- 菊池道場の価値語録
- 学級経営
子どもをほめようとするときに、どのような視点を持って子どもを見つめているでしょうか。「子どもらしさ」「思いやり」「努力」など、多くの視点が考えられます。視点を豊富に持ち、可能な限りたくさんほめてあげたいものですが、子どもをほめられる場面に毎回立ち会えるとは限りません。「あ、しまった! これは何かほめてあげられそうだったのだけど…」というとき、子どもやその周囲の様子に目をじっと向けることで、「努力の痕跡」を見つけられることがあります。今回は、「努力の痕跡」についての価値語録です。
「拭く」ではなく、「磨く」
雑巾がけは、床を磨きあげるつもりで行いましょう。きれいになった床を見ると、達成感を感じ、努力することが楽しくなります。
この価値語が誕生した場面は、掃除時間でした。掃除場所の見回りを済ませて教室に戻ってくると、教室や廊下の床が太陽の光を反射するくらいピカピカになっていました。見回りに出る前に雑巾がけの仕方を教えていたのですが、その教えを忠実に守って掃除をしたのだろうな、と感じました。
次の日、雑巾がけの様子を見てみると、掌に力を込めた素晴らしい雑巾がけをしていました。その姿は、床を「拭いて」いるというより、「磨いて」いるといった方が近いものでした。また、雑巾がけそのものを楽しんでいるとも感じました。多くの子ども達が敬遠しがちな雑巾がけを楽しむ子どもには、ひとつの努力したストーリーがありました。一人一人の子どもが持つストーリーを想像し、価値付けてあげられる教師であり続けたいです。
ひざを汚す
掃除時間後にひざを汚している人がいますが、それはひざを床について、一生懸命床を磨いたサインです。一生懸命さが、ひざの汚れに表れます。
こちらも、雑巾がけの場面で誕生した価値語です。掃除時間終了後に、長ズボンのひざを真っ白にして教室に戻ってきた男の子がいました。彼は、ひざを床について汚れをゴシゴシとこすっていました。掌だけでなく、指先も使って頑固な汚れ(折れた鉛筆の芯が床につけた跡)をとろうとしていたのです。彼の姿を学級全体に紹介することで、雑巾がけに進んで取り組む子どもが増えました。
掃除はスポーツです。努力すればするほど、成果が表れます。教師の役割は、努力の成果を実感させてあげることです。そのためのひとつの手段が「努力の痕跡」を見つけることであると考えます。
「きれい」は難しいけど,「ていねい」なら誰でもできる
全員がお手本のような文字を書くことは難しいです。しかし、丁寧な文字は全員が書けます。自分の本気度を文字に表しましょう。
漢字ノートは、過去の漢字練習をすぐに振り返ることができるので、子どもの変容を感じるにはとても便利です。漢字ノートの丸付けをする際には、字形の整っている子どもをほめることはもちろん、丁寧に書くことを意識して漢字練習をしている子どももほめてあげたいものです。
丁寧に書いたことを示すサインは、「濃い字」を書いていることです。家で漢字練習をする場面を直接見ることはできませんが、字の濃さからは、子どもの努力を感じることができます。ある男の子は、マスからはみ出していたものの、前日より濃い文字を書いてきていました。そこで、「昨日よりも字がこくなっていますね!ナイス努力!」とコメントを書きました。すると、次の日にはマスに入れた文字を書いてきていました。コメントを読んだ瞬間の彼の表情を見ることはできませんでしたが、きっと笑顔になり、やる気を持って漢字練習をしてくれたのだと思います。
子どもの見えないところでの努力を敏感に察知する力が大切です。