- 高学年担任の指導の極意
- 学級経営
宇野弘恵直伝! 今月の極意
個人面談は、学校に保護者を招いて行われるものです。教室や廊下に子どもの作品を貼ったり、寒い季節には待ち時間にひざ掛けを準備したりして「おもてなし」するという話も聞きます。
しかし、「おもてなし」の本質はそこにはありません。保護者面談における「おもてなし」とは、徹底的に保護者の側に立って時間と中身を組み立てることではないでしょうか。
せっかくの個人懇談で信頼を落とす
教員ではない友人から、こんなメッセージが送られてきたことがありました。
昨日A子(子どもの名前)の個人面談だったんだけど、あれって、やる意味あるの??
友人には6年生の女の子がいます。成績優秀、運動神経抜群、友達関係で特にもめていることもなく、学校は楽しんで言っているのだとか。40代半ばの女性の担任のことも大好きで、授業も楽しいと話しているそうです。友人も、これまで担任に不満を覚えたことはないけれど、今回の個人面談で「かちん」と来たのだそうです。
友人の主張をまとめてみます。
@予定より15分遅れで自分の番になった。
AA子は優秀で何も言うことはないと言われた。
BA子の3つ上の兄のことも優秀と言われた。
さて、みなさんは、@、A、Bについて「かちん」ときますか?それとも、「普通」「止むを得ない」と思いますか?
オンタイムで始まり、オンタイムで終わる
個人面談は、短い時間に複数の保護者と面談しなくてはなりません。話好きの保護者やこの機会にと日頃の子育ての悩みを打ち明ける保護者もいます。そうなれば、むやみに話の腰を折ることはできません。よって、最後の方になると15分くらい押してしまうことは止むを得ないと思うかもしれません。しかし、保護者の立場に立ってみるとどうでしょうか。
働いている保護者の場合、この日のためにわざわざお休みをとって来校しています。休みをとるために無理して仕事を片付けてきたり、この後職場に戻って仕事をしたりするのかもしれません。あるいは、休むついでに普段はできない家事や用事を済まそうと考えているかもしれません。働いていない場合だって、塾の送り迎えや夕食の準備など、何かしらの予定があるでしょう。15分あればあの仕事が終えられたのに…、15分早く帰ればあれができるのに…。自然とこんな思いになるものです。「大抵、予定通りに始まらない」「待つのが普通」と鷹揚に構えてくれる方もいるかもしれませんが、多くの人にとっては予定外に時間を奪われることは腹立たしくストレスが溜まるものではないでしょうか。
では、どうすればオンタイムで始め、オンタイムで終えることができるのでしょうか。
一つは、予め保護者にオンタイムで始めることを宣言しておくことです。通信等に以下の文面を載せ、理解を仰ぎます。
個人面談は、お一家庭○分です。どなたもお忙しい中時間をつくって来校くださいますので、時間通りに実施したいと考えています。つきましては、次のことをご了承ください。
・大変失礼かと存じますが、私自身が時間を守るために、タイマーを使用させてください。
・面談の途中でお時間になってしまった場合も、大変恐縮ですがそこで終了させていただきます。後日改めてお時間を決め、じっくりお話しさせていただきます。
もう一つは、文面にもある通り、タイマーを使用することです。保護者を迎え、無造作にタイマーをセットすると「高飛車」「非常識」ともとらえられかねませんので、「大変失礼なのですが、タイマーをセットさせていただきますね」など、非礼を詫びてから使用します。タイマーは予定終了時刻の1分前にセットしておくのがポイントです。
時折、タイマーが鳴っても話をやめようとしない方もいます。そんな時は、相槌を打ちながら立ち上がり、「もう終わりですよ」ということを態度で示します。
必ず、お土産を持ち帰ってもらう
保護者は、家ではわからない学校での子どもの様子を知りたくて来校します。「優秀です」「何にも問題はありません」と褒めたつもりでも、保護者からすると「うちの子はこれといった特徴がないのね」「問題はないだろうけど、いいこともないの?先生、うちの子、ちゃんと見てくれているのかしら」と不満や不安を感じるのです。これでは、忙しい時間をわざわざ割いて来た価値がありません。なんらかの「お土産」がなければ、来てよかった!とはならないのです。では、どんなお土産がよいのでしょうか。
一つは、その子の具体的な姿がわかるものです。大きくは、学力や学習状況がわかるものと学校生活がわかるものがあるとよいでしょう。
【学力や学習状況がわかるものの例】
・テストの点数を並べたもの(テストの点数の俯瞰、傾向の分析)
・作文(書く量や内容、文字など)
・100マス計算(計算力、変容)
・社会や総合的な学習などのレポート(分析力、統合力、興味・関心など)
【学校生活がわかるもの】
・画像(休み時間、活動風景、授業の様子)
・事前にとったアンケート(仲の良い友達、学校で頑張っていること)
・具体的なエピソード(良さ、特徴)
もう一つが、その学年に応じた旬の話題資料です。5年生であれば思春期について、6年生であれば中学進級にむけてなど、ひと手間かけて資料を作成しておきます。予定より早く終わってしまいそうなときは中身を説明し、時間がなければ参考にと手渡せばよいのです。作文や画像なども含め何かしら持ち帰っていただくものがあると、個人面談が必要感のある価値あるものになり得ます。
話題の中心は、あくまでも子ども
教師としては兄弟を褒めたつもり、あるいは過去に担任していた昔話を懐かしがったつもりでも、保護者からすると「兄弟の話題ばかりだなんて、うちの子いよいよ特徴がないのね」と思われかねません。よく見てもらっていない、認めてもらえていないという不信感につながります。
また、よく聞くのが「先生ばかりしゃべってて、言いたいことが言えなかった」という不満。個人面談は、教師の伝えたいことを伝える場であると同時に、保護者が話したいことを話す場でもあります。個別に話せるこの機会を待っていたという保護者も中にはいます。面談では真っ先に「先にお話ししたいことがあれば伺います」と言い、保護者から話してもらうよう促します。
こちらから子どもの話をするときは、「よさ」から話すのが鉄則。どんなに課題が山積の場合でも、その子のよさをたっぷり伝えた後に「実はこの点が課題ですので…」と焦点化して伝えるのがよいでしょう。
今月のまとめ
- オンタイムで始めることを予告しておく。
- 子どもの成長やよさ、「今」必要なお土産を準備する。
- まずは保護者から話してもらう。