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事例個人面談で保護者の気持ちがスッキリするのは?
■その1 A先生の個人面談
〜行き当たりばったり。たまに沈黙〜
A先生「こんにちは」
保護者「こんにちは」
A先生「どうぞ、おかけください」
保護者「はい」
A先生「今日はお忙しいところありがとうございます」
保護者「あ、はい」
A先生「○○くんは、学習面でも生活面でもがんばっていますよ」
保護者「そうですか」
沈黙
A先生「○○くんのことで、何かお困りのことや気になる点はありますか?」
保護者「宿題を自分からやらないんですよね」
A先生「遊びに行ってしまう感じですか?」
保護者「そうですね」
A先生「宿題は家庭学習の習慣を身に付けるうえで大切ですので、気が進まなくてもやるべきなんですけどね」
保護者「そうですよねぇ」
A先生「えぇ」
沈黙
■その2 B先生の個人面談
〜用意バッチリゆえの話しまくり〜
B先生「事前にアンケートにお答えいただきましたので、これにそってお答えしますね」
保護者「はい、お願いします」
B先生「まず学習面からお伝えしますね。算数では2学期から学習が始まった繰り下がりの引き算が、最初のうちは少し苦手意識があったようなのですが…(テストの結果や授業での指導内容を解説。それに加えて学習内容を定着させることの目的や意義も強調。他の児童の様子と比べながらお子さんの実態を説明)」
保護者「あぁ、そうなんですね」
B先生「次に、生活面で書かれていた、友達関係に関してですね。休み時間は主に仲のいい△△くんや□□くんたちと遊んでいます。当番活動の際には…(詳細な記録をもとに、休み時間の様子以外にも、当番や係活動、給食指導、清掃指導の時間での友達とのかかわりを解説)」
保護者「そうなんですね。ありがとうございます」
■その3 C先生の個人面談
〜傾聴により保護者のニーズを的確に把握した上で最後に問いかけ〜
C先生「事前のアンケートにお答えいただき、ありがとうございます。学習面と生活面の両方を書いていただいたのですが、お母様にとってより重要度が高いと言いますか、気になる方はどちらでしょうか?」
保護者「学習面ですかね」
C先生「学習面なんですね。宿題を自分から進んでしないということなのですが、具体的にはどのような様子なのかもう少し詳しくお話いただいてもよろしいでしょうか?」
保護者「何しろ、遊びが好きでですね。帰ったらすぐにランドセルを置いて、遊びに行ってしまうんですよね」
C先生「遊びが好きなんですね。それで帰宅後すぐに、遊びに行ってしまう」
保護者「そうなんですよ。ずーっと、サッカーばかりして。なんだか、△△くんたちと遊ぶのが好きみたいで」
C先生「サッカーばかりしていて。△△くんたちと遊ぶのが好きなんですね」
保護者「そうなんです。だから遅く帰ってきて、疲れているからやりたくないって言うので困っているんですね。夕飯の時間もありますから」
C先生「なるほどですね。遅く帰ってきて疲れてしまうと。それでやりたくないって言うのですね。お母様としては夕飯もありますもんね。それは困りますよね」
保護者「そうなんですよ。だからこの間も、あまりにも遅くまで遊んでいるので、ついきつくしかりすぎてしまって」
C先生「そうですか。でも、きつく叱りたくもなりますよね。お気持ちお察ししますよ。要するにお母様として、理想的にはどういうふうになってほしいんでしょうかね?」
保護者「そうですねぇ(理想を語る)」
C先生「そうですよねぇ。そうなればお母様も安心してほっとするわけですね。では、今おっしゃったような理想的な形、つまり○○くんが夕飯までに宿題を済ませるようになるためには、お母様が工夫、あるいは応援または改善できることはどんなことがあるでしょうかね?」

解説
事例1、2と事例3は、どこが違うのかわかりましたか。
事例1、2は、わかりやすいようにあえて問題があるように記しています。C先生と比べるとどんな違いがあり、どこが問題なのでしょうか。
改めて考えてみましょう。
事前アンケートで保護者のニーズを把握
事例1のA先生の問題の1つとして、事前準備が不足していることがあります。
保護者は忙しい中来てくれているわけですから、貴重な時間を有効に使うために事前にアンケートをとるなどして準備しておきましょう。
個人面談の1、2週間前に、学級通信をとおして保護者のニーズを把握しておくと貴重な個人面談の時間(10〜15分くらいが一般的でしょうか)を有効に使うことができます。学級通信の下に、以下のようなアンケート用紙を載せ、回収します。

傾聴することで保護者は安心
事例1のA先生、事例2のB先生、どちらにもいえる問題点として、「傾聴していないこと」があります。
先生が保護者の話を傾聴していなければ、保護者は安心して話すことができません。
保護者が先生に話すたびに、話題がブツっと切れてしまうのです。
B先生は準備をしっかりとしているのですが、保護者の心に響いているかどうかというと疑問です。熱心でやる気のある先生なのですが、保護者の気持ちを受け止め共感するという姿勢が欠けていると言えます。
リフレクティブ・リスニング(オウム返し)
「帰ってきてすぐに、宿題してほしいんですけど、やらないんですよね」
「なるほど、帰宅してすぐに宿題をしないわけですね」
C先生は、保護者が語ったことをほぼそっくりそのまま繰り返しています。これをリフレクティブ・リスニングといいます。いわゆるオウム返しです。
たったこれだけで、信頼関係が築くことができ、相手の安心感や自尊感情を高めることができるのです。すると相手はどんどん話すようになります。
あまりしつこく繰り返すと、くどくなってしまいますが、話し手は安心して会話ができます。安心すると、本音が言えます。オウム返しされることで、思考が活性化し、話がはずみます。
ニーズを把握してから相手に解決策を考えさせる
C先生は答えをなかなか言いません。
オウム返しを続け、最後に1回問いかけるだけです。
保護者のニーズを詳しく、深く掘り下げて、最後に一発核心を突く問いを投げかけるのです。
オウム返しされて、ノリノリになっている保護者は、自分の最も解消したい問題について聞かれ、思考が最も活性化します。傾聴されてリラックスできているので、保護者の頭の中にはいいアイデアがたくさんおりてきます。
話しやすい環境づくり
相手に話を続けてほしいときには、「それで」とうながしてみましょう。
「それで」の一言によって、相手は無意識に話の続きを進めていくようになります。
また、座席の向きも、話しやすい状況をつくる上で大事です。
座席は正面を向き合うよりも、少し斜めにした方が圧迫感が軽減され、話しやすくなります。

ここがポイント!
- 保護者の気持ちを傾聴し受け止め共感する姿勢が大事!
- リフレクティブ・リスニング(オウム返し)で保護者のニーズを引き出す!今月の「言葉のワザ」
- 事前アンケートを取ることで有意義な面談になる!
