比べると、抽象度が高くなるのです。別の言い方で言うと、次のようになります。
研究部会は答えのない話題を話し合う必要がある
ということです。絶対解を探すのではなく、納得解を探す話し合いです。
まず、研究主任として、そのことをしっかりと押さえておきましょう。
とはいえ、確実な連絡や明確な協議事項もしっかりと押さえつつ、答えのない話し合いの時間を確保していくことが求められます。
まずは、上記の性質をもつ部会であるということを、部会メンバーとも第1回目の部会で共有するようにしておきましょう。「絶対解を探し求めることができない」「自分たちの納得解を探す場」という共通認識は、研究を深める話し合いをする上で、とても大切なことです。
そのうえで、具体的に話し合うのは次のような事柄です。
- 連絡事項
- 本年度の研究に向けて普段から取り組んでいることの交流
- 指導案検討
- 研究授業に向けての役割分担
- 今後の予定(だれがいつ研究授業や公開授業を実施するか)
- その他
特に、「今後の予定」を常に把握しておくことはとても大切です。協議会を含めたメインの研究授業の日程はしっかりと予定に組み込まれますが、その他の公開授業については突然日程が決まることが少なくありません。突発的な混乱を防ぐためにも「だれがいつ授業をするのか」「まだ授業日程の決まっていない人はだれか」はいつも文字化して共有しておきましょう。
交流の時間を少しでも取り入れる
研究部会では、10分ほどでも構わないので「普段からの研究に向けた取り組み」を交流する時間を設けましょう。この小さな時間を取り入れるかどうかで研究の日常性が大きく変わります。
学校の研究は、研究授業のときだけに取り組めばいいのではありません。毎日の小さな積み重ねこそが、学校の研究を確かなものにするからです。
「研究授業が近づいているから研究に向けた取り組みをする」という意識では、「研究授業が終わった〜。やれやれ…」となってしまい、自身の研究授業が終わってしまうと、途端に研究への取り組みを実践しなくなってしまうことすらあります。
これでは、研究に取り組んでいる意味が全くありません。
なぜなら、学校の研究とは、研究授業をよく見せるためにあるのではなく、普段の授業実践をよりよくしていくために存在するものだからです。
ゆえに、「研究の日常性を高める」ことは、とても重要なことになります。
私は、わずかな時間であっても、次の質問をし、交流する時間を確保するようにしました。
最近取り組んだ実践の中で、○○(研究テーマ)に少しでもつながる実践を教えてください。
これを、学年ごとに聞いていきます。アウトプットの時間は1学年2〜3分ですが、こうした機会を取り入れることによって「次の部会でどんなことを話そうか」というアウトプットのクセが部会のメンバーに芽生え始めます。「次、何か話さないと」という気持ちになり、普段の小さな実践を発見できるようになるのです。
実は、普段から研究につながるような実践に、先生方は取り組んでいます。しかし、それに気付いていない・意識が向いていない状態になっていることがほとんどです。
気付いてもらうための場が「小さなアウトプット」の時間なのです。ほんのわずかでも「自分から話す」ことをするだけで意識は大きく変わります。ぜひ、研究に向けた交流の場を設けるようにしてください。
研究部会を楽しみにさせる“お土産”を用意する
研究部会(特に立ち上げ初期のころ)を運営するにあたって、ぜひ参加メンバーに芽生えさせたいものがあります。
それは、
研究部会に参加すると学びにつながる
という意識です。学校現場は本当に目まぐるしく動いています。授業準備、アンケートなどの事務処理…。なかなか学びに向かう時間の確保ができないのが現状となってしまっています。
そこで、ぜひ研究主任の先生には、
研究部会に“お土産”を用意する
ということをやっていただきたいのです。“お土産”は簡単なもので構いません。例えば、以下のようなものを持ち込んでみましょう。
- 学級通信
- 過去の自身の指導案
- 本校の研究に関わる他校の指導案
- 最近気になった雑誌や書籍の紹介
- 自身が参加した研究会資料
- 最近の授業の板書写真
本当に小さな準備でできるもので構いません。こうした取り組みを続けると、だんだんと「次の研究部会が楽しみだな」という雰囲気が生まれ始めます。そのような空気感をつくり出すことができれば、研究主任としての大きな仕事を果たしたと言えるでしょう。
研究部会で学びの輪を広げる
研究主任になりたてのころ、「研究部会をどうしていけばいいのかなぁ」と悩んでいた時期がありました。そんなとき、ふと気が付いたことがありました。
研究部会は、サークルのようにすればいいのか!
この思考にたどり着いたときに、一気にいろいろな思考がつながり始めました。校内の研究部会とは、これまで自身が取り組み続けてきた「(教員の自学的な学習のための)サークル活動」と同じであると考えると、やるべきことがすっきりと見え始めたのです。
サークルの参加者には、「参加意識」が前提としてあります。アウトプットが必須の場なのです。また、主宰者である研究主任が“お土産”を用意することで、他のメンバーにも資料提供してもらうことをねらっています。
研究部会も同様に、研究主任が資料提供することが根付いてきたら、次は、研究主任のみならず、他のメンバーにも学級通信や授業の振り返り資料などを提供してもらうのです。
こうして学びの輪を少しずつ広げていきます。すると、研究部会の場が「良質な情報」であふれるように様変わりしていくのです。