
- 言葉のワザ
- 学級経営
事例評価の2つのパターン「教室移動」「清掃指導」「発表会」
パターン1
先生が具体的によい点あるいは改善点を伝える評価

パターン2
先生は問いかけ、子どもがよい点あるいは改善点を振り返る評価

教室移動
●よい点を伝える
パターン1
「静かに教室を移動することができました。他の学級のことを配慮できており素晴らしいです。ぜひ続けましょう」
パターン2
「今の教室移動はどうでしたか?」
あるいは
「教室移動素晴らしかったですね。皆さんが完璧にできていたことは何ですか?」
●改善すべき点を伝える
パターン1
「ストップ! やり直しです。どうして、授業中にもかかわらず廊下でしゃべるのですか? 他の学級に迷惑がかかります。次は静かに移動します」
パターン2
「ストップ! やり直しです。どうしてやり直しかわかる人?」
清掃指導
●よい点を伝える
パターン1
「先生、掃除の様子を見ていてとても感心したことが2つありました。1つめ。Aさん、Bさんたちはわざわざ物をどかして、その後ろまで丁寧に掃除にしていました。2つめ。Cさんたちが自分の分担が終わった後、机運びを手伝ってくれていたんですね。やさしいですね」
パターン2
「先生、掃除の様子を見ていてとても感心したことが2つありました。それは何でしょう?」
(…でなければ)
「ヒントはAさん、Bさん、Cさんです」
●改善すべき点を伝える
パターン1
「掃除の時間、残念なことがありました。それは、うちの学級のごみ捨ての仕方がとても雑であるということです。しかもそれを見てみぬふりをしている人が多いのです。最後の方に、気付いた○○さんたちが片付けていました。次からは初めから全員で丁寧に捨てましょう」
パターン2
「掃除の時間、残念なことがありました。それが何かわかる人?」
(…時間を待って)
「ヒントはごみ箱です」
校外活動のまとめの発表会
●よい点を伝える
パターン1
「A班の発表でよかったところが2つありました。1つは聴いている人の反応を見ながら発表していたことです。聴いている人と視線が合っており、問いかけたり、間を置いたり、発表の仕方が素晴らしかったです。2つめは役割分担。発表者、資料をもつ人、実物を聴いている人に渡す人などが明確でしたね。しっかりと事前に準備していることが伝わってきました」
パターン2
「A班の発表でよかったところが2つありました。その2つに気付いた人? 少し近くの人と話し合ってごらん」
(…時間をおいて)
「では発表してもらいましょう」
解説
パターン2「子どもが振り返る評価」のよさ
青森県の佐藤康子氏、群馬県の深澤久氏が著書のなかで主張していることがあります。
それは、先生が教えたいことを直接に教えずに、子どもに気付かせて子ども自身の口から言わせるということです。
「おいしいところは、子どもの口から」です。
おわかりのように、パターン2の方がそれにあたります。
よい点をほめるときも、改善点に気付かせるときも、同じ原理です。
問いかけて、「何がよかったのか」「何がいけなかったのか」と思考を促すのです。
この評価のよさは次の点です。
●自分の行動について思考をともない振り返るようになる
自分で振り返ることにより、行動が改善していきます。思考する習慣が身につきます。
●注意深くなる
友達や全体の様子を観察するようになります。そして友達のよいところを発見し、それをまねるようになります。
パターン1「先生が具体的にほめる評価」のよさと注意点
パターン2のよさを先に伝えましたが、パターン1がダメな評価の仕方であるわけではありません。次のようなよさがあります。
●具体的に何がよくて、ダメなのかすぐに理解できる
善悪の判断をきちっと教えられていない学級、子どもの中に大きな力関係のある学級では大変有効です。先生がビシッということで、正しいことが何なのか、子どもたちと共有できるからです。
また、思考するのが苦手な子、時間がたってからだと忘れてしまいやすい子にとってはその場ですぐに理解できるので安心します。
●短時間ですむ
忙しいとき、時間がないときに、パッと明確に良し悪しを伝えることができます。
ただし、次のような注意点もあります。
●判断力が育ちにくくなる
先生がいつも指摘してばかりいると、自分の頭で考えたり、自分の目で見て判断したりする力が育ちにくくなります。
「どうせ最後は先生がほめるか、叱るかするから、自分は関係ない」となってしまう場合があります。
ここがポイント!
- 問いかけることで自分で判断できる子を育成できる!今月の「言葉のワザ」
- 先生が具体的に評価することで、学級の中で善悪が明確になる!
- 状況に応じて2種類の評価方法を使い分ける!
