- 菊池道場の価値語録
- 学級経営
どのクラスにも、進んで行動したり、自分を表現したりすることが苦手な子どもがいると思います。そんな子にとって、自分の姿が価値語として教室で共有されていくことは、大きな自信へとつながります。誰もが主役になれる、そして、自分を好きになるきっかけになる。そんな価値語が生まれる瞬間を見逃さないようにしていきたいものです。
ごまかさない
少し面倒だなあと思ったとしても、誰にも見られていなかったとしても、ごまかすことなく自分に任された仕事と向き合うことができるのが一流の仕事人です。
給食当番をしていたときのことです。Aくんは机拭き当番だったので、授業が終わるとぞうきんを準備して教室に戻ってきました。しかし、いざ拭こうとすると、多くの机の上には、四時間目に使った筆箱や教科書などが置かれたままになっていました。どうするのかなと様子を見ていると、ひとつずつ荷物を持ち上げて、その下まで丁寧に拭いていました。「面倒だなあ」「早く終わらせたいなあ」という気持ちもあったかもしれません。にもかかわらず、自分に任されている仕事を、一人で黙々とこなしている姿はとても美しいものでした。
他にも、靴を脱ぐときや給食の汁物が床にこぼれたとき、つい「まあ、いっか」で通り過ごしていそうな場面はありませんか。そんなときでも、「まあ、いっか」でごまかさない心の美しさをつなげましょう。
待たせる人より待てる人に
集団に合わせて行動することは、社会で生きていくためには必要不可欠なものです。自分のことは後にして、集団に合わせて待てる人は、周りからの信頼も得ることができます。
移動教室等で整列をするとき。「整列しましょう」と指示が出ても、自分のことがまだ終わっていなかったり、楽しいことをしていたりすると、「待って。きりのいいところまで」「もう少し、もう少し」と、自分のことを続けたくなるものです。だからこそ、サッと切り替え、整列して全員が並ぶまで「待つ」ことができることには価値があります。
また、給食の配膳時間。給食当番以外の人は、配膳が完了するまで自分の席で座って待っていることがお仕事です。しかし、午前の勉強も一段落し、待ちに待った給食にワクワクするその時間は、つい気が抜けて、お友達とおしゃべりをしたり立ち歩いたりしたくなります。そのときも、「待つ」ことができることに価値を見出します。集団の意識を高く持って行動できることは、一生の力になります。
指先までピン
「気をつけ」をするとき、発表で手を挙げるとき。子どものやる気や集中は、指先からも伝わってきます。ピンと潔く伸びた指先が増えると、気持ちがいいです。
朝会で先生のお話を聞いていたときのことです。手を横にして、中指までピンと伸びた姿勢で一生懸命お話を聞いていました。「その指先、かっこいいね」と伝えると、それから「指先までピン。できてるかな」と自分の姿勢を確認するようになりました。また、発表をするときも、背中から指先までが一直線に伸びたような姿勢で手を挙げていました。どこかで認めてもらったことを、違う場面にも広げていたことに感動しました。
日ごろのよくある場面の中でできるちょっとした行動や、目立ちにくいところでクラスの土台を支えている子どもにこそ、スポットライトを当てることができるような観察力を磨いていきたいですね。